あの日、北京の街角で4 大連デイズ

ゆまは なお

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「日本では皮から作ったことないですよ。スーパーで餃子の皮買って来て、母が作った具を包むのがうちの餃子作りだったな」

「具は家で作りますか?」
「ええ。うちは兄弟が多くて食べる量が多かったから、作るほうが安上がりだったんでしょうね」

 兄弟で競争して餃子を包んだものだった。たくさん具を入れてきれいに包むのは難しい。包むのは主に三男の達樹と祐樹で、上の兄二人がフライパンで焼く担当だった。ごま油のいい匂いがしてジュウジュウと音が立って、キッチン中においしい空気が漂っていた。

 その横で母が山ほどのキャベツとニラを刻んで、父が大きなボウルでひき肉を練っていた。懐かしい実家の風景を思い出す。

「だけど皮から作る家はほとんどないんじゃないかな」
「上野さんの家は?」

 朴が孝弘に話を振る。

「うちも皮は作ってなかったですよ。うちだと餃子じゃ小さすぎて包めないって春巻きの皮買って来て棒餃子にしてましたけど」

 孝弘がそう答えて、それもいいですねと朴がうなずいた。家政婦と作ったのか、料理を教えてくれたと言う近所のおばあちゃんとの思い出なのか。もしかしたら父親かもしれない。

「日本の鍋貼《グオティエ》(焼き餃子)パリパリでおいしいですよね。たくさん食べられますし」
 日本に1年間、語学留学していた張秀高が話に入って来た。

 中国では残り物かまかないのイメージが強い焼き餃子だから、日本の中華料理屋に行って焼き餃子が一般的なことに張はとても驚いたらしい。餃子は主食なのにご飯と一緒に食べることにもびっくりしたと笑う。

 食べてみたらその味にやみつきになって「餃子の王将は中国進出しないかなあ、日高屋でもいいんだけど」と本気で言っている。


「市内に日本風の鍋貼、出す店ありますよ」
「え、本当? どこに?」

「へえ、鍋貼出す店、あるんだ」
 聞いていた孝弘も興味を示した。

 朴と張が市内の餃子屋の情報交換をはじめ、祐樹はそれを聞きながらビールを飲んだ。大連在住の日本人は年々増えていて日本料理屋も増えている。中には日本の餃子やラーメンを出す店もあって、中国人にも受けがいい。

 孝弘も話に入っているのを見て、日系スーパーで餃子の皮が売ってたら買って来ようと思いつく。日本式にキャベツ入りの焼き餃子を作ってみるのもいいかも知れない。

 中国では餃子と言えば白菜が主流だ。思い出したら久しぶりに焼き餃子が食べたくなって、今度の休みには餃子を作ろうと祐樹はこっそり決めた。母にメールしてレシピを訊かないと。

「この後は僕は失礼するよ」
 食事会だけで青木は先に帰り、孝弘と祐樹はカラオケにもつき合った。

 朴から課題曲と言われていた「毎天爱你多一些《メイティエンアイニートゥイーシェ》」を歌って、中国人スタッフから大きな拍手をもらった。うん、まあまあうまく歌えたと自分でも気持ちがいい。

「この曲、日本語では「真夏の果実」って言うんでしょ? スイカのことですか?」
 と日本語をほとんど話せない李鴻が北京語で訊いてきたので、返事に困った。

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