Guardian of Time ~ 時の守り人

RIKO

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第9話 江戸の火消し~時空を超えた修学旅行

7. 半鐘が鳴り響く時

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「おおお、伊勢屋の団子はやっぱり美味い!」
「でしょっ」

 満面の笑みで、団子を頬張る笹原。そうそう、その調子。この表情が本来のこいつの姿なのよ。

 お稲荷様の祠の横に腰かけた、笹原、美夏、千早の三人。中央に陣取るのは、もちろん、美夏だ。
 ほっとした気分で、隣に座る男子の横顔を眺める。それに満足すると、反対側の隣で、白鳥しらとりが団子をついばんでいるみたいな……お上品な少女が気になってきた。

 今は、お得意様のお侍さんの奥さんの着物を借りて、町娘の恰好をしてるけど、このは時期、花魁候補。お化粧なんてしてなくても、肌は信じられないくらい色白で、色気もあるし、お江戸の雰囲気に満ちていて、すごく綺麗。笹原だって、成るように任せてるし、 村田がここにいたら、きっと狂喜乱舞することだろう。

 とても、ムカつく。

 ……でも、年は15歳。私たちと同い歳。
 そんな年で吉原で働かされて……それって、酷い。

 ああっ、でも、笹原は駄目っ。
 半ば、衝動的に手にした皿から、団子串を千早に差し出した美夏。

「あっ、あのね。これ、あげるっ。食べてっ」
「これは、お夏様のお団子ではござりんせんか」 
「いいの、いいの。私のはまだ、こっちの皿あるから」

 微笑む千早、頬を赤らめた美夏。そして、飄々と美夏の皿の団子に手を伸ばす隆太。

 お稲荷様の祠の上の土手にある”見返り柳”が、そんな3人の姿を見下ろしている。
 その時だった。

「火事だ、火事だっ! 大通りのが燃えてるぞ!」

 火事を知らせる、けたたましい半鐘の音が響いてきた。町火消の詰所から、”り組”のまといと旗、梯子をかついだ人足にんそくたちが駆けてくる。

「隆太、出番!」

「承知!」

 まといを受取り、隆太が風のように町を駆けぬけてゆく。
 その後を美夏が追った。
 残された千早は、ただ、燃える空を眺めていた。

 行く道が、はかない夢ならば、
 この世の全部が、今、燃えてしまえ
 何の未練も、ここには残すな

 そんな少女の呟きを、傍らの祠のお稲荷様が耳を澄ませて聞いていた。土手の上の”見返り柳”が、風に乗せて、空の彼方に吹き飛ばした。

 
 長屋が延々と続く江戸の町は、一旦、火が大きくなると、もう手がつけれない。水をかけるより、火が回る前に、風下の家を壊してしまった方が鎮火が早い。
 火の見やぐらから、半鐘を乱打する鐘の音が響いてくる。鳶口とびくち刺又さすまたを持った町火消が、風下の家々を力まかせに叩き壊してゆく。


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