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第1章(序章)絶望の果て
第9話 統括ボス
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お昼休みの短い時間であったが、俺は、カザフの刑の執行に立ち会うため、魔法の門の前にいた。
「イースは、この札を持つのよ」
幻覚を見せられて門の中に引き込まれないよう、サーナは俺に魔除けの札を持たせた。ちなみに、ここにいる俺以外の修習生は、陽気の力で幻覚を見ないそうだ。
そして、直ぐに刑は執行された。
トラフが、カザフを門の中に放り投げると、ほんの一瞬だが、細い一本道が見えた。俺は、閉じ込められた時の記憶が蘇り背筋が寒くなった。
「これで、カザフの人生は終わる。 最も、仲間の3人に強く殴られて意識がなかったから、そのまま死なれたら恐怖を感じずに済む。 刑が甘かったかもな。 また、残りの3人だが、ムートからの追放だけで息の根を止めなかった。 不服かも知れないが許せ」
サーナは、俺に少し申し訳なさそうな顔をした。
「いえ、恨みを晴らしてくれて感謝しています。 本当に、ありがとう」
サーナにお礼を言ったが、本音を言うと、刑が重すぎて恐ろしかった。
良く見ると、前に立っているトラフも震えていた。
◇◇◇
午後の修練を終え、夕方になった。
俺とトラフは、サーナとその取り巻き女子に連れられて、統括ボスであるナーゼのところに向かった。
統括ボスと言うだけあって、Cクラスの就寝場の中に専用の個室スペースがあり、彼女はその中にいた。
ベアスの話では、年齢は俺達より3つ上の13歳という事だったが、身長は俺より少し高いくらいで、可愛い顔をした美少女だった。
部屋に入るなり、ナーゼが俺の顔をマジマジと見たが、優しそうなので気にならなかった。
「サーナ、Eクラスで何かあったのか?」
ナーゼは、厳しい命令口調だった。
見た目の優しさとのギャップに驚き、今度は、恐怖を覚えた。
「はい、事件がありました。 昨日から新しい女子の修習生が来たのですが、男子4名に乱暴されました」
「具体的に何をされた?」
「裸にされ、嫌らしい目で見られました。 彼女は隙を見て逃げ、私らが、それを保護しました」
「量刑は、どうした?」
「主導したカザフを、魔法の門行きとし、残りのボルトとセルトとダキザの3名には、ムートからの追放を言い渡しました。 刑は、既に執行してあります」
「よろしい。 それで、その娘が被害に遭ったのか?」
「はい、名前をイースと言います」
「男みたいな名前だな。 それで間違えたと …」
ナーゼは、愉快そうに笑った。
「Eクラスは、サーナに任せてある。 好きにやれ。 ところで、トラフは何でおる?」
「サーナにカザフ達の共犯と疑われちまって、関係ないんです。 勘弁してください」
トラフは、必死の形相で弁解した。どう見ても嘘を吐いているように見えない。
「黙れ! ナーゼ様に直接話すな!」
「ヒッ」
サーナが、口を挟むとトラフは飛び上がった。
「カザフ達の捜索に行かせた時、見つけられなかった場合、共犯とみなすと申し伝えたはずだ! だから、おまえも共犯だ。 但し、Eクラス男子のボスという事を鑑みて、ナーゼ様のご判断を仰ぐのだ」
サーナは、低い声で威嚇した。
「サーナに任せる。 量刑はどうする?」
「ムートからの追放が宜しいかと」
サーナは、即答した。
「トラフ、分かったな。 今すぐムートから去れ。 この後、見かけたら殺す!」
ナーゼは、笑顔で恐ろしい事を言う。
「はい」
トラフは返事すると、逃げるように部屋を出た。
彼がいなくなると、ナーゼは少し怪訝な顔をした。
「なあ、サーナ。 トラフの量刑だが、少し厳しかったのでは? 奴は、もうじき15歳だぞ。 そうなれば、年齢制限でムートから脱落するんだから、それまで居させても良かったのでは …」
「あいつの暴力で、何人もの男子が消えています。 これ以上、害虫を野放しにできません」
「そうか。 でも、トラフがいなくなって、男子は誰が統率する?」
「ナーゼ様がトラフを半殺しにしてから表立った動きはありませんが、実は、男子の中には、いまだに女子に反感を持つ者がいるのです。 だから、女子による直接統率は、その反感を増幅させます。 そこで、男子のボスは、ベアスにさせようかと …。 彼は、男でありながら、いつも女子に紛れ込んでトラフ達の暴力から逃れていました。 常に逃げの姿勢の彼は、我々に取って操りやすい相手なのです」
俺は、ベアスの名前を聞いて驚くとともに、女子に利用されそうな彼を、哀れに思った。
「分かった、任せる」
ナーゼは話した後、厳しい表情をした。
「サーナよ、おまえに伝える事があるのだが、心して聞け。 実は、私は、近々Bクラスに上がる」
「おめでとうございます」
女子全員が、一斉に頭を下げた。
「良い事ばかりじゃないぞ。 Bクラスのボスと雌雄を決する事になるのだが、万が一負けると、C、D、Eクラスの統括ボスのタイトルも、勝者に移る事になる。 対戦相手は男子だから、女子の天下が覆るかも知れない。 そうなっても良いように、足元を固めておけ!」
「そんな …」
サーナは、心底、不安そうな顔をした。
もし、ナーゼが負けて統括ボスの座を追われれば、この先、虎の威を借る狐のような訳にいかず、大勢の男子との対決は必至である。
真に強くなければ、生きられない。弱肉強食と言った、ベアスの言葉が思い出された。
「話は終わりだ。 但し、聞く事があるから、イースだけ残れ」
ナーゼの言葉に従い、俺以外の女子は部屋から出て行った。
すると、ナーゼは、部屋に入った時と同じように、俺をマジマジと見た。
「どうした、イース。 震えているのか? そなた、縮んでおるぞ!」
ナーゼは、俺の股間を見て、高らかに笑った。
俺は、男である事を見破られたかと思い、ますます縮み上がった。
「イースは、この札を持つのよ」
幻覚を見せられて門の中に引き込まれないよう、サーナは俺に魔除けの札を持たせた。ちなみに、ここにいる俺以外の修習生は、陽気の力で幻覚を見ないそうだ。
そして、直ぐに刑は執行された。
トラフが、カザフを門の中に放り投げると、ほんの一瞬だが、細い一本道が見えた。俺は、閉じ込められた時の記憶が蘇り背筋が寒くなった。
「これで、カザフの人生は終わる。 最も、仲間の3人に強く殴られて意識がなかったから、そのまま死なれたら恐怖を感じずに済む。 刑が甘かったかもな。 また、残りの3人だが、ムートからの追放だけで息の根を止めなかった。 不服かも知れないが許せ」
サーナは、俺に少し申し訳なさそうな顔をした。
「いえ、恨みを晴らしてくれて感謝しています。 本当に、ありがとう」
サーナにお礼を言ったが、本音を言うと、刑が重すぎて恐ろしかった。
良く見ると、前に立っているトラフも震えていた。
◇◇◇
午後の修練を終え、夕方になった。
俺とトラフは、サーナとその取り巻き女子に連れられて、統括ボスであるナーゼのところに向かった。
統括ボスと言うだけあって、Cクラスの就寝場の中に専用の個室スペースがあり、彼女はその中にいた。
ベアスの話では、年齢は俺達より3つ上の13歳という事だったが、身長は俺より少し高いくらいで、可愛い顔をした美少女だった。
部屋に入るなり、ナーゼが俺の顔をマジマジと見たが、優しそうなので気にならなかった。
「サーナ、Eクラスで何かあったのか?」
ナーゼは、厳しい命令口調だった。
見た目の優しさとのギャップに驚き、今度は、恐怖を覚えた。
「はい、事件がありました。 昨日から新しい女子の修習生が来たのですが、男子4名に乱暴されました」
「具体的に何をされた?」
「裸にされ、嫌らしい目で見られました。 彼女は隙を見て逃げ、私らが、それを保護しました」
「量刑は、どうした?」
「主導したカザフを、魔法の門行きとし、残りのボルトとセルトとダキザの3名には、ムートからの追放を言い渡しました。 刑は、既に執行してあります」
「よろしい。 それで、その娘が被害に遭ったのか?」
「はい、名前をイースと言います」
「男みたいな名前だな。 それで間違えたと …」
ナーゼは、愉快そうに笑った。
「Eクラスは、サーナに任せてある。 好きにやれ。 ところで、トラフは何でおる?」
「サーナにカザフ達の共犯と疑われちまって、関係ないんです。 勘弁してください」
トラフは、必死の形相で弁解した。どう見ても嘘を吐いているように見えない。
「黙れ! ナーゼ様に直接話すな!」
「ヒッ」
サーナが、口を挟むとトラフは飛び上がった。
「カザフ達の捜索に行かせた時、見つけられなかった場合、共犯とみなすと申し伝えたはずだ! だから、おまえも共犯だ。 但し、Eクラス男子のボスという事を鑑みて、ナーゼ様のご判断を仰ぐのだ」
サーナは、低い声で威嚇した。
「サーナに任せる。 量刑はどうする?」
「ムートからの追放が宜しいかと」
サーナは、即答した。
「トラフ、分かったな。 今すぐムートから去れ。 この後、見かけたら殺す!」
ナーゼは、笑顔で恐ろしい事を言う。
「はい」
トラフは返事すると、逃げるように部屋を出た。
彼がいなくなると、ナーゼは少し怪訝な顔をした。
「なあ、サーナ。 トラフの量刑だが、少し厳しかったのでは? 奴は、もうじき15歳だぞ。 そうなれば、年齢制限でムートから脱落するんだから、それまで居させても良かったのでは …」
「あいつの暴力で、何人もの男子が消えています。 これ以上、害虫を野放しにできません」
「そうか。 でも、トラフがいなくなって、男子は誰が統率する?」
「ナーゼ様がトラフを半殺しにしてから表立った動きはありませんが、実は、男子の中には、いまだに女子に反感を持つ者がいるのです。 だから、女子による直接統率は、その反感を増幅させます。 そこで、男子のボスは、ベアスにさせようかと …。 彼は、男でありながら、いつも女子に紛れ込んでトラフ達の暴力から逃れていました。 常に逃げの姿勢の彼は、我々に取って操りやすい相手なのです」
俺は、ベアスの名前を聞いて驚くとともに、女子に利用されそうな彼を、哀れに思った。
「分かった、任せる」
ナーゼは話した後、厳しい表情をした。
「サーナよ、おまえに伝える事があるのだが、心して聞け。 実は、私は、近々Bクラスに上がる」
「おめでとうございます」
女子全員が、一斉に頭を下げた。
「良い事ばかりじゃないぞ。 Bクラスのボスと雌雄を決する事になるのだが、万が一負けると、C、D、Eクラスの統括ボスのタイトルも、勝者に移る事になる。 対戦相手は男子だから、女子の天下が覆るかも知れない。 そうなっても良いように、足元を固めておけ!」
「そんな …」
サーナは、心底、不安そうな顔をした。
もし、ナーゼが負けて統括ボスの座を追われれば、この先、虎の威を借る狐のような訳にいかず、大勢の男子との対決は必至である。
真に強くなければ、生きられない。弱肉強食と言った、ベアスの言葉が思い出された。
「話は終わりだ。 但し、聞く事があるから、イースだけ残れ」
ナーゼの言葉に従い、俺以外の女子は部屋から出て行った。
すると、ナーゼは、部屋に入った時と同じように、俺をマジマジと見た。
「どうした、イース。 震えているのか? そなた、縮んでおるぞ!」
ナーゼは、俺の股間を見て、高らかに笑った。
俺は、男である事を見破られたかと思い、ますます縮み上がった。
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