6人目の魔女

Yakijyake

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*** 『優しさ』の意味

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「ちょっと外の空気を吸ってきます」
 駆け足でベレッタはダイニングを後にしてしまった。私は追いかけようとしたら、フリッツに止められた。
 「少しだけ一人にしてあげよう」
 そう制止されたので仕方なく再び椅子に腰掛ける。手紙を今渡したのは失敗だったかもしれない。そう一抹の後悔を感じながら。
 ただ、残された側の空気感は地獄だった。とてつもなく空気が重かった。誰一人として口を開かない。どちらかという誰かが喋るのを待っているかのような。そんな空気感の中、私は耐えきれずに、ベレッタの様子を伺うことにした。
 玄関には行っていなかったからきっと庭にいるだろうと思って庭を覗くと、予想通りベレッタは庭にいた。最初は遠くから様子を伺おうと思っていたが、泣いている姿をみて、居ても立っても居られず、結局彼女の座るベンチの横に座った。
 しばらくは無言の状態が続いた。べレッタは声を噛み殺してただ泣いている。
 しばらく会話はよそう、そう思っていたら、意外にも彼女の方から口を開いた。
 「こんなにも、こんなにも色んな涙を流したのは初めてです」
 震えた声でそう呟いた。私はただ黙って頷いた。少しの間、沈黙が続き、どこからか吹いてくる風の音だけが耳に伝わった。
「悔し涙に悲し涙。私は何で今泣いているのでしょうか」
 その問いかけに私は答えることができなかった。すると彼女は意外な言葉を放った。
 「みんな馬鹿…もう、本当に大馬鹿…」
 その言葉の真意を知ろうと私は改めて彼女を見つめる。彼女はそのまま話を進めた。
「みんな、なんで私に優しくするの?家族だから?家族でもないのに…」
 心の中で少し考えた。私たちはなぜ彼女に優しくするのか。かわいそうだから?それとも彼女の受けた仕打ちに同情したから?いや、違う。そんなものではない。もっと単純で、しかも前から私は答えを言っているじゃないか。
 「ベレッタ、よく聞いてください。みんなは家族だから優しくしているわけじゃないのですよ」
 「優しくしているから家族なのですよ」
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