盲目エルフは異世界勇者と旅をする

茜色蒲公英

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ピリキド

ヒューマンの町

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隆に肩車をされピリキドへと戻るラルア。
先程と変わらず人から見られる目は邪魔なものを見る目だが一人の時よりは気が楽になれた。

「どうだ、まだきついか?」

(ううん。君といるから平気だ)

「そりゃよかった。それであいつらのいる病院ってどこにあるんだ?」

(えっと確かまだまっすぐ行って…)

ラルアの指示通りに道を進む隆。
数分もしないうちに病院にたどり着きそのまま入ろうとすると肩車をしていたラルアの頭が入り口にぶつかってしまう。

「わりい、大丈夫か!?」

(へ、平気さ…ここまで肩車してくれてありがとう。もう降ろしてくれていいよ)

隆はラルアを降ろすと額の髪を優しく上げて確かめる。

「たんこぶはできてないみたいだな…よし」

(そんなに強く打っていないからね。僕も少しぼうっとしていなければ抑えるだけになったと思う。ライナは二回の病室にいるよ)

階段を上がりドア隆がドアをノックすると中からライナの声で「どうぞでござる」という声が聞こえてくる。
ドアを開けると出かける準備ができている二人が立っていた。

「待たせたな。ちっと色々あって来るのが遅れた。それでこの町には仲間を雇いに来たんだったな。やっぱり傷を治す僧侶か?」

「傷を治すのは治療魔法使いの役目。そっちの世界の僧侶がたくましいだけでこっちは一般人だよ」

「マジかよ…まぁ魔法は魔法使いが使うんだし当然といえば当然か…?」

「しかし魔法使いを仲間にするのは構わないでござるがヒューマンの魔法使いは魔力量が他の種族と比べて半分以下でござるよ。拙者の傷も一人で治したものではないでござろう」

隆が「そうなのか?」という視線をラルアに送ると頷く。

「魔力量の高さを種族順にいうとアスモディアン、エルフ、トロル、ヒューマンといったところでござるな。拙者みたいなアスモディアンとヒューマンのハーフだったら純粋なアスモディアンの魔力には劣るではござるがそれでもエルフより魔力量は高いでござる」

「だったらなんでさっきの戦闘で魔法を使わなかったの」

「魔法陣書いてる余裕なんてなかったでござるし知ってのとおり詠唱魔法は魔力を多く使う上にそこまで威力がないでござるから体術の方が効果があると思ったのでござる。ちなみに拙者治療魔法はてんで駄目でござる」

「お前が治療魔法をやれ」と言われる前に断り、ライナが代わりの治療役を指名したのはラルア。
魔力が高く頭がいいので魔法陣を書けても書けなくてもケガを治す分には中なのではないのかとのことだった。

「おいおい、ラルアは便利屋じゃねえんだぞ?俺らの中じゃ強さはトップだしこれ以上負担かけるわけにはいかねえだろ」

(そう言ってくれるのはありがたいね。けど僕も無敵というわけじゃない。治療魔法は覚えておいて損はない。けど僕一人だけ治療役だといざという時に代役がいないだろう?だからこの町でできるだけ魔力の高い魔法使いを雇おう。リトス、君の頬から出たダークジェムは?)

「持ってるよ。確かこれを杖とかに組み込むといいんだってね」

(なら適当な杖を買って組み込んで魔法使いに持たせればどれほどかは分からないが戦力になるだろう)

「そうだね…お金は集会所で稼げばいいか」

「おっ、久々の依頼か。今度は魔王が関わってなきゃいいんだがな…」

言った途端自らフラグを建てるような事を言ってしまったと後悔する隆。
一行は病院を出ると病院を出て集会所を探し始めた。
ここに来たとき病院は奇跡的に早く見つけたもののこの町はとても広くどこが何の建物なのか入ってみなければ分からないような見た目統一感があった。

「前の集会所が割と大きかったからこの町の集会所はもっと大きいもんだと思うんだが…それっぽい建物がねえな」

「話を聞いてみる?その方が早いでしょ」

(そうしたいんだけどね…どうにもここの町の人は僕たちをよく思っていないんだ)

「じゃあ自力で探し出すしかないってことか…今日中に探し出せるかな」

一軒ずつ入ってみては出ていきを繰り返すこと数時間、時には冷やかしかと怒られその度に「分かりづらい」と隆が怒鳴り返していた。
外見は同じでも入る店はバラバラで服屋の次に飲食店、その次に遊技場など法則がなく百の店を超えた時には日が沈んでしまいどこにも入れなくなってしまった。

「これでもまだ半分か…宿屋は確か十個くらいあったよな」

「あったでござるがお金はあるのでござるか?」

手持ちのお金を確認する隆。
しかし四人が一泊できるほどの金額は無かった。

「そういやこの世界に来て金稼げたのって盗賊団の時と絡まれたときだけだったな…今日も野宿か」

「そうするしかないよね、一旦町出るの面倒くさいけど」

昼には気がつかなかった、建物と建物の間を繋いでいる鉄の棒に吊るされているランプが薄明かりを灯していた。

「こういう明かりいいよな。明るすぎずちゃんと足元まで見えるっていうのは安心するっつーか」

「そうでござるな。周りの視線が痛くなければもっといいのでござるが」

「それは言うな」

町を出て尽きかけの食料で食事を済ませ、一行はラルアが生み出した木の下で寝るのだった。

一方その頃、熊のぬいぐるみがこれでもかと飾られた部屋のベッドで自分の背丈以上に大きなぬいぐるみを抱え一人顔をうずめているアメジストが座っていた。

「魔王様…私は一体これからどうしたらいいんでしょうか…リトスというエルフとの関係を知ってしまったからには私は下手に動けない。トパーズも強すぎるからってしばらくはおとなしくしてるって言うし私も城で待機してるしかないのかな…」

ドアがノックされる音が聞こえると応え、ぬいぐるみを一旦離してドアを開けるアメジスト。
そこには壁に寄りかかって糸で遊んでいる男がいた。
その男はトロルの森でリトス達を襲い一度全滅させたトパーズという男だった。
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