16 / 25
第十六話 新入生の歓迎舞踏会
しおりを挟む翌日、昼休み。
オルガと私は食堂に来ていた。
今日のランチはトマトソースのスパゲッティとバジルとベビーリーフのシーザーサラダとコーンスープのセット。
「で、流れで一線を超えてしまったと言うわけね」
トマトが飛び散らないようにそっと食べていたのに、オルガがむせるような事をいきなり言い出した。
「ゲホッ。ばっ、馬鹿な事を言わないでよ オルガ!」
昨日セントラル劇場を飛び出してすぐ、殿下と出くわした後で馬車で送って貰った時に、ティアラ嬢の事やお互い好きだと告白し合った話をオルガにしたら、オルガが話を跳躍するものだから思わず大きな声が出た。
「えー、だって今の話の流れだと普通・・・・・・って相手が殿下じゃ、ないかぁ~」
ランチのピザをパクっと食べてチーズをタラーンと伸ばすオルガに「食べ方!」と注意をするも、オルガは全く気にせず「殿下、堅物だもんね~」と笑っっている。
堅物・・・・・・でもないわよね、ライト様は。
意外とグイグイ来ていたような気がするわ。
まあ、一線までとはいかずとも口づけくらいはしてもいい流れではあったわよね。
「なに?キスぐらいしたかったって?」
オルガの言葉に、私の顔が真っ赤になった。
なっ、何で分かるの?
もしかして私、気持ちが顔に出てた!?
真っ赤になった私を見てオルガが「か~わいい」と笑った。
「ライト様がそんなふしだらな事を結婚前にするわけないでしょっ」
「あれ?殿下呼びやめたの?お互い誤解も解けて一歩前進、万々歳じゃん」
「・・・・・・それが、万々歳でもないのよね」
私はオルガに、ティアラ嬢の運命の相手がライト様じゃなかった事を伝えた。
「ティアラ嬢の運命の相手がライト様じゃないなら、一体誰が運命の相手なのかしら」
「え~、別に気にならないけど。興味ないし~」
そう言ってオルガは私の手の上にポンと何かを置いた。
それはいつぞや私が壊したはずのあの眼鏡だった。
「ちょっと、これ、まさか!?」
「量産してるの」とにっこりオルガは笑っているけど、これって犯罪まがいの物よね?
まぁ 悪い事に使わなければいいだけ、かな。
私は「要らない」と、オルガに眼鏡を返した。
「ねえ、アリシア。来週末のあれ・・・・・・面倒くさいね」
そう言ってオルガが食堂の入り口を指さした。
そこには来週末に行われる新入生の歓迎舞踏会のお知らせのポスターが貼ってあった。
それはデカデカと金髪に青い瞳の美男子の描かれたポスターで、まさにその方が我がリガルド王国の王太子アーレント様なのだ。
今年から両陛下に代わってアーレント様が舞踏会のファーストダンスを踊るとデカデカと広告されていて、女子生徒達は王太子殿下のお相手は誰になるのかしらと皆して噂をしていた。
「うん。同感だわ」
アカデミー伝統の新入生の歓迎舞踏会。
それは表の面目で、その実は貴族同士のお見合いパーティ。
有力な貴族達は結婚や婚約を最高のビジネスチャンスとして考えている。
家格の低い者でも舞踏会で王侯貴族に見初められる事だってあり得るから、皆必死になって参加してくるとお父様が以前言っていた。
私も舞踏会とか綺羅びやかな場所はあんまり好きじゃないからオルガの気持ちがよくわかる。
「でも、ライト殿下の婚約者なら参加しないわけにはいかないわね。ご愁傷さま」
「え?オルガは?出席しないの?」
「パートナーいないから無理」
「え?でも今年のファーストダンスって王太子殿下がされるんでしょう?オルガが一緒に踊るんじゃないの?」
何と言っても王国の数多の美しい令嬢を袖に振ってきた女嫌いのアーレント様と唯一話しができるのがオルガなのだ。
「んぁ?アーレントと?・・・・・・ないわぁ」
歓迎舞踏会のファーストダンスは王族が踊るのが習わし。去年までは国王陛下と皇后陛下が踊られていたけど、今年はなんと王太子殿下が踊ると聞いたから、てっきりオルガの入学に合わせて王太子殿下が踊るんだと思っていたけど違うのかしら。
「あれー?やばっ。また逃げられた」
ん?この声は・・・・・・ランディ?
その声は食堂の入り口とは反対の窓の外から聞こえてきた。
私の視線の先には、グラウンドがあってランディが頬に流れる汗を手で拭いながら周りをキョロキョロしていた。
多分、ティアラ嬢を探しているんだろうと察しがつく。
「ランラン!」
ん?ラン・・・ラン?
オルガがランディの方を向いてそう言ったから多分ランランはランディの事なのだろうと思うけど、何その呼び方っ!?
「オルガ?」
私が声をかけてもオルガはピクリともせずにランディを見つめている。
え?どういう関係ですかあなた達?
しばらくするとランディはティアラ嬢を見つけたのか「あ!」と言ってどこかに向かって走り去って行った。
「ねえ、オルガ?もしかしてランディと知り合いなの?」
「しっ、知らないっ!ランドルフ・ジョハンなんて知らない」
・・・・・・知ってるのね。
オルガが真っ赤になった頬に両手を当てて首をブンブンと横に振る。
この反応、紛れもない恋する乙女ではないのかしら?
「ねえ、もしかしてオルガはランディの事が好きなの?」
「なっ!違うっ。あいつはっ、ランランはっ、同じ伯爵家同士で小さい頃からの知り合いなだけでっ、ただそれだけの関係だっ!」
・・・・・・好きなのね。
オルガの元々大きな赤い瞳が更に大きくなって目が泳いでいる。
あのオルガにもこんな一面があるなんて意外だわ。
そして相手がまさかのランディとはね。
そっか。それじゃアーレント様とのダンスに興味がない態度を取るのも納得がいくわ。
「パートナーがいないんなら、舞踏会にランディを誘ってみたら?」
「ばっ、馬鹿言わないで。なんで私が伯爵家の三男坊なんかに声を掛けなきゃいけないのよ。ラ、ランランがどうしてもって言うなら行ってあげてもいいけど」
「それじゃあ、私がランディに聞いてみようかしら。舞踏会のお相手はいるのかって」
「聞いてくれ、是非」
聞いてほしいかったのね。
オルガが私の両手を握り祈るような切実な目で見つめてきた。
そうね。親愛なる従姉妹のためにも一肌脱いでみようかしら。
ティアラ嬢の運命のお相手も、もしかしたら歓迎舞踏会に出席するかもしれないものね。
「うん。分かったわ」
オルガの意外な一面が知れた貴重な昼休みだった。
73
あなたにおすすめの小説
素直になるのが遅すぎた
gacchi(がっち)
恋愛
王女はいらだっていた。幼馴染の公爵令息シャルルに。婚約者の子爵令嬢ローズマリーを侮辱し続けておきながら、実は大好きだとぬかす大馬鹿に。いい加減にしないと後悔するわよ、そう何度言っただろう。その忠告を聞かなかったことで、シャルルは後悔し続けることになる。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
妹の嘘を信じて婚約破棄するのなら、私は家から出ていきます
天宮有
恋愛
平民のシャイナは妹ザロアのために働き、ザロアは家族から溺愛されていた。
ザロアの学費をシャイナが稼ぎ、その時に伯爵令息のランドから告白される。
それから数ヶ月が経ち、ザロアの嘘を信じたランドからシャイナは婚約破棄を言い渡されてしまう。
ランドはザロアと結婚するようで、そのショックによりシャイナは前世の記憶を思い出す。
今まで家族に利用されていたシャイナは、家から出ていくことを決意した。
他の人を好きになったあなたを、私は愛することができません
天宮有
恋愛
公爵令嬢の私シーラの婚約者レヴォク第二王子が、伯爵令嬢ソフィーを好きになった。
第三王子ゼロアから聞いていたけど、私はレヴォクを信じてしまった。
その結果レヴォクに協力した国王に冤罪をかけられて、私は婚約破棄と国外追放を言い渡されてしまう。
追放された私は他国に行き、数日後ゼロアと再会する。
ゼロアは私を追放した国王を嫌い、国を捨てたようだ。
私はゼロアと新しい生活を送って――元婚約者レヴォクは、後悔することとなる。
婚約者が私にだけ冷たい理由を、実は私は知っている
潮海璃月
恋愛
一見クールな公爵令息ユリアンは、婚約者のシャルロッテにも大変クールで素っ気ない。しかし最初からそうだったわけではなく、貴族学院に入学してある親しい友人ができて以来、シャルロッテへの態度が豹変した。
断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
嫌いなところが多すぎるなら婚約を破棄しましょう
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私ミリスは、婚約者ジノザに蔑まれていた。
侯爵令息のジノザは学園で「嫌いなところが多すぎる」と私を見下してくる。
そして「婚約を破棄したい」と言ったから、私は賛同することにした。
どうやらジノザは公爵令嬢と婚約して、貶めた私を愛人にするつもりでいたらしい。
そのために学園での評判を下げてきたようだけど、私はマルク王子と婚約が決まる。
楽しい日々を過ごしていると、ジノザは「婚約破棄を後悔している」と言い出した。
愛せないと言われたから、私も愛することをやめました
天宮有
恋愛
「他の人を好きになったから、君のことは愛せない」
そんなことを言われて、私サフィラは婚約者のヴァン王子に愛人を紹介される。
その後はヴァンは、私が様々な悪事を働いているとパーティ会場で言い出す。
捏造した罪によって、ヴァンは私との婚約を破棄しようと目論んでいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる