魔族の寵愛

ゆまは なお

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 散々泣いて乱れたラファエルが4度目の絶頂を迎えて気を失うと、魔族はそっと2階の突き当りの部屋に向かった。


 天蓋付きの大きなベッドに、ラファエルの兄が眠っている。

 彼に会うのはずいぶんと久しぶりだ。

「ほら、薬だ」
 小さなクリスタルの瓶からほんの一滴、魔族は兄の口元に何かを垂らした。

 唇に受けたその刺激に、兄が目を開いた。
 焦点の合わない目で兄は魔族の姿を探す。

 どうにか身を起こそうともがくが、枕からほんの数センチ上がったところでまた首が落ちてしまう。

「お前、よくも俺をこんな目に遭わせたな?」
「何をいう。起き上がれるまでに回復しただろう?」

 3ヵ月前までまったく寝たきりだった彼が、今では起き上がれるようになったのは事実だ。

「お前がこんな病にさせて、回復させたもないだろう」
 恨みがましい眼で睨んでも、魔族は涼しげに微笑むだけだ。

「そうだったか?」
 彼は冷たく答えて、長く伸びた爪の先で兄の痩せた頬をなぞった。

「これ以上の回復などしないが、しもべでいる限りは生かしておいてやる」
「こんな約束じゃ、なかったはずだ」

「自分よりも賢く美しい弟が目障りだと言ったのはお前だろう?」
「俺は…、ただ、俺の目の前から消してくれと言ったはずだ」

「今の状態はまさしくそうだろう? お前の目の前から弟の姿は消えている、契約通りだ。何か間違っているか?」
 嘲る声で魔族は囁き、低く笑った。

「お前を呼び出したのは俺だ。召喚した人間の頼みを聞くのが筋じゃないのか」
「だから対価の分だけお前の願いは叶えた。さあ眠れ、話は終わりだ」

 魔族がそう言うと同時に、兄の首ががくりと枕に沈んだ。

「本当にお前の弟はかわいいな…」
 彼は眠ってしまった兄に語りかける。

「我を呼びだしてくれたことには感謝しよう。お前のおかげでラファエルに出会えたのだからな」

 半年前、この魔族を召還したのはラファエルの兄だ。

 放蕩を尽くしている兄よりも弟のほうが跡取りにふさわしいと推す声が大きくなって、自分の立場を危ぶんだ兄は弟を排除しようと画策したのだ。

 だが、魔族はラファエルを一目見て気に入った。

 ラファエルの美貌と素直な魂が、魔族を強く惹きつけたのだ。

 あれを穢して欲望を引きずり出し、快楽の沼に堕としたらさぞかし素敵な抱き人形になるに違いない。殺してしまうのはもったいない、自分の手元に置こうと決めた。

 契約は果たした。殺してくれとは言われていない。

 「本当に淫らでかわいい抱き人形になった…」

 魔界の大侯爵アシュタルトは紅い瞳を輝かせて酷薄に微笑むと、黒い翼を羽ばたかせ、音もなく姿を消した。


 
 完


 『魔族の寵愛2』公開しました。
  ぜひご覧下さいませm(__)m
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