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7話
しおりを挟む「暗いし家まで送ってやるよ。」
それはただまだもう少し一緒にいたいっていうことの言い訳だったのかもしれない。
「ありがとう。家、ここから遠いよ?」
「俺の家、門限とかないから。」
「わーい、まだ君と一緒にいられるんだね。」
「よく恥ずかしいこと平気でいうよな。」
「へへへ」
街頭の明かりが地面に水玉模様を作っている。空にはたくさんの星がそれぞれの明るさ、色、輝きで夜空を彩っていた。
「本当に楽しかったよ、今日。」
楪が金魚と俺を交互に見ながら微笑む。
「それはよかったな。」
少し恥ずかしくなって下を向く。
比較的車通りの少ない田舎道。
点々と建つ家々から、微かにそれぞれの夕食のあたたかい匂いがした気がした。
「この金魚、大切に育てるからね。」
「当たり前だろ、命なんだから。」
「かっこいいこと言うね。」
「そうでもねえよ。」
「そうかなー。」
ふふっと笑いながら彼女が少し歩くスピードを上げて俺の3メートル前ぐらいに立った。
「ねえ、」
「今度はなんだよ」
「今日はほんとに―――」
そこで突然記憶が途切れた
「…っ」
頭がガンガンする。
ここから先の記憶はどこだ。
楪はこのあとなんて言ったんだっけ?
全く思い出せない。
そこの記憶がすっぽりなくなったかのように。空洞である。
「楪の写真見て思い出せたなら…」
夏祭りと同じ場所に行けば思い出せるだろうか。
もう一度タイムカプセルを掘り出して、楪の字を見れば思い出せるだろうか。
もやもやを抱えながら楪の家をでた。
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