ヘンテコ魔法使いの非日常

KEFY

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プロローグ:鱗肌の少年 編

これから始まる非日常の毎日

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 二人はボロ屋の居間に着いた。
 家具として置いてあるのは、チンケなイス4席と足が一本足りない机だけである。
 その中で誰かがイスに座って、何かをしていた。
「あ、アギハ……と新入りくんかな? こんにちは!」

「リランお前、ちょっと話があるんだが……」
 アギハはリランに詰め寄っていく。10cmほどの身長差があった。
「お前、あいつが全身変化系のガジェットを使うって知ってたんじゃねーか?」
「あっちゃーばれちゃいましたか。そうですよー。そっちの方が予想外で面白かったでしょう?」
「あーそうだな面白かった……あのさ、そういうお前の意地悪みたいなやつ、ホントやめてくれよ」
 
 アギハは「はぁ……」とため息をついてから、ゆっくりとイスに座った。そして机に頬杖をついて、ゲツの方を見た。
 ゲツはちょうど、リランに自己紹介をしていた。
「はじめまして、三国みくにゲツっていいます。今日からよろしくお願いします」
「こちらこそよそしくです! これから色んなことが起こると思うけど、一緒に頑張っていきましょう!」
「はい!」
 ゲツはリランと握手しようと、手を前に出した。

 しかしリランは、
「握手は双方名乗ってからですね、すみません」
 と言って、胸を張ってこう言った。
「私は三年生の端間はたまリランです! 趣味は音楽を聞くこと、あとハンバーグが大好きです!」
 リランはゲツの手を握って、これでokですね、と笑った。


「あ、あとはアギハも大好きですね」
 それを聞いたアギハがおもいっきりしかめっ面をしているのを、横目でチラリと確認した。
「それって、どういう……」
「えっとですね、具体的にはー……。あいででで!」
 アギハが立ち上がり、机越しにリランの耳をつねっていた。
「黙ってろ」
「こ……こんな感じですよ……あいででででで!! わかりました!! すみません!!」

「……もうやめろよ」
 アギハが耳をつねるのをやめた。「あーいたかったです」とリランは耳を手で押さえている。
「……といってもまぁ、そんな意味深な関係じゃないですよ、ゲツくん」
 リランは先程の攻撃で横を向いていた首を、ゲツの方向に向き直しながら言った。
「私はこの街にいる魔法使いの情報を提供しているんです。それで、アギハがその魔法使いのところへ行って、どんな力なのか調べてくる……ってのがアギハのすることでしたね」
「へー、そうなんですね。でもどうやってその情報を集めてるんですか?」
「それはですね、私この街に知り合いがたくさんいるんですよー……ほら!」

 リランはこちらにRINEの友達リストを見せてきた。300人と少しくらいいるようだ。
「この人達が、私に情報をくれるんですよ」
「すごいですね、こんな数……ん?」
 ゲツは友達リストをスクロールしていって、見覚えのある名前を見つけた。
「この人……この名前、そして顔……どっかで見たんだけどなー」
 リランがこちらに見せていた画面を、自分の方に向けて、画面を確認した。
「どれどれ~?……ああ、この人ですか?」
「はい!」
「この人は市長さんですよ、この街の」
「へ!?」
 ゲツは声を出して驚いた。
 アギハも静かに驚いた。
「……って、なんでアギハもおどろいてるの?」
 もしかして、情報提供者については知らされていないのだろうか。
「いや、知らなかったし……というかその顔自体知らんかったから、前見た時も全然気にした事なかった……」
 そんなことはなかった。彼女がしらなかっただけだった、とゲツは納得した。

「この人は市長選の時に知り合いましてね、そこで話をしたんです。うまく乗ってくれましたよ」
 そんなことまでしているのか。ゲツは自分にはとてもできないと感じた。そして同時に、彼の中にまた疑問がうかんだ。

「どうしてそんなことまでして、アギハを手助けするんですか?」
「ん? 手助けじゃないですよ、むしろ——」
 リランは少し困ったような顔をしたが、すぐに笑顔に変わった。

「……私の方です、助けられているのは」
 そう言って「ふふっ」と笑った。彼女はアギハの方を見やると、ジットリした目で、また腕を組みながらこちらを見ていた。なんだかまた耳をつねってきそうな感じだ。
 そして彼女は目線をこちら側に戻し、こう言った。
「まぁ、お互い様です」

「そうだ、アギハ」
「……ん」
 ゲツは返事をしたアギハの方を向いて言った。
「聞きたいことがあったんだった」
「なんだよ」
「俺を撃とうとしたあの時さ……なんかメガネみたいなの、かけてたくない?」
「メガネなんてかけてないが……いや、ああ、あれのことか?」
「突然出てきたもんだからビックリしたんだけど、あれってなに?」
 アギハは「あー」と少し考えて、言う事をまとめてから質問に答えようとした。
「あれは——」
「それは『ガジェット』と言うものです」

 リランが被せてきたので、アギハはとりあえず黙る事にした。……まぁイラっときたからであるが、この話に関しては彼女の方が詳しい、という理由もあった。
「魔法を使うとでてくる、いわば魔法を具現化したものです。これを使うと不思議な能力や効果を得ることができるんです」
「え? でも、俺はそんなもの出てこないけどな」
「そうだな、私たちもお前みたいなヤツは初めて見る」
 待ちかねていたアギハが答えた。
「いろんな魔法使いを見てきたが……お前みたいな体が変化するヤツは初めてだ」
「そうですね。私も見たとき驚きましたよ。コスプレかなんかかと思いましたし」
「はぁ、そうなんだ……」
 
「といっても、似たようなヤツはここにいるんだがな……」
 アギハが小声で呟いた。


 話が終わり、各々の好きなことをやり始めた。
 ゲツはこれから起こるであろうことを、楽しみながら想像していた。
(魔法使い……現実にもいたんだなー)
(これからどうなっていくのか……うーむ、すごく面白そうだなぁ)
(ゲームのイベントなんてやってられないよな……こんなことがあったら……)

 突如として非日常となった彼の毎日は、ここからさらにおかしく、そして奇怪なものになるとは、彼には想像できまい。
 そして、ここからこの話は始まる。そう、ヘンテコでおかしな魔法使い達が潜む街へと、彼らは繰り出していくのだ。




----------




「ふうううううぅぅ、すぅぅぅぅぅ」
 ある大通りに面する家に住む少年は、何かを一生懸命吸っていた。
「ぷはぁぁ、……あぁぁぁぁ……」
 少年はまるでエクスタシーまで達しているかのような、恍惚とした顔をしていた。彼の手にあるものは、一枚の布だ。

 少年は舌舐めずりをして、こうこぼした。
「あぁぁぁぁ、やっぱり最高だ……この感触、この匂い……そして感じる、この温もりが……」
 少年は布を揉みはじめた。そして「ふぅぅぅ」と息をついて、こう続けた。

ってのは……はぁぁぁぁ、最高なもんだなぁぁぁぁ……ふうぅぅぅう、はあぁあぁぁ……」

少年は、その快感をまた感じようとして、その布に顔を近付けた。






プロローグ 完
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