【神とも魔神とも呼ばれた男】

初心TARO

文字の大きさ
12 / 124
第1章(序章)絶望の果て

第11話 統括ボスの加護

しおりを挟む
 俺は、ナーゼと一緒に食事をした。

 亡くなった妹の面影を俺に求めていたせいか、彼女はとても優しかった。

 ナーゼから、ムートの裏事情や魔法使い修練場の事とか、いろいろと教えてもらった。

 ムートでは、18歳になった時点で、Bクラス以上の者は、高等クラスに進み、20歳で卒業し小隊長となる。

 但し、SクラスとAクラスの上位3名は、高等クラスを飛び越え17歳で卒業となる。
 また、Sクラスの者は、卒業後、伯爵の爵位が与えられ 、1年の中隊長経験を経て将軍となる。
 Aクラスの上位3名は、卒業後、子爵の爵位が与えられ 、1年の中隊長経験を経て大隊長となる。
 つまり、Sクラスの者と、Aクラスの上位3名には、明るい未来が約束されているのだ。
 
 しかしその反面、ナーゼの話しでは、ムートという組織は貴族の権力闘争に利用され腐り切っているという。例えば、腕の立つ修習生が敵対勢力の殲滅に駆り出されたりする。中には、返り討ちにあって命を落とす者もいた。
 突然、修習生が居なくなっても探さないと言った、教官の言葉を思い出す。

 また、Sクラスの3名についても聞いた。
 3名とも国都出身で、シモンは貴族の子息、ガーラは商家の娘、ビクトリアは魔法医の娘だそうだ。

 シモンは16歳で、最年長の男子だ。 野心家の彼は、Aクラスの中から腕の立つ者を集め、私設の警備組織を運営している。恐らくは、実家のダデン家が深く関わっているようだ。

 ガーラはナーゼと同じ13歳の女子で、目的のためなら手段を選ばない冷徹な女性だ。シモンとは協力関係にある。攻撃魔法においては、この国の中で彼女に敵う者はいない。

 ビクトリアは、まだ11歳の女子であるが、どんな魔法も高いレベルにある。とても優しい性格で、皆から好かれている。野心がなく、他の2人とは違う性格のようだ。
 俺は、ビクトリアの話を聞いた時、魔法の門に入り彼女に助けられた事を話したが、ナーゼはそれを聞いて、かなり驚いていた。


 最後に、ナーゼは言った。

「この先、イースが強くなった時、ムートの腐った部分が見えてくる。 抵抗するすべはないが、覚悟しておいた方が良い。 特にシモンには気をつけて! 奴は偽善者で外道だから …」

 ナーゼは、シモンの話しをする時に、よほど嫌な思いをしたのか、体を震わせていた。


「この事は、誰にも口外しないで!」

 ナーゼは、最後に付け加えた。

 
 その後、俺はEクラスの就寝場に戻った。部屋に入ると、皆の態度が明らかに違う。恐らくは、ナーゼからの伝令があったのだろう。
 
 あと、俺が男だと言う事も伝わっていたようで、多くの男子がご機嫌取りに来た。
 統括ボスの力は絶大だった。


「イース、あんた男だったのか?」

 サーナが、不機嫌そうな顔で近づいて来た。
 

「ゴメン。 カザフ達が怖くて、女子だと嘘を吐いてしまった。 騙して悪かったよ」


「ところで、ナーゼ様は男を毛嫌いしているのに、おまえは、どうやって取り入ったんだ?」

 サーナは、嫌味タップリの顔を俺に向けた。相当、怒っているようだ。


「取り入ってなどいない。 でも、初めての男子の手下として頑張るよ。 サーナにも協力するからさ」

 俺が、ナーゼの妹に似ている事は秘密にした。


「生意気な! 力も無い癖に思い上がるな!」

 サーナの体が怒りに震えているのが分かる。闘えば瞬殺されるだろう。俺は、背筋が凍った。


「分かってるよ。 生意気な事を言って悪かった」


「ベアスが男子の新しいボスだから、彼とせいぜい仲良くやれば良いさ。 女子との不可侵条約は、今まで通りだ! 手を出したら容赦しないからな!」

 サーナは、捨て台詞を吐き、部屋を出て行ってしまった。


 彼女が出て行くと、入れ違いにベアスが来た。


「やあ、イース。 統括ボスの手下になれるなんて、上手くやったな。 彼女が背後にいれば、イジメられる事はない。 彼女の加護がある内に強くならないと、居なくなった時に地獄を見るぞ。 だから、俺と切磋琢磨して強くなろうぜ」


「ああ、頼む」

 ベアスは、少し臆病だが良い奴だ。俺は、友達に恵まれたと思った。


◇◇◇


 ナーゼの手下になってから、早いもので3年が過ぎた。
 
 ナーゼの加護や指導もあり、俺はBクラスに上がっていた。しかも、このクラスのボスだ。
 13歳でBクラスに上がれるのは、かなり優秀な方だ。
 15歳までにBクラスに上がれないと、ムートから出され雑兵にされるが、その心配はなくなった。一安心である。
 ちなみに、ベアスとサーナは、Cクラスにいる。

 ナーゼは早々とAクラスに進み、A~Eを統括するボスになっていた。
 その存在は、教官も一目おくほどである。
 俺は、彼女の第一の手下となり、自らの実力と相まって、その立ち位置は強固なものとなっていた。

 騎士修練場において、誰も俺に逆らえる者はいない。正に、虎の威を借る狐だった。
 

 そんな、ある日の事である。
 いつものようにナーゼの部屋に行くと、一人の少女が同席していた。
 その少女はとても美しく、ナーゼでさえ霞むほどだった。

 俺は、彼女に見覚えがある。
 3年振りに会うその人は、忘れもしない、俺の命の恩人だった。

 そして、その少女は、俺を見るなり優しく微笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

処理中です...