いつまでもここにいて 改訂版

ゆまは なお

文字の大きさ
27 / 28

5-6

しおりを挟む
「番同士以外は発情期でもかすかに感じる程度だから平気だ」
「そうなの?」
 こんなに部屋中、甘くたちこめている香りが他人にはわからないなんて不思議だった。
「と言ってもαにはわかるし、嗅覚の鋭い熊族とかも。だから気を付けないといけない」
 森の中でしょっぱなに熊族に襲われかけたことを思い出す。
 それに今日のことも。
 あの男たちはαで、碧馬の発情した匂いに引き寄せられたのだ。
 本当にあの場にリュカが来てくれなかったら今頃どうなっていただろう? それを想像すると恐怖で体がこわばる。

 リュカが怖いことを思い出したのを忘れさせるようなキスをしてきた。息もできないくらい深く深く口づけて、唇を離すと真摯な表情になった。
「次はここを噛んでもいいか?」
 首筋をやさしく撫でながら、リュカが問いかけた。
 湯を浴びるときに外したので、首には何も着けていない。
 それが番としての求婚の言葉だと、碧馬もすでに知っている。
「うん、いいよ」
「本当に?」
 いいよと言ったのに、リュカはちょっと驚いた顔になる。

「俺もリュカが好きだよ」
「俺と結婚してくれるのか?」
「……うん」
 自分が男からプロポーズを受ける日が来るとは想像したこともなかったが、そうはっきり言われて嬉しかった。
「ここで俺と一緒に暮らしてくれるか?」
「うん」
「ずっと?」
「うん」
「日本には戻れなくても?」
「うん」
 答えた途端に強く抱きしめられて、本当に訊きたかったのは最後の質問だったのだとわかった。

 ここで暮らすうちに、なんとなく気がついていたことだった。たぶんもう、元いた世界には帰れない。もしかしたら、最初に教えてもらった通り、大きな街まで行って魔導師や占星術師なら帰れる方法があるのかもしれない。
 でもリュカが毎日会いに来てくれて、彼の気持ちに触れるうちに、ずっと側にいたいと思うようになっていた。
 もう戻らないと口にするのは勇気がいることだったけれど、リュカがいてくれるならここで頑張ろうという気力も湧いてくる。
 リュカを好きになっても相手はケンタウルスだから思いが叶うことはないと思っていたのに、リュカも自分を好きだと言ってくれて、こうして抱き合うことができるなんて夢にも思っていなかった。
「ここにいるよ、リュカの側に俺もいたい」
「……よかった」
 心から安堵した顔で、リュカは碧馬に口づけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜

鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。 そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。 あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。 そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。 「お前がずっと、好きだ」 甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。 ※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

人気者の幼馴染が俺の番

蒸しケーキ
BL
佐伯淳太は、中学生の時、自分がオメガだと判明するが、ある日幼馴染である成瀬恭弥はオメガが苦手という事実を耳にしてしまう。そこから淳太は恭弥と距離を置き始めるが、実は恭弥は淳太のことがずっと好きで、、、 ※「二人で過ごす発情期の話」の二人が高校生のときのお話です。どちらから読んでも問題なくお読みいただけます。二人のことが書きたくなったのでだらだらと書いていきます。お付き合い頂けましたら幸いです。

処理中です...