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第3章 孤独の先に
第73話 戦闘の後始末
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ベルナ王国の国都では、魔法による大規模な爆撃により、多くの犠牲者が出ていた。
国民は、サイヤ国軍の襲来と勘違いし、国都を離れる者までいた。サイヤ王国と軍事衝突している事は知っていたが、遠く離れた最前線での出来事と、高を括っていたのだ。
戦争を近くに感じ、多くの国民は恐怖していた。
シモンは、イースの妹のヤーナを連れて爆心地に駆けつけたが、そこで、兄と慕うヤマトと、ビクトリアが倒れた事に、かなりショックを受けていた。
ヤマトは、マサンから受けた急所への打撃により、瀕死の重傷を負っていた。また、ビクトリアも気を失って倒れたため、2人揃って魔法医院に緊急搬送された。
幸い、ビクトリアは、医院に到着して直ぐに目を覚ました。
シモンは、現場を軽く検証した後、2人が搬送された医院に、兵士数名を伴って駆けつけた。
そして、医院を出ようとするビクトリアを見つけ、慌てて行手を遮った。
「ビクトリア、どこへ行くんだ? 身体はだいじょうぶなのか?」
「ええ、単なる魔力切れよ。 みっともない姿を見せて、恥ずかしいわ」
ビクトリアは、伏せ目がちに答えた。
「いや、あんな化け物を相手にして、仕方無かったさ。 君が居なかったら、この国はマサンにメチャクチャにされていた」
「そんな …。 私は、まるで歯が立たなかった」
シモンに言われ、彼女は力無く首を振った。
「ところで、昨夜、最前線に戻ったと聞いていたが …。 なぜ、マサンと戦っていたんだ?」
シモンは、少し訝しげに質問した。
「昨夜のうちに戻ろうと思ったんだけど …。 しばらく帰れないと思うと、国都が恋しくて …。 そっと実家に寄って朝まで過ごしたの。 それで、翌日に最前線に向かっている最中に、爆撃を目撃して、急いで駆けつけた …」
彼女は、弱々しく答えた。
「そうか …」
シモンは、彼女の様子を観察した後に、また続けた。
「実は、父上と母上が行方不明になっていて、探している最中にマサンの攻撃があったんだ。 僕は、イーシャという娘が怪しいと睨んでる。 恐らくは、プレセアという組織が絡んでると思う。 組織リーダーのフィアスという男の惨たらしい遺体が現場にあったが、ビクトリアが倒したのか?」
「すでに死んでいたわ。 私じゃない …」
「うーむ、確かに … 。 遺体は、二つに切断されていたからな …。 ヤマト兄貴が斬ったのか?」
「分からない。 それよりも、あなたのご両親が心配だわ!」
ビクトリアは、声を高くして感情を込めた。
「手分けして探してる …」
シモンは、暗く声を落とした。
どうやら、本心から心配しているようだ。
「こんな大変な時に悪いけど …。 私は、これから直ぐに最前線に戻るわ。 国都が攻撃されたと知って、サイヤ王国の軍が攻めて来るかも知れない。 国の存亡の危機を感じる。 マサンがあの強さだと、兄弟子のワムは、それ以上と考えるべきよ。 それに …。 飛ばしたマサンが戻って、ワムと手を組んだら、とても勝てない」
ビクトリアは、声を大きくして、周りにいる兵士に聞こえるように言った。
「マサンは、空間魔法で飛ばしただけなのか?」
「ありったけの魔力を使って、戻れないように願ったわ。 でも、マサンなら1ヶ月程度で戻って来ると思う」
「イースは、マサンの弟子のようだから、彼の妹が、切り札になる。 どう使えば効果的か考えて見よう」
「それは、やめて。 可哀想よ」
「彼女は、ムートの騎士修習生だ。 もうじき卒業して軍に入る。 この国を守る義務がある!」
「まだ、ムートの修習生よ。 軍に入るまで待ってあげて」
「イースは反逆者だ。 そんな奴の事を思っているのか?」
シモンは、やけに食い下がる、ビクトリアを不審に思い、声を荒げた。
「そうじゃ無い。 人として哀れに思うの」
「何で、僕の言う事に逆らうのか?」
「いえ…。 分かった …。 何も無い。 そろそろ行くわ」
「まあ、良い」
シモンは、まだ話し足りない様子だったが、周りにいる兵士の手前、ビクトリアを見送るしかなかった。
そして、彼女は、逃げるように、この場を去った。
翌日になり、ヤマトが目覚めた。
シモンが駆けつけると、ベッドの傍らに、部下のシャインが心配そうに佇んでいた。
「ああ、これはシモン宰相!」
シャインに声をかけられ、シモンは軽く手で制すると、ヤマトの側に行き、その顔を見据えた。
顔が、どす黒く腫れており、腹に魔力を込めた包帯が巻かれていた。
「ヤマト兄貴、話せるか?」
「ああ …」
ヤマトは、かすれた声で、苦しげに返事をした。
「フィアスを斬ったのは、ヤマト兄貴なのか?」
「違う …」
一言返した後、ヤマトは、また気を失ってしまった。
「じゃあ、誰が …」
シモンは一言呟き、魔法医院を後にした。
その後の事である …。
今回の大規模爆撃に関しては、なぜかマサンの名前は一切出なかった。
プレセアという秘密組織の攻撃により、国都が被災した事で決着させたのだ。
マサンは、タント王国が誇る魔道士であり、あまりにも有名だから、彼女に同調する者の出現や、タント王国までも敵にまわすのではないかと恐れたのである。
また、前宰相のカマンベールも窮地に立たされた。シモンが提示した証拠により、プレセアとの関係を疑われたのである。
宰相のシモンは、この災難を、自分の権力闘争に利用した。
何事にも、タダでは起きない男だった。
国民は、サイヤ国軍の襲来と勘違いし、国都を離れる者までいた。サイヤ王国と軍事衝突している事は知っていたが、遠く離れた最前線での出来事と、高を括っていたのだ。
戦争を近くに感じ、多くの国民は恐怖していた。
シモンは、イースの妹のヤーナを連れて爆心地に駆けつけたが、そこで、兄と慕うヤマトと、ビクトリアが倒れた事に、かなりショックを受けていた。
ヤマトは、マサンから受けた急所への打撃により、瀕死の重傷を負っていた。また、ビクトリアも気を失って倒れたため、2人揃って魔法医院に緊急搬送された。
幸い、ビクトリアは、医院に到着して直ぐに目を覚ました。
シモンは、現場を軽く検証した後、2人が搬送された医院に、兵士数名を伴って駆けつけた。
そして、医院を出ようとするビクトリアを見つけ、慌てて行手を遮った。
「ビクトリア、どこへ行くんだ? 身体はだいじょうぶなのか?」
「ええ、単なる魔力切れよ。 みっともない姿を見せて、恥ずかしいわ」
ビクトリアは、伏せ目がちに答えた。
「いや、あんな化け物を相手にして、仕方無かったさ。 君が居なかったら、この国はマサンにメチャクチャにされていた」
「そんな …。 私は、まるで歯が立たなかった」
シモンに言われ、彼女は力無く首を振った。
「ところで、昨夜、最前線に戻ったと聞いていたが …。 なぜ、マサンと戦っていたんだ?」
シモンは、少し訝しげに質問した。
「昨夜のうちに戻ろうと思ったんだけど …。 しばらく帰れないと思うと、国都が恋しくて …。 そっと実家に寄って朝まで過ごしたの。 それで、翌日に最前線に向かっている最中に、爆撃を目撃して、急いで駆けつけた …」
彼女は、弱々しく答えた。
「そうか …」
シモンは、彼女の様子を観察した後に、また続けた。
「実は、父上と母上が行方不明になっていて、探している最中にマサンの攻撃があったんだ。 僕は、イーシャという娘が怪しいと睨んでる。 恐らくは、プレセアという組織が絡んでると思う。 組織リーダーのフィアスという男の惨たらしい遺体が現場にあったが、ビクトリアが倒したのか?」
「すでに死んでいたわ。 私じゃない …」
「うーむ、確かに … 。 遺体は、二つに切断されていたからな …。 ヤマト兄貴が斬ったのか?」
「分からない。 それよりも、あなたのご両親が心配だわ!」
ビクトリアは、声を高くして感情を込めた。
「手分けして探してる …」
シモンは、暗く声を落とした。
どうやら、本心から心配しているようだ。
「こんな大変な時に悪いけど …。 私は、これから直ぐに最前線に戻るわ。 国都が攻撃されたと知って、サイヤ王国の軍が攻めて来るかも知れない。 国の存亡の危機を感じる。 マサンがあの強さだと、兄弟子のワムは、それ以上と考えるべきよ。 それに …。 飛ばしたマサンが戻って、ワムと手を組んだら、とても勝てない」
ビクトリアは、声を大きくして、周りにいる兵士に聞こえるように言った。
「マサンは、空間魔法で飛ばしただけなのか?」
「ありったけの魔力を使って、戻れないように願ったわ。 でも、マサンなら1ヶ月程度で戻って来ると思う」
「イースは、マサンの弟子のようだから、彼の妹が、切り札になる。 どう使えば効果的か考えて見よう」
「それは、やめて。 可哀想よ」
「彼女は、ムートの騎士修習生だ。 もうじき卒業して軍に入る。 この国を守る義務がある!」
「まだ、ムートの修習生よ。 軍に入るまで待ってあげて」
「イースは反逆者だ。 そんな奴の事を思っているのか?」
シモンは、やけに食い下がる、ビクトリアを不審に思い、声を荒げた。
「そうじゃ無い。 人として哀れに思うの」
「何で、僕の言う事に逆らうのか?」
「いえ…。 分かった …。 何も無い。 そろそろ行くわ」
「まあ、良い」
シモンは、まだ話し足りない様子だったが、周りにいる兵士の手前、ビクトリアを見送るしかなかった。
そして、彼女は、逃げるように、この場を去った。
翌日になり、ヤマトが目覚めた。
シモンが駆けつけると、ベッドの傍らに、部下のシャインが心配そうに佇んでいた。
「ああ、これはシモン宰相!」
シャインに声をかけられ、シモンは軽く手で制すると、ヤマトの側に行き、その顔を見据えた。
顔が、どす黒く腫れており、腹に魔力を込めた包帯が巻かれていた。
「ヤマト兄貴、話せるか?」
「ああ …」
ヤマトは、かすれた声で、苦しげに返事をした。
「フィアスを斬ったのは、ヤマト兄貴なのか?」
「違う …」
一言返した後、ヤマトは、また気を失ってしまった。
「じゃあ、誰が …」
シモンは一言呟き、魔法医院を後にした。
その後の事である …。
今回の大規模爆撃に関しては、なぜかマサンの名前は一切出なかった。
プレセアという秘密組織の攻撃により、国都が被災した事で決着させたのだ。
マサンは、タント王国が誇る魔道士であり、あまりにも有名だから、彼女に同調する者の出現や、タント王国までも敵にまわすのではないかと恐れたのである。
また、前宰相のカマンベールも窮地に立たされた。シモンが提示した証拠により、プレセアとの関係を疑われたのである。
宰相のシモンは、この災難を、自分の権力闘争に利用した。
何事にも、タダでは起きない男だった。
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