金の香種と黒の貴種 異世界中華オメガバース

ゆまは なお

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女王との謁見4

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「ああ。俺も女王の方から足を運んでくるとは思わなかった。俺が怪我をしていたからだろうが、塔麗国は比較的、身分にこだわらない気風のようだ」
 変わっているが、ペルルノアとしては格式ばっているよりはありがたい。
「そのようですね。色々と常識が違うけど慣れるしかないでしょうね」
 セルリアは頭痛がしているみたいにこめかみを揉んでいる。
「それより、この事態をどうやってソブラリアに知らせる?」
「親書しか手段がないですが、検閲されるでしょうから書ける内容は限られますね」
 二人とも口を閉ざして考える。書簡を託すことは可能だろうが、内容については検閲があるだろうし、本当にソブラリア王宮に届くかは不明だ。
 予定では滞在中は宰相補佐が連絡係となって書簡を届けるはずだった。しかし使節団は全滅した。

 手紙以外というなら伝令しかないが、セルリアは怪我を負っているし、魔の樹海を一人では越えられないことは嫌というほど理解した。
 翠耀ツイヤオの態度を見る限り、積極的に国交を開く気はないようだから、手紙はむしろ届かないと思ったほうがいいかもしれない。ペルルノアはゆるく首を振った。
「まあいい。滞在は許可されたんだ。必要な情報を集めて、手紙の届け方はおいおい考えよう。とにかく、まずは言葉だな」
「ええ、早急に言葉を学ばないといけないと思って、私も教えてもらっていました」
 セルリアも真剣な顔でうなずく。
 父の野望はさておき、ペルルノア自身がこの国に興味を持っている。
 王宮内を自由に出入りできる許可ももらえたし、状況はそんなに悪くない。いや、考えようによってはかなりいいのでは? 

 何より喜ばしいのは、気になっていた飛煌フェイファンが王族だったことだ。それなら縁が切れることはない。今後も会えると思うと気持ちが弾んだ。
 飛煌が運命の番かどうか、ペルルノアには確信が持てない。ただこれまで会った香種とは明らかに違う。
 あんなにもペルルノアの気持ちを惹きつけた者はいない。強くて鮮やかで目を離せない。絶対に他の者には譲れない。
 女王の弟で香種なら、ペルルノアが結婚相手として申し込んでも王族同士でつり合いは取れる。どういう理由か知らないが、二十五歳の飛煌にはまだ番がいないようだし、それならもっと親しくなって結婚を申し込んでもいいだろうか。ペルルノアは婿入りしても問題ない立場だ。
「それと明日にでも、馬車の荷物を確認させてもらおう。取り急ぎ女王に何か献上品を差し上げるのと、最低限の滞在費くらい準備しないとな」
 翠耀からは玉佩を貸してもらったが、はいそうですかと使えるものではない。
「そうですね。馬車そのものもどの程度使えるか見てみないと」
 いつか帰る日が来るのか現時点ではわからないが、馬車の整備はしておいた方がいいだろう。

「失礼します。入って構いませんか?」
 李誠リチョンの声に返事をすると扉が開いて、侍従が二人で琴を運んでくる。それを見て、眠っている間、ずっと不思議な音楽が聞こえていたのを思い出した。
 侍従の後ろから長袍姿の小柄な青年が現れる。栗色の真っすぐな髪と目をした色白の青年は人形のように整った顔をしていて、ひと目で香種と見て取れた。
「シャオイン、ありがとう。おかげでペルルノア様が目を覚ましたよ」
 セルリアが気安い様子で青年に声をかけた。すでに顔見知りらしい。
「いえ、お元気になってよかった。まだ本調子ではないでしょうから今日も治療に来たのですが」
 シャオインと呼ばれた青年はペルルノアを向いた。香種らしいきれいな顔立ちだが、物怖じしない態度でにこりと笑いかける。

「初めまして、ペルルノア王子殿下。瀟音シャオインと申します」
 おっとりとした口調で名乗った瀟音は、王宮を守護する上級巫術師だという。彼も巫術師と聞いてペルルノアは驚いた。
「巫術師ってみんな飛煌フェイファンみたいな感じかと思っていたが」
 ペルルノアのつぶやきに瀟音シャオインは「飛煌フェイファン様は特別です」とほほ笑んだ。
「巫術師の中でも特別に強い力を持っています。翠耀ツイヤオ様と二人で塔麗国を守護している方ですから」
 巫術師はそれぞれ火や水や風など得意とする術式があるが、飛煌はいつくかの術式を組み合わせて使えるという。
「僕は楽器が得意で、治療術を使うんです」
「ペルルノア様が昏睡状態の時には毎日、午前と午後に来て演奏してくれていたんです。おかげで、側で聞いていた私の足も治りが早かったんです」
 セルリアが言うと李誠がつけ加えた。
「瀟音の清魂律は怪我の治療にとても効果があるのですよ」
「音楽に怪我を治す力があるのか?」
「ええ、旋律には巫術を込めやすいのです。王子のお国でも魔術を使う者は歌ったり踊ったりしませんか? それと同じことです」
 言われてみれば、魔術を使う儀式には音楽がつきものだ。

「なるほど。手間をお掛けしたようで、感謝します」
「いいえ。よければこれからもしばらく通おうと思いますが構いませんか?」
「私は助かりますが、大変ではないですか?」
 毎日、何時間も琴を奏でるのは負担だろうと思ったが、瀟音は首を横に振った。
「翠耀様からも頼まれていますし、僕は演奏が苦じゃないので楽しいくらいです」
「それならお言葉に甘えます」
「ええ。自由にしていて構いませんよ。ゆったりとした気持ちで聞くと効果が上がりますから」
 李誠がお茶の用意をしてくれ、ペルルノアはセルリアと一緒に瀟音の演奏を聞いた。
「とても気持ちがいい曲だな」
「そうですね。琴の音って響きがいいですね」
 眠っている間に聞いていたせいか、何となくなじみがあるような気がする。気持ちが穏やかに落ち着いて、確かにこれは効果がありそうで、ペルルノアはゆったりとした気持ちになった。

 翌日からも瀟音シャオインは毎日やってきて、演奏の合間には瀟音とおしゃべりをした。瀟音は二十二歳と聞いて、やはり塔麗人は若く見えると思う。
 ソブラリアでは音楽はさほど重視されていなかったが、塔麗国では違うらしい。音楽や舞踊が盛んで誰もが何かしらできるものだという。
「よければ教えましょうか? 楽器ができると楽しいですよ」
 茶を飲みながら瀟音がにこにこと勧めた。楽しいかはさておき、上級巫術師とは親しくなっておきたいという思惑が働いた。 
「俺にできるような楽器があるかな?」
「そうですね、琵琶はどうですか? 琴より弾きやすいと思います」
 何でもよかったのでうなずいた。骨折が治るまでは譜面の読み方を教えてもらうことになり、ペルルノアの日課には音楽が加わった。
 

  
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