盲目エルフは異世界勇者と旅をする

茜色蒲公英

文字の大きさ
39 / 73
ピリキド

一攫千金

しおりを挟む
アメジストがドアを開けるとそこにはトロルの森でリトス達を全滅させたい糸使いの男「トパーズ」がいた。

「やぁやぁアメジストご機嫌いかがかな」

「見ての通り下がりに下がってる。そういうお前もおとなしくしろって言われてご機嫌斜めなんだろ?」

「んふふ、それが実はそうでもない。小生は君と違って魔王様からあの時森に行く前に説明を受けていたからね。結果途中で『なかなか強いじゃないか、次は負けない』みたいなことを言って退散しようとしたが思いのほか連携が取れていたものだからついムキになって皆殺しにしてしまったのだが。しかし魔王様は『しばらくは手を出すな』と言っていただけでまたどこかで彼らと戦えることはあるだろうな」

「はーん。そんな自慢みたいなことをしににわざわざ御足労なこったね」

アメジストがドアを閉めようとするとドアは動かない。

「まぁまぁそう焦らないでくれよ。本題の前の余計な話くらいよくあることだろう?それで小生がここに来た理由だが…この話は魔王さまが知らない話だから内密にできるか?」

「魔王さまがその話について振らなければできる」

「じゃあ話そう。今魔王様は就寝中だからここで話していても問題ないからここで話すが近頃チアミンで奴隷の反逆が起こっている」

「それは珍しいことだな。それがどうかしたのか」

「奴隷は奴隷商に捕まるか自ら奴隷になるかのどちらかなのだが反逆するのは後者。つまり奴隷商に反逆できる戦闘能力を持っているアスモディアンだ。そのアスモディアンが次々と奴隷商を殺していくとどうなるか分かるか?」

「どうなるって街の住民が逃げていってアスモディアンの街になるだけだろ?ハーフのやつがどうなるかは知らないけど」

「違う違う問題はそのあとだ。逃げ出した奴らがどこかに『チアミンの街がアスモディアンに支配されている』と依頼を出してみろ。どうなる」

「そりゃあ誰かが解決しようとするだろうね」

「アホ。魔王様が侵攻しようとしているとデマがまだ広がっていない時にアスモディアンの反乱が重なったら大変なことになると言っているんだ」

「へぇ、それで私に何をしろって言うの?言葉一つで反逆収められる程達者はないけど」

「そんなこと百どころか千も承知だ。君にはチアミンの街に住んでもらってアスモディアンの奴隷が反逆しようとしたらどんな手を使ってでもいいから止めてもらいたい」

「最悪殺してもいいってことか?」

「ああ、反逆するやつはわざわざ一度売り物になるから分かりやすいだろう。頼めるか」

「ああ!魔王様のためなら一人とは言わず何人でも叩きのめしてやるよ!」

そういうと動くようになったドアを閉めて急ぎ支度を始めてアメジストは城を出て行ったのだった。
元気になったアメジストを見送ったトパーズもまたアメジストが何かをしでかすことを見越してチアミンへと向かった。
翌日、リトス一行は改めてピリキドの集会所を探して町を歩いた。
食料は限界を迎え一週間以上飲まず食わずに生きられるリトスを除けば残りの三人は餓死を免れない状況だった。

「昨日数時間探して半分だから今日中には見つかると思うんだけど…そもそもここって集会場あるのかな?」

「今更それ言うか?そりゃあ似たり寄ったりの外見してる建物回ってりゃそう思うが」

「しかし今までの建物の大きさからして集会所の大きさにしては無理があるでござるな。どの建物も大きくて二階建ての一軒家程度でござったし依頼と人が集まる集会所は最低でも五倍以上ないとこの町の広さからして人が入らないでござる」

「そうだよな…あると確信できるなら大きな建物で多くの人が出入りできて…もしかして城の中にあるんじゃねえか?」

隆の出した答えに固まる一行。
あったとしても城の中に入れるとは思えないからだ。

「城の中かぁ…お金も食料もないしイチかバチか行ってみるしかないんじゃない?それか私達はここで待ってるから純粋なヒューマンの隆が一人で集会所に行って依頼を取ってくるとか」

「それがいいだろうな。んじゃちょっくら行ってくる」

駆け足で城に向かう隆。
城に向かう途中で敵が入れないように周りに深い穴を掘り水を溜めて橋を下ろさなければ入れないようにするということもなく中に入ることができた。
隆は笑顔で「ここの地図ですよ」と笑顔で地図を渡してくる美女に困惑しつつ地図を受け取り集会所に着くことができた。
集会所は強そうな剣士が話し合っていたり酒を飲み交わしていたりと町に負けず劣らず賑わっていた。
依頼を受けようと二十は超えているだろう横に並べられた木の看板を眺めていく。

「なるほど、左から簡単なもので右の方に行っていくと難しくなっていくのか…」

思い切って難しいものをとってたくさん稼いでやろうと思い一番右まで行くと「急募!正騎士団の捜索!」と書かれた紙が貼ってあった。

(これって犯人俺らだよな…)

隆は見なかったことにして「先払い可能。猛地竜マグドラを討伐せよ」という依頼に目を惹かれた。
危険なのであろう大きく髑髏が書かれ手に取るフリをすると視線が集まるのを感じる。
このような危険な内容の依頼でなくとももう少し簡単な依頼でも少しの間なら過ごせる報酬内容だったのだが「先払い可能」という言葉と金額の桁に惹かれ思い切って隆は受けることにしてしまった。
手続きを済ませ先払い可能である十パーセントの報酬を受け取るとリトス達の元へと走っていった。

(おや、隆が帰ってきたみたいだね。あの様子じゃ依頼は受けられたみたいだ)

裁判の結果が出たかのように息を切らして笑顔で依頼内容の紙を三人に見せる隆。
リトスには見えないため隆は口で説明すると隆の顔と腹に鉄拳が勢いよく入るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

処刑回避のために「空気」になったら、なぜか冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで。

チャビューヘ
ファンタジー
「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。 「……お前の声だけが、うるさくない」 心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の、すれ違い溺愛物語!

処理中です...