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しおりを挟むラファエルが魔族に体を差しだすのは、4歳上の兄のためだった。
兄はある日突然、謎の湿疹が全身に現れ、徐々に全身の力が入らなくなるという原因不明の病に侵された。
両親は跡取り息子の発病にたいそう嘆き悲しんだ。領主の息子の病に高名な医術師や呪術師がやってきたが、治療の甲斐なく病は徐々に進行し、半年前には寝たきりになってしまった。
ラファエルは兄の回復を祈るため、毎日学校帰りに教会に通った。
まだ16歳の少年には、そのくらいしか兄のためにできることがなかったからだ。
ある冬の夕刻、熱心に祈りを捧げた後、薄闇のなか帰宅を急ぐラファエルに、魔族はあまく低い声で誘いを掛けてきた。
「お前の生気を分けてくれるなら、兄を助けてやろう」
紅い瞳に黒髪の美しい魔族は、この世の物とは思えないほどの禍々しさで笑いながらそう誘ったのだ。
この者の言葉に耳を貸してはいけない。
そのくらいのことはラファエルも承知していたが、両親の嘆きや兄の辛そうな顔が思い出されて、つい足を止めてしまった。
「兄はもう3ヵ月も寝たきりなのです。本当に助けられますか?」
「ああ。我に不可能なことなどない」
天使よりも悪魔のほうがきっと美しい生き物だ。
彼に出会って、ラファエルはそう思うようになった。そうでなければ、魔族の手に堕ちる人間がこんなにも多いわけがない。
いまだに名前も知らないが、彼は律義に週に数回、屋敷へやってきてラファエルを抱く。
どんな術が施されるのか、その間、ラファエルがどんなに泣いても叫んでも、絶対に誰も部屋にはやって来ない。
隣りの部屋に控えているはずの、ラファエル付きのメイドはもちろん、屋敷の警備に立っているはずの夜警でさえも。
きっとこのまま、魔族が飽きてしまうまで体を貪られるのだろう。
あるいは魂まで食われてしまうのかもしれない。
そう考えると、ラファエルは絶望的な気持ちになる。
こんなことがいつまで続くのだろうと考えて不安になる夜もある。
あるいは時おり、怖くなることもある。
怖いのは魔族と取引きしたことではない。
ラファエルが怖いのは、自分が自分を保っていられるのかということだった。このまま魔族に取りこまれて、自分も魔族になってしまうんだろうか?
魔族の淫らな性はまだ16歳のラファエルには想像もできなかったほどの淫蕩ぶりで、彼に抱かれている間、あまりの快楽に意識を失うこともたびたびだった。
けれども、兄は確かに元気になりつつある。
それだけが救いだった。
最近は食事も軟らかく煮たスープやパンなら食べるし、起き上がって座ることもできるようになった。自分が魔族に従っている限り、このまま回復するのだろう。
跡取りである兄が元気になれば、それは本当に嬉しく、両親のためにもそして領民のためにも安心できることだ…。
その思いだけで、ラファエルは今の状況に耐えているのだった。
「あ、あぁ、もう、許して…」
泣きながら懇願しても魔族は楽しげな笑みを見せるだけで、ラファエルのお願いなど当然聞いてはくれない。
「どうした?」
「熱い…。おかし、く、なる…」
体の奥が疼いて、魔族を欲しがっているのがわかる。
自分がこんなに淫らだなんて信じたくない。
でもこの熱を放出したくて、自然に体は揺れ、愛撫をねだる。
あさましくてそんな自分は嫌なのに、どうしても抑えられない。
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