園芸部の芹沢さんは今日も花をむしってる

碧峰あころ

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夏だ!山だ!キャンプだ!

4片

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「えへへしってた」



改めてそう言われると恥ずかしくなり、思わず芹沢を睨みつける。




「入部したときより表情が柔らかくなったもん」



「…うるせえな」




かあああっと耳が熱を帯びていくのを感じ、思わず両手で包むと芹沢はふっと笑った。





「さあ、あんまり夜更かしすると明日に響くから早く寝よう!」





マグカップの中の紅茶を一気に飲み干すと、勢いよく立ち上がった。





「明日は山の探検!楽しもうね、おやすみ!」




「あ、おい」 





この心地よいまったりとした時間を手放したくなくて、思わず声をかけてしまったが何も言うことはなかった。不思議そうに首をかしげる芹沢に





「…おやすみ」





としか言えなかった。
すると、笑顔で「おやすみ」と言われ芹沢の背中はテントの中に消えていった。



俺も、寝なきゃな。
もう一度空に瞬く星を目に焼き付けてから俺はテントに戻った。




「先輩、飯田先輩」



「んぁ…?」



「いつまで寝てるんですか、朝ですよ。先輩のいびきうるさくて夜中起きちゃいましたよ」



「え、まじ?」



「なんて、嘘です。早く朝食食べて弁当作って山に探検行きますよ」



「嘘かよ…っておい!」




俺を置いてそそくさとテントを出ていってしまう佐藤の後を追って慌てて外に出ると既に芹沢が朝食を作っていた。




「2人ともおはよう」



「先輩、頭の後ろ寝癖ついてますよ」



「帽子かぶったら潰れるだろうし多目に見てよ」



「そういうとこが女子力ないんですよ」



「ハイハイわかったから早く朝食作るの手伝ってよ、飯田くんもボケっとしてないで手伝って!」



「あぁ、わりぃ」




せかせかと動く芹沢に促され、自分も包丁を握りパンを切っていく。そしてあっという間に朝食と弁当が出来て…





「うわー!山だー!」



「先輩迷子にならないでくださいよ」



「大丈夫だいじょ…うわっ」




ずてーんと効果音がつくんじゃないかっていうくらい盛大に尻もちをつく芹沢に佐藤と目を合わせて爆笑する。




「ただでさえぬかるんでるんですから落ち着いてくださいよ…っ」



「ハーネスでもつけて歩かせたいよな…!」



「そうやってすぐバカにする!」



ぱんぱんと泥を落とし立ち上がった芹沢は不機嫌そうに山道を登っていく。
標高1700メートル程の山の山頂をめざしつつ、植物の観察をしようという目的だった。




「芹沢、セーブして歩かないと後半ばてるぞ」



どんどん1人で進んでいく芹沢の背中に声をかけると、うるさいと言わんばかりに右手でしっしっとやられた。
尻もちをついたことを笑われたのが相当恥ずかしかったようだった。





「あ、ベニテングタケ」




そう佐藤が呟くと、すごい勢いで芹沢が振り返りこちらへと走ってきた。




「どれ!」



「これです…って押さないでくださいよ、山道転げ落ちちゃいます」



「うるさいうるさい!わ!すごい!ほんとに紅色だ」





キラキラと目を輝かせる芹沢の足元には紅色の可愛らしいキノコがちょこんと生えていた。




「毒性が強いですから拾い食いしちゃだめですよ」



「だって、飯田くん」



「俺じゃねえだろ」



「もうこの際2人ともです」



「なんだと?」





そんな軽口を叩きあいながらベニテングタケを横目にさらに上へと登っていった。
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