剣に愛されていても僕は回復魔法を愛します。

喜ノアサ

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与えられた遺伝子

託されるチカラ(3)

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駆ける。しかし遅いこれでは間に合わないかもしれない。先程よりもスピードが出ていないのか、未だ装備を拾いきれていない。
 「キィァーイッ!」
 走るのに夢中で背後から迫る足音に気づかなかった。ワンテンポ遅れて抜刀をする。しかし、ゴブリンは自分に目をかけることなく走さっていく。あの足が遅いゴブリンとは思えないスピードだ。ゴブリンは一瞬の並走を経て遠ざかっていく。
 「これが援軍の一部だとしたら皆がヤバい!こんな危機救えないで何が領主だ!」
 ファニエルからの助言を思い出し、イメージを固める。まだゴブリンは見える距離だ。
(あのゴブリンを風でバラバラに切り裂く!)
「エアスラッシュ!!」
 イメージをすると無意識に口で詠唱が唱えられた。そして自分は今は手のひらをゴブリンに向け突き出している。瞬間、手のひらから無数の強風が放たれる。表現がまとまらないが、それは未知の現象を目のあたりにし、思考が追いつかないためだ。
 放たれた風の刃は一直線にゴブリンへと翔んでいく。
 「ギュリャァー!」
 ゴブリンが走りの勢いそのままに前方へと倒れ込む。命中した。コントロールをかけることも無く、真っ直ぐと。
 死体に駆け寄るとゴブリンは四肢が胴体から離れ、その胴体も真っ二つになって血を流していた。自らの力が招いた戦闘の結果がこれだ。ゴブリン相手でも多少抵抗があるのは否めない。
 しかし、今はそんなことを考えている暇はない。セーフィムさんの所へ急がなくてはいけない。

 

 装備を全て拾うと、先程の戦場が見えてきた。援軍の影響なのか戦闘は未だに続いていて、多勢に無勢なのかセーフィムさんや兵士にも疲労が見られた。地面にうつ伏せで横たわる兵士もいてるようで、戦闘の勢いが分かる。
 力を使ってみんなを助けなければ、しかし公にこんな異能を晒したら何があるか分からない。どうするべきか、
 
 『ぼくのちからつかう?』
 また、脳に直接シリーズだ。先程よりも驚きは無いが、声の主が違うことに気づく。
「君は誰?もしかして精霊!?」
 『うんそうだよ!それで、なにをしたらいいの?』
「えっと、あのゴブリンを他の人の目に見えないように倒せないかな?」
 『うーん、たぶんできるよ!やればいいの?』
「うん、お願い」
 『わかったよ!…よっうーん、ほい!』
 何か酔うような感覚を感じる。
「シャーァウルゥ!」
 その瞬間ゴブリンが悲鳴をあげて絶命する。ゴブリンの2度目の死だ。それどころか今は、目の前にいたゴブリンが全て倒れている。
 やりすぎた。
「ありがとう!えーっと精霊さん?」
 『うんまたね!』

「セーフィム様!ご無事でしたか!?今丁度、ゴブリンが…突然死しました。このままでは危なかったかもしれません。まさか、なにかしましたか?それに何故戻ってきたのですか」
 セーフィムさんのことは信頼しているし、この異能のことを打ち明けても良いんではないか。この状況を納得させるほど嘘が達者な自身もない。
 周りに兵士が居ないことを確認し、セーフィムさんに近づき耳元に囁くように話す。
「内緒にして貰えますか?実は……、でこれをやったのは僕なんです」
 セーフィムさんは終始驚いた顔をしていたが、勇者2人の名前が上がった時には生唾を呑んでいた。
「まさかそんなことが…。でもご安心を。他言は絶対に致しません。私を信頼してくださってる証拠ですかね?」
 セーフィムはニコッと笑顔を見せる。そんな表情に頬が赤く染まる。思春期の男子にとって、この刺激は強すぎであった。

 セーフィムさんと僕は倒れている兵士や傷のある兵士の所に向かい、応急処置を行った。結構な疲労が見える。それでも立ち上がれない兵士も王勢いる。
(みんなの傷を癒したい。回復魔法を使いたい)
「ヒーr…」
 突然の詠唱を手を抑えて止める。強制詠唱の存在を忘れた…。それでも周りの兵士たちが体を起こして、怪我のあとを不思議そうに見つめる。
 完治とは言ってないよ…。むしろ以前よりもピンピンしてるじゃん。

 バレないためにもコントロールを考えなきゃな。
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