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始まり
森の戦闘
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地図も持たず村を出てしばらく無言で森を歩く二人。
隆史が歩く速さを合わせて前を歩き、足音を追ってリトスがついて行く。
だが沈黙に耐えられなくなったのか隆史が口を開いた。
「あのよお、道ってこっちでいいんだよな?」
「は?知らないよ。村の人から地図もらったんじゃないの?」
「いや、貰ってねえ」
足を止めて束の間の沈黙。
「ち…地図も持たずに恐れも知らずに森の中を歩いてたの!?」
「まあな。だって地図がなくてもどこかには着くだろ?」
そう言ってまた歩き出した隆。
だがリトスは歩き出そうとしない。
「おい―」
「ちょっと黙ってて!!」
「お、おう…」
リトスはここまでの道を必死に思い出した。
村のどこから出てきてどうやってここまで来たのか。
(私たちが出て来たのは井戸から近い方の出入り口だったから正門のはず。そして今まで特に曲がらずに森の中を歩いてきた。この森はそう広くないからあと少し歩けば森を抜けられる…けどたしか森の出口付近は…)
そして隆に「もうちょっと歩けば森を出られるわ」と告げると「マジかよ!」と言って走って行ってしまった。
「あっ、ちょっと!」
落ちている木の枝や木の根に躓《つまづ》きながらも急ぎ足で隆を追いかけるリトス。
すると少し遠くで隆の「うぎゃあぁぁ」という情けない悲鳴が森の中を木霊した。
しかし森に食人狼がいると知っていたリトスは特に急ぐ様子もなく、むしろ休憩を始めた。
「ふぅ…疲れた」
背負っていたリュックを降ろし、木にもたれかかってリュックの中身を探ると大きめの紙、木の栓がしてある陶器の水筒、葉で包まれている食べ物、鞘に入った小型のナイフの感触がした。
リュックを手元に置き、足をほぐして手首を軽く振り、軽いストレッチが終わるとリュックを背負い直し、杖を手に取って悲鳴の聞こえる方に歩き始めた。
やがて悲鳴のする方へ歩いていると悲鳴は聞こえなくなり、代わりに人間が魔物に食べられている音が聞こえた。
リュックを降ろし、リトスは武器を持って投げようとしたが、音が複数聞こえ、正確な位置が分からないので投げられない。
(さて、どうしたものか…音からして複数いるんだろうけど下手に投げて一本無駄にするのも嫌だし…)
やがてリトスに気づいた狼は食べるのをやめ、大きく吠えて一匹がりトスに襲いかかった。
「そこっ!」
狼が草を踏む音に反応して武器を投げたリトス。
しかし武器は当たらず、食べられ、痛みで気絶していた隆の腹に刺さる。
襲いかかった狼は眼前まで来ており、りトスは自分に飛びかかる最後の一歩の音で正確な位置を割り出すことができた。
「今度こそ!!」
もう一本の武器を鞘から引き抜き、そのまま振り下ろすと狼の頭に刺さり、そのまま地面に落とした。
「はぁ…はぁ…こんな程度の狼で苦戦とかこの先絶対死ぬ…」
狼の体を足で抑えて乱暴に頭から引き抜く。
持っていた杖は狼を刺した時に離してしまい、足で探ってみるが、蹴ってしまい、どこかの木に当たってしまった。
「やっちゃったな」と言って探そうとするリトスだが、もう一匹いた狼の威嚇で複数いたことを思い出す。
「もうこっちは疲れてるのに…」
息を整え武器を構えるリトス。
狼はリトスが音で反応をしていることに気づき、吠えずに突進してきた。
(吠えてこない…それでこっちに来るってことは私が音を頼りにしてくることが分かったのか?)
走ってくる音に合わせて避けようとした…が、狼は足音をごまかしてフェイントを入れていた。
リトスの避ける方向に合わせて突進をして狼はリトスを押し倒した。
「きゃあっ!」
振り払おうと武器を振り回すリトス。
しかし腕から抑えられてしまい、上手く当たらない。
(こんな…こんな狼に…)
狼が顔を齧ろうとしたその時。
「オラァァ!!」
気絶していた隆が狼の顔を思いきり蹴り飛ばし、腹に刺さっていた武器で何度も狼の体を刺す。
「クソが!クソが!クソが!クソが!」
やがて動かなくなった狼を踏みつけ、「クソが」と言ってリトスの方に歩いた。
「死にそうになってたな」
「食べられてた君に言われたくない。でも助かった、ありがとう」
「いいってことよ!今杖持ってくるから待ってろ!」
隆は落ちていた杖とリュックを拾い、立ち上がったリトスへ順番に返していく。
「そういえば私のリュックに紙が入ってたんだけど、何が書いてあるか見てくれない?」
「紙?手紙とかじゃねぇのか?」
「んなわけないでしょ、ほら、取って」
面倒だと思いつつリュックから巻かれた紙を取り出す隆。
巻かれた紙を広げてみるとそこには地図が描かれていた。
「これ地図じゃねぇか!俺ら今どこにいるか全然分かんねえけど!」
「え?地図入ってたの?ならよかった。お母さんが持ってた地図だから赤い印が付いてるはず。そこが私たちのいた村。それで私たちが向かってる方向は地図を見て右の方」
「えーっと右のほうだろ…ってことはこの森を抜ければ『チアミン』っていう街に行けるんだな」
「そういうこと。チアミンはヒューマンが住んでいる街で、武器と奴隷商売なんかが盛んね。もっともお金を使わない私たちには関係のない話だけど」
「奴隷って…そんなことしていいのかよ?」
「いいんじゃないの?ヒューマンの倫理観は知らないけど。その街じゃお金がなければ奴隷に、お金があれば普通に生活できるって聞くし」
奴隷が当たり前だということに怒りに震える隆。
だがそれと同時に奴隷を従わせることができるという期待にも震えていた。
隆史が歩く速さを合わせて前を歩き、足音を追ってリトスがついて行く。
だが沈黙に耐えられなくなったのか隆史が口を開いた。
「あのよお、道ってこっちでいいんだよな?」
「は?知らないよ。村の人から地図もらったんじゃないの?」
「いや、貰ってねえ」
足を止めて束の間の沈黙。
「ち…地図も持たずに恐れも知らずに森の中を歩いてたの!?」
「まあな。だって地図がなくてもどこかには着くだろ?」
そう言ってまた歩き出した隆。
だがリトスは歩き出そうとしない。
「おい―」
「ちょっと黙ってて!!」
「お、おう…」
リトスはここまでの道を必死に思い出した。
村のどこから出てきてどうやってここまで来たのか。
(私たちが出て来たのは井戸から近い方の出入り口だったから正門のはず。そして今まで特に曲がらずに森の中を歩いてきた。この森はそう広くないからあと少し歩けば森を抜けられる…けどたしか森の出口付近は…)
そして隆に「もうちょっと歩けば森を出られるわ」と告げると「マジかよ!」と言って走って行ってしまった。
「あっ、ちょっと!」
落ちている木の枝や木の根に躓《つまづ》きながらも急ぎ足で隆を追いかけるリトス。
すると少し遠くで隆の「うぎゃあぁぁ」という情けない悲鳴が森の中を木霊した。
しかし森に食人狼がいると知っていたリトスは特に急ぐ様子もなく、むしろ休憩を始めた。
「ふぅ…疲れた」
背負っていたリュックを降ろし、木にもたれかかってリュックの中身を探ると大きめの紙、木の栓がしてある陶器の水筒、葉で包まれている食べ物、鞘に入った小型のナイフの感触がした。
リュックを手元に置き、足をほぐして手首を軽く振り、軽いストレッチが終わるとリュックを背負い直し、杖を手に取って悲鳴の聞こえる方に歩き始めた。
やがて悲鳴のする方へ歩いていると悲鳴は聞こえなくなり、代わりに人間が魔物に食べられている音が聞こえた。
リュックを降ろし、リトスは武器を持って投げようとしたが、音が複数聞こえ、正確な位置が分からないので投げられない。
(さて、どうしたものか…音からして複数いるんだろうけど下手に投げて一本無駄にするのも嫌だし…)
やがてリトスに気づいた狼は食べるのをやめ、大きく吠えて一匹がりトスに襲いかかった。
「そこっ!」
狼が草を踏む音に反応して武器を投げたリトス。
しかし武器は当たらず、食べられ、痛みで気絶していた隆の腹に刺さる。
襲いかかった狼は眼前まで来ており、りトスは自分に飛びかかる最後の一歩の音で正確な位置を割り出すことができた。
「今度こそ!!」
もう一本の武器を鞘から引き抜き、そのまま振り下ろすと狼の頭に刺さり、そのまま地面に落とした。
「はぁ…はぁ…こんな程度の狼で苦戦とかこの先絶対死ぬ…」
狼の体を足で抑えて乱暴に頭から引き抜く。
持っていた杖は狼を刺した時に離してしまい、足で探ってみるが、蹴ってしまい、どこかの木に当たってしまった。
「やっちゃったな」と言って探そうとするリトスだが、もう一匹いた狼の威嚇で複数いたことを思い出す。
「もうこっちは疲れてるのに…」
息を整え武器を構えるリトス。
狼はリトスが音で反応をしていることに気づき、吠えずに突進してきた。
(吠えてこない…それでこっちに来るってことは私が音を頼りにしてくることが分かったのか?)
走ってくる音に合わせて避けようとした…が、狼は足音をごまかしてフェイントを入れていた。
リトスの避ける方向に合わせて突進をして狼はリトスを押し倒した。
「きゃあっ!」
振り払おうと武器を振り回すリトス。
しかし腕から抑えられてしまい、上手く当たらない。
(こんな…こんな狼に…)
狼が顔を齧ろうとしたその時。
「オラァァ!!」
気絶していた隆が狼の顔を思いきり蹴り飛ばし、腹に刺さっていた武器で何度も狼の体を刺す。
「クソが!クソが!クソが!クソが!」
やがて動かなくなった狼を踏みつけ、「クソが」と言ってリトスの方に歩いた。
「死にそうになってたな」
「食べられてた君に言われたくない。でも助かった、ありがとう」
「いいってことよ!今杖持ってくるから待ってろ!」
隆は落ちていた杖とリュックを拾い、立ち上がったリトスへ順番に返していく。
「そういえば私のリュックに紙が入ってたんだけど、何が書いてあるか見てくれない?」
「紙?手紙とかじゃねぇのか?」
「んなわけないでしょ、ほら、取って」
面倒だと思いつつリュックから巻かれた紙を取り出す隆。
巻かれた紙を広げてみるとそこには地図が描かれていた。
「これ地図じゃねぇか!俺ら今どこにいるか全然分かんねえけど!」
「え?地図入ってたの?ならよかった。お母さんが持ってた地図だから赤い印が付いてるはず。そこが私たちのいた村。それで私たちが向かってる方向は地図を見て右の方」
「えーっと右のほうだろ…ってことはこの森を抜ければ『チアミン』っていう街に行けるんだな」
「そういうこと。チアミンはヒューマンが住んでいる街で、武器と奴隷商売なんかが盛んね。もっともお金を使わない私たちには関係のない話だけど」
「奴隷って…そんなことしていいのかよ?」
「いいんじゃないの?ヒューマンの倫理観は知らないけど。その街じゃお金がなければ奴隷に、お金があれば普通に生活できるって聞くし」
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