ヘンテコ魔法使いの非日常

KEFY

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変態のトリックスター 編

スピードスター&トリックスター その②

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 少年は彼女めがけて加速していく。

(このマフラーの女の子だけなのが惜しいところだ……なぜなら隣のスレンダーな子の設定も考えていたんだからな!)

(でも俺はこれで満足できるはずだ……僕の欲しいものを、欲求を、満たしてくれるはずだ!)

 音もなく近づく少年に、少女は気づいていない。
 一切こちらを振り向かないのだ。

(完璧だ……)

 少年の標的まで5mを切った。


「ふぅぅ……ぅぅ……へへ……」


 少女の下着が目前まで迫る。



(これで……僕の欲しいものは……)





 少年は、そのスカートの下に手を伸ばした。






(手に入る!)







 しかし、ここで少年は……


 違和感を感じて、上をちらりと見た。




 そこには光るものがあった。



 それは夕日に照らされて——








 ——こちらをにらむ、目だった。




----------




「なっ!?」
 少年は驚いた。
 しかし止まることはできない。

「……」
 少女は驚かなかった。
 なので止めることはしない。

 ——そのエアガンの銃口を、少年に向けることを!
 ためらいもしなかった!





 『『『パァン』』』





 弾は、少年の額に命中した。

「ぐぁああああ、あああぁああっあ!」

 少年はそのままバランスを崩し、倒れた状態で滑りながら、マフラーの少女——アギハの後方10数メートル先で止まった。

「やっぱり粘って正解だったな」
「ぐうぅ……!!」
 アギハがつかつかと少年に歩み寄ってくる。そして、角張った形の拳銃を少年に向けた。

「あの怪しい集団を狙わず……出てこないのは当たり前だったな……そりゃそうだよな」
 少年との距離を詰めながら、アギハは続けた。
「私達はお前の犯行を衝動的にやっているものだと思っていた、が……」
 少年の約5メートル手前で、アギハは歩みを止めた。
「ちょっとは考えていたようだな、お前」

「くっそぉぉ、今までバレなかったのに……完璧に手に入れることができたのにぃぃ!」
 少年は額を押さえながら言った。その被弾箇所からは血が流れている。
「お前のその力は……この社会において、危険なものだ」

 アギハの顔に、ゴーグルが出現した。
「それは……君、それ……もしかして、僕と同じような力を……」
 アギハはエアガンを、もう一度しっかりと構え直した。
「今からお前の足を撃って、手を撃って……二度と下着ドロなんてできないようにしてやる!」


「に、二度と……下着ドロを?」
 少年はエアガンを構える少女を見た。
「いや、僕はもう二度とはしないよ….」
「何?」
 少年は続けた。
「僕はもう欲しいものは手に入ったんだよ……今、さっき、ここで」

 アギハはスカートの下に違和感があることに、ようやく気がついた。
「なっ……お前……まさか!」
 アギハはスカートの上の方を、少しだけなぞってみた。
 下着の感覚は、なかった。



「あの一瞬で、私の……!?」
 少年はニヤッと笑った。
「あぁぁあ、そうだよ……今さっき手に入れたんだよ……少し予定通りじゃなくなったけどね……」
 少年は手に持ったその下着を、アギハに見える位置まで移動させた。
「お、お前……クソが! 返しやがれ!」

 少年は額を押さえながら、姿勢を正常な状態に戻していく。
「う、動くんじゃねぇ! 動いたら撃つってんのが、この状態でわからねえのか!」
「わかるよそのくらい……でもね……」
 少年は靴の先端にあるローラーを地面に、ゆっくりとくっつけた。
「そんなエアガンなんぞ、脅しにもならないね!」


「この野郎!」
 
 アギハは少年の足をめがけ発砲した。

『『『パァン』』』

 恐ろしいほどの威力を持った、先程とはまるで違うBB弾が、少年の足に直進する!


「はっ!?」


 しかし、着弾したのは足ではなかった。
 暗いアスファルトだった。


 少年は既に、はるか前方——数十メートル先にいた。突風のような速さで、アギハから遠ざかっている。


「は、速い!ウソだろ!?」
 アギハは構え直す。

「ありがとう、僕はこれからずっと楽しもうと思ってるよ! この宝物と“設定”で!」
 少年は感謝しているといった感じの台詞を吐きながら、恐ろしい速度でアギハから離れていく。


「逃すかよ変態野郎ぉぉ!」
 アギハは前方に向かって、一気に二、三発撃ち込んだ。


『『『パパパァン』』』


 弾は全て少年に命中した。しかし——

「さっきみたいに近づいてくるならまだしも、遠ざかるやつにそんな弾あてたところで——」


 少年は気にもせず遠ざかっていく。


「まあああったく痛くもかゆくもないね!」



「クッソぉ……射程外だ!」
 ——アギハの魔法は、エアガンなどの威力を過剰にあげることができる。しかし、短所として普通の拳銃より威力の減衰が激しく、ものの5メートルほどで威力が普通のエアガンと並ほどになってしまうのだ。

「僕は君のこと、絶対に忘れないよ!宝物をくれた、君のことをね!」
「ま、待ちやがれぇぇ! クソが!」

 アギハは駆け出した。が、もう走って追いつける距離、そして速さではなかった。
 少年は、車並みの加速でアギハから離れていく。

「じゃあね!」

 少年と少女の距離は、無情にもズンズンと離れていった。


「チッ……クショオぉぉ!」











「——リランさんに急かされてきたけど」



「!!」
 勝利を確信した少年の目に、鱗肌の人間が映った。黄色い目が、夕日で光って見える。

「あ、アイツ……!」
 その後ろを走るアギハが、その人間に気がついた。

「おいどけ! 僕は男なんか欲しくねぇんだよ! これっぽっちもな!」

 少年はその人間に向かって、より一層加速して突っ込んでいく。

「さっさとどいて、どっか行きやがれ!」




「リランさんの言ってる通り、ホントーにローラースケートみたいなやつ、履いてるんだな」



「なっ……!!?」

 そのは加速する少年を——

「ぶ……ぶつかるぅぅ!! な、なんだよこいつっ——」


 ——その体で受け止めた!


(コイツ……ほ、本当に人間か!?)





続く
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