ヘンテコ魔法使いの非日常

KEFY

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変態のトリックスター 編

僕の欲しいものはただ一つ

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 翌日。
 作戦本部にはゲツ、アギハ、リランの三人が集まっていた。

「昨日はお疲れ様でした。みんなのお陰で、彼を止めることができましたからね」
「お前がおいしいとこ全部かっさらっていったじゃねーか」
「ふふふ、いやすみませんでしたねあの時は」
「リランさんは、あの時もし犯人が逃げたらどうするつもりだったんですか?」
「あー、実はあまり考えてなかったんですけど……まぁ2人がなんとかしてくれるかなって」
「お前……マジでさぁ……」

 と、3人は昨日の振り返りをしていた。この3人に特にこれといって変わったことはなかった。しかし——

 アギハは何かを言いかけて「いや、それよりも」と切り出した。

「なんでこの変態パンドロ野郎が、このメンバーの一員になったのかって話だよ」


 なんとこの空間にはこの3人の他にもう1人いたのだ。
 その人物の名はミズ。昨日までパンツ強盗をしていた人間だ。

「変態って……僕そういう風に思われてんの?」
 ミズが不思議そうな顔をしながらアギハの方を見た。彼は机の隅っこの椅子に座っており、ずっと黙っていたためこの4人の中ではあまり存在感がない。
「……そうとしか思われてない、としか思えないぞ私は。どんだけお前は自分を客観視できてないんだ」
「はぁ、そういうもんなんだ……覚えておくよ」

「で、なんでリランはコイツをここに入れたんだ」
 アギハはリランの方に目だけを向けながら聞いた。
「えっとですね……それは……」
 珍しくリランが言葉に詰まっている、とアギハは感じた。そしてその間に、

「それは僕が彼女——リランを欲しくなったからだ」

 と、アギハより先にミズがその理由を喋ってくれた。

「……は?」
「……えっリランさんってそういう……」
「ちょ、ちょっと!」
 同級生2人組はほぼ同じタイミングで驚いた。ついでにリランも驚いている。
 しかしそれもつかの間、ミズは続けて話す。
「僕が今まで欲しいと思ったものは、パンツだけだった。しかしその僕の濁った欲望の中に、彼女という一筋の光が舞い込んできたんだ」
 ミズは恍惚した表情になりながら続ける。アギハは心底気持ち悪がっていた。

「彼女から話は聞いた……君たちは悪い魔法使いを成敗していると。僕はこれに協力することにしたんだ」
 ミズはここから語気を強めていった。
「何故なら! 彼女を手に入れられるチャンスが増えるからだ! 僕の欲しいものが手に入れるからだ!」
 ゲツもここらから引き始めた。
「そして今、僕は新しい喜びを手に入れた……それはいかにして手に入れようかと試行錯誤するという喜びなんだ……今まででは味わえなかった、とても楽しい思考だ……」

「僕は感謝しているよ……僕を救ってくれて、とても感謝してる……だから!」
「うるさいですよ、ミズくん?」
 何か言いかけたミズが、後ろからしたその声に大きく反応した。

「ああ、リラン……今日もなんて……ふぅぅぅ素晴らしふぃぃぃんだぁ……」
 心底気持ちの悪い言い方だ、とゲツとアギハは感じた。特にアギハは、より強く。
「僕は君に会えて幸せだよ……だから僕に!」
 ミズは机を飛び越えそうな勢いで席から立つと、後ろのリランに抱きつこうと大きく両手を広げ、

「僕に君をくれぇぇぇぇぇ!!」

 と、叫びながら振り向いた。

 その直後、リランは振り向いた彼の頭を思い切り手で掴んだ。ミズの両腕は広げたままだ。

「うげ!? いででで!!」
「いいですかミズくん……一つだけアドバイスをしてあげましょうか……」

 ミズはリランより背が小さいので、簡単に掴む事が出来たのだ。そして、リランはこう続けた。


「下着ドロをするような人、ましてやストーカーじみた事してくる人に寄り付く女なんて、まずいませんよ……」


「!?!?」


「なんて事だ……盲点だった……」
 ミズは目を見開いて、とんでもなく衝撃を受けていたようだった。アギハは、やっぱりこいつ仲間に入れたくねぇと思い始めていた。

「ああ、僕はどうすれば……」
 彼はイスに座りながら呟いた。





「そういえば……リランさん」
「なんですか?」
 ゲツは少し唐突に切り出した。
「何でリランさんの……えーっと、下着? はとられなかったんですか?」
 ゲツは下着とよぶのを少し迷いながらリランに聞いた。
「それは私の魔法です」
 リランは無表情を崩さずにに答えた。
「私の魔法は、鎧です」
「……鎧? 鎧型のガジェットなんですか?」
 そうです、とリランは答え、こう続けた。
「今まで、これを貫き私に触れることが出来たものはありません……私には……」
 





----------



 それから少し時間が経って、3人が帰った頃。
 リランは作戦本部の椅子に座って、スマホを使って誰かとやりとりをしていた。

『皆さん、情報は入りましたか』

 リランがこう書き込むと、一斉に反応が上がった。

『ありません』
『有用な情報は得られなかった』
『特になし』

「……はぁ」
 リランは一人、ため息をついた。
「みんなも無事なようね」
 画面をスクロールさせながら言った。

「今回も特に動きはないようですね……」
 リランは天井を見上げて、また手元のスマホの画面に目を落とした。

「一体、いつになったら見つかるのでしょうか……彼は」
 リランはゆっくりと立ち上がり、部屋を出た。
 古くなった廊下に空いた穴を、避けながら進んで行く。

「もう被害が拡大しないようにしないといけないのに……私はまた……」


 リランはそのまま、奥の部屋へと消えていった。





続く
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