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第1話:ただのゴミ袋による不時着!
しおりを挟むやっと帰ってきた……。休む時間だ。
法学部の分厚いレンガのような教科書と、地獄のような大学生活から解放されて、歴史上最高の眠りにつきたい。
ベッドに倒れ込むと、体が悲鳴を上げているのがわかった。
「ああ、もう……頭がおかしくなりそうだ」
勉強、バイト、退屈な日常。終わりのない回し車の中を走るモルモットのような気分だ。
ぼんやりと窓の外を見る。
特に何も考えていなかった。この退屈なルーティンを壊すような馬鹿なことをしたかったのか、それとも単に過労で幻覚を見ているだけなのか。
とにかく、枕に頭を沈め、目を閉じた。
(寝よう……明日もまた、バイトと勉強の長い一日が待っている。立派な大人で責任感があるフリをしなきゃいけないんだから)
眠りに身を委ねた。
……しかし、突然、妙な感覚に襲われた。
ベッドが消えた? それとも体の感覚が完全に無くなったのか?
暗闇。
神経を押し潰すような重圧と、耳鳴りがするほどの規則的で恐ろしい静寂。
(……ここはどこだ?)
指を動かそうとするが……反応しない。
(最高だな。夢が始まって1分で四肢がバグったのか? 手を動かすのにも課金が必要なのか?)
体全体を動かそうとしたが、俺はただ動かない肉の塊に閉じ込められた「意識」に過ぎなかった。
「おいおい……またくだらない金縛り(睡眠麻痺)の悪夢か?」
突然、目の前で白い光がフラッシュした。
(画面? 脳のバグか? 今度はパソコンのモニターの夢でも見てるのか?)
画面には、恐ろしく速い映像が次々と映し出された。爬虫類の尻尾を持つ人々、炎に包まれる村、灰の中で子供を失い泣き叫ぶ母親……。
(おいおい、なんだよこれ。新作ゲームのティザー広告か?)
心臓が狂ったように高鳴る中、映像が消え、光り輝くテキストがはっきりと浮かび上がった。
【カウントダウン開始:1… 2… 3… 4…】
俺は幻の腕を伸ばし、画面をタップしようとした。
(『広告をスキップ』のボタンはどこだよ! このふざけた映像を止めろ!)
「待て! 何のカウントダウンだ? お前は誰——」
叫び終わる前に、暗闇が突然吹き飛んだ!
凍りつくような突風が顔を打ち、一瞬視界を奪われた。
視界がクリアになった瞬間、俺は絶望的な状況を悟った……。
(俺、空から捨てられてる!?)
猛スピードで地面が迫ってくる。周りを雲が飛び去り、風が怒り狂った列車のように耳元で轟音を立てている。
(いやだ! 地面に激突する前にショック死なんかしたくない!)
絶望の中、シャツをパラシュート代わりにするという、ネットで見たバカな動画を思い出した。(物理学の教授が今の俺を見たら、高卒の資格ごと剝奪されるだろうな!)
震える手でシャツを脱ぎ、容赦なく吹き付ける風の中で、適当に端と端を結び合わせた。
(頼む……このバカげた風、シャツの中に入ってくれ! 少しは協力しろ!)
ギリギリのところで、シャツが哀れなパラシュートのように膨らんだ。
少しだけ落下速度が落ちたが、重力は俺の浅知恵を嘲笑うかのように、最後の一撃を準備していた。
ドガーーーン!!
木々の枝に次々と激突し、俺の体重でバキバキと折れていく。内臓をミキサーにかけられているような感覚のあと、肺から空気が全部飛び出るほどの衝撃とともに地面に叩きつけられた。
「がっ……あぁ……体が……」
痛みや骨の無事を確認する間もなく、息が詰まるほどの腐臭が鼻を突いた。
俺は、腐った食べ物と石器時代から洗ってない靴下を混ぜたような、ネバネバした気持ち悪い泥の上に倒れていた。
胃袋が反乱を起こすのを必死に堪え、息を止めて心の中で毒づいた。
(最高だぜ……ラノベのテンプレなら王城の赤絨毯の上に召喚されるはずなのに、俺は空からゴミ捨て場にポイ捨てか? 俺は生ゴミかよ!)
近くの枝を支えにして、なんとか体を持ち上げようとした……が、枝が折れて再び顔面から泥ダイブ!
「クソッ! 気持ち悪すぎる! もうやめてやる!」
這うようにして泥から抜け出し、太い木の幹に背中を預けた。
方向を確認しようと月を見上げ……俺は完全にフリーズした。
「これ、夢だよな? なんで月が『二つ』あるんだよ……」
血を流す傷口のように赤く垂れ下がる月。そしてその隣で、死人の眼球のように冷たく俺を見下ろす白い月。
法律、論理、犯罪捜査学を学んできた俺の脳が、この現実を全力で拒絶していた。
俺はスレイマン(Sulaiman)。ただの大学生で、人生の大半は講義とゲームと不味いコーヒーで構成されている。
(なぁスレイマン……法廷のルールはここでは通用しないぞ。ここにあるのは『生』か『死』の二択だけだ)
ゆっくりと立ち上がり、暗い森の中を足を引きずりながら歩き始めた。
ねじ曲がった黒い木々が、俺の首を絞めようとする青白い指のように伸びている。
その時……
ドシン…! ドシン…! ドシン…!
大地を揺らす、重くて速い足音が近づいてきた!
(分析してる暇はない……隠れろ!)
巨大な木の根元に、狭い空洞があるのが見えた。俺は蛇から逃げるビビりのカエルのように、その穴へ飛び込んだ。
(マジで最悪だ、なんでこんなに狭いんだよ! リス専用物件か!?)
体の痛みを無視して無理やり体を押し込み、顔が爆発しそうになるまで息を殺した。
足音がすぐそこまで迫る。
小型車ほどもある巨大なイノシシの頭。恐ろしい牙を剥き出しにし、地面の匂いを嗅ぎながら……俺の隠れている穴へ一直線に向かってくる!
(頼む……俺なんて皮と骨だけのスジ肉だぞ! もっと脂の乗った豪華なディナーを探しに行ってくれ!)
アォォォォーーーーン!!
遠くでオオカミの遠吠えが森に響き渡った。
イノシシはピタリと動きを止め、振り返ると、真の強敵を求めて猛スピードでその声の方へ走っていった。
胸の上から山がどかされたように、俺は一気に息を吐き出した。
穴から出ようとした……が、体が抜けない!
(冗談だろ!? 宇宙全体で俺をイジメようとしてるのか? モンスターから生き延びたのに、アホなギャグアニメのキャラみたいに木に挟まって死ぬのか!?)
数分間、イモムシのように体をよじって格闘し、ズボンの横を盛大に破りながらなんとか滑り出た。
モンスターが去ったのとは逆の方向へ走り続けると、光の反射が見えた。
湖だ!
「やっと……水だ!」
膝から崩れ落ち、何年も砂漠を彷徨ったかのように、狂ったように水を飲んだ。
胃が水で満たされるにつれ、妙な感覚に気づく……。落下時の痛みが引いている? 痣が消えている?(魔法の水か?)。
水面に顔を近づけ、自分の姿を見て思わず悲鳴を上げそうになった。
(待て……これ、俺か!? 髪は感電したみたいに爆発してるし、顔は黒い泥だらけ。B級映画をクビになったゾンビにしか見えない!)
冷たい白い月の光の下で、俺は急いで体の泥を洗い落とし始めた。
しかし、ピタリと手が止まった。
右の手首に、細い黒い線が巻き付いていた。
力強くこすってみたが、消えない。傷でも、泥でもない……。
それは『タトゥー(呪印)』だった。複雑な幾何学模様が、俺の心音に合わせるかのように、微かに明滅していた!
(おいおい、今度は何だ? 売約済みの商品としてスタンプでも押されたのか? 俺はゴブリンの私有財産にでもなっちゃったわけ?)
俺は周囲の暗い森と、空に浮かぶ二つの月を見上げ、深く、深くため息をついた。
(なるほど……どうやら、ゲームは始まったばかりらしい)
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