ヘンテコ魔法使いの非日常

KEFY

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変態のトリックスター 編

夏休み前のある日

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 夏休みが目前に迫る中、この冴えない少年はいまいちパッとしない顔をして学校に来ていた。



「おうゲツ、どうしたんだ?なんかぼーっとしてるぜ」
 その少年に、おそらく彼の友達であろう男子生徒が声を掛けた。
「あ……よう」

 この少年の名はゲツ、ただの高校生……だったのだが、つい最近『魔法』という人を超える力手に入れ、高校生となった。

「いやさぁ……あのガチャ渋すぎねぇか?俺石120個もつかったのにさぁー……SSRさえでてくれねーんだよ……」
 今彼が話しているのは、スマホで出来るある有名なゲームのことだ。この少年のクラスにも、大量のプレイヤーがいた。
「あーわかる、まー俺SSRでたけどww」
「は? てめぇゆるさん! 俺の努力の成果である石を返せ!」
「やーだ! 課金でもすることだなww」
「くっっそおおお……俺も欲しいよぉ~イベ限キャラ!」


「おい」
 斜め後ろに座っていた女子生徒が、やや怒りながら言った。こちらを目だけ動かして見ている。
 この女子生徒は、夏休み前の暑い時期だというのに、なぜか青いマフラーを首に巻いていた。
「うるせえよ。ってかお前ら昨日も似たような話していなかったか?」
「え? そうかな?……そんな気がするわwwすまんな」
「昨日は俺が当たったんだ! SSR! ……あ、うるさかったかな……すまんアギハ」

 アギハと呼ばれたこの少女は、ゲツと同じく特殊な力を持つ。
 2人が知り合ったのはつい3日前のことだが、まるでそうではないかのように、ゲツは呼び捨てで呼んでいる。

 アギハは廊下側を向けていた顔をこちら側に回しながら言った。
「っ……そういえばさぁ、お前……」
「? どうしたん?」
「なんで私のこと呼び捨てにすんだよ?」
 アギハは睨みつけながら言い放った。
「え!!」
 ゲツは驚愕した。そういえば何故か、そんな呼び方をしていた。自分らしくない。
「わからん!」
「は?」
「……いや、えっと、そっちの方が仲良くなれそうだなって……アギハが家に来た時から、ずっとそうでしょ? もう慣れたでしょ?」
「慣れてない!」

 アギハはこちらを睨みつけながら立ち上がった。椅子が倒れる。
 そして、その顔は若干恥ずかしがっているようにも見えた。
「えー……じゃあなんて呼べばいいの?」

 ゲツは取り乱しているアギハにこう質問した。アギハはさらに顔を赤くした。
「うっ……それは……あぁー……」
 彼女は口をマフラーで隠し、窓の方を向きながら答えた。ゲツはどうしたんだ?と心の中で思いながらもこう言った。
「じゃあ今のままでいいかなー、リランさんだって……」
「それはダメだ!」
 びっくりするぐらい速く振り向きながら答えた。

「ふぇ!? いや、リランさんもそうじゃん! 俺だってそう呼びたいよ!」
「それは……そうだが! お前はダメだ!」
 アギハはゲツを指で突き刺すぐらいの勢いで、ゲツに人差し指を向けた。
「えー、何でさー?」
「なっ……何ででもだ!お前が言うと……なんか、お、おかしな方向にいくんだよ!私の思考が!」

 ゲツはそれを聞いて「はっ!」と納得した。
「ああ、じゃあやめるよ。それは……なんかよくわからんが、悪いことしたなぁ」
「えっ……」
 しかしアギハはなぜかそれを聞いて少し落ち込んだ。向けていた人差し指を下ろす。


 アギハはその自分に困惑した。
(な……なんだこれは……どういうことだ……)
 アギハはマフラーをさらに上げ、口を完全に覆い隠した。そして、俯きがちにこう思った。
(私はなぜ……こんな気持ちになっている!?)



-----放課後-----



「へー、そんなことがあったんですね~」
 リランはゲツからその話を聞かされた時、目をキラキラさせながらそう言った。興味津々、という感じだ。
「私が呼び捨てしてもなんともない、って顔してますよねいつも。どうですアギハ?」
 リランはニヤニヤしながら、アギハの名前を呼び捨てにした。
「それは、お前がずっとそう呼んできたからだろうが! 慣れたんだよ! もう!」
 ここまで絶叫するような口調だったが、
「それに……こ、こいつは男、だし……あー、ほとんど初対面だったんだぞ!」
 ここから途中声を細めながら話してしまった。
 アギハは「しまった」と言わんばかりに、口を手でサッと隠した。

 するとリランは、自身のスマホのロックを解除しながら言った。
「まあ、そんなことは今はどうだっていいんですが……」
 アギハはこの言動を不思議に思った。いつもならば、私をからかってくるはずなのに!
 そして、その疑問はすぐに解決した。

「というのも、この街に面白い事件が起きたんですよ」

「面白い……事件?」
 窓際でぼーっとしていたゲツが食いついた。
「はい。10番通りのある学生さんからの情報なのですが——」
 リランはいつもの彼女とは違い、ややシリアスな印象を醸し出しながら言った。


「この街に、音速のパンツが現れたそうです」


 音速のパンツ強盗——?
 2人の頭には大きなクエスチョンマークが浮かび上がった。どういう状況なのか想像ができない。
 リランはちょっと間を空けて、こう続ける。

「私はこれを、魔法使いの仕業であると考えていますが——みなさんは、どう思いますか?」




-----同時刻 10番通り-----




「飽きて、きたな……こんなことも」
 学生服の少年はぽつりと言った。
 平坦で真っ直ぐなこの通りは、駅も遠く、店があるわけでもないので、あまり人が歩いていない。
 この時、彼の100mほど前には女子生徒が歩いていた。
「やはりこんなことじゃダメだな……モノにはやはり“設定”というものが重要になってくるんだな……」
 少年は反省しているように見えた。斜め前の地面に目線を落とし、何かを考えつつ歩いていた。

 すると、少年はおもむろに顔をあげた。
「……!」
 少年は目の前を歩く少女に気がついた。
「あの娘……いい体型だな……運動部か?」
 少年の目はすぐに、その少女のに向いた。
「今、“設定”のことを考えていたが……いや、それについては後にしよう。それよりも——」

 少年の足に、靴のようなものが出現した。そして体を前に倒し、腕を地面につけた。
「今は、パンツを奪う方が先だ!」

 少年は、その少女の尻に向かって、ロケットスタートを決めた。





続く
 
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