学校一のイケメンと付き合っています。

まりも

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2話

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「はぁぁぁ?!西島真澄と付き合うことになった?!」
次の日の昼休み。昨日の出来事を親友の伊藤舞子と幼なじみの中川翔太に伝える。
舞子は声を大にして驚き、翔太は爆笑している。
「おいおい、エイプリルフールは過ぎたぞ」
「嘘だったらどんだけ良かったのか」
そう、人の噂とは回るのが早い。特に学校という小さなコミュニティの中では、「あの西島真澄に彼女が出来た」という情報は光の速度で駆け巡り、私は朝から嫉妬やら羨望やらの視線に晒されている。
「校内一のモテ男くんは彼女作らないことで有名だったもんねー。」
「まぁ、俺は西島の意見も分かるけど。好意が強すぎるやつって何するか分かんねぇからな。」
「特に女はねー。のめり込むとすっごいから。」
好き勝手に話まくる2人の会話を聞いていると、恐ろしい人の彼女になってしまったのではないだろうか、という気持ちが出てくる。






「ねぇ。」
放課後になり、帰宅する為の準備をしていると、不意に、後ろから声をかけられる。栗色のウェーブのかかったロングヘア。ミニスカートから伸びる脚はスラッとしていて、まさに美脚。
私でも知ってる、うちのクラス一の美人。
「川見さん……。」
「浦田さん、少しいいかな?」
「はい……。」
これはあれだ。よく恋愛ドラマで見る、良くない方の校舎裏呼び出しのやつだ。
助けを求めるように舞子と翔太へ視線を向けるも、2人共笑いを堪えながら手を振っている。
ブルータスお前もか!!!

川見さんに連れられて来た場所は校舎裏とかではなく、中庭。
しかしうちの高校の中庭は昼休みに通る人が少ない位置にあり、敢えて通りかからない限り助けは来ないだろう。
「西島くんと付き合ってるって聞いたんだけど。」
「う、うん。昨日からだけど……。」
「なんで?今まで誰とも付き合わなかったのに、なんで貴女とは付き合うの?」
「えーっと、私もわかんないけど、なんか、そういうことになりまして……。」
キッと睨まれて、肩を窄める。美人の睨みは迫力があって怖すぎる。
「西島くんと浦田さんっていつ関わりがあったの?一緒にいるところなんて見たこと無いんだけど。」
無いでしょうね。無いですもん。昨日までの高校生活で、西島くんと話したことなんてありませんよ。そりゃ、なんでお前が付き合ってる?ってなるよね。わかる。わかるよ。
私も広く見れば被害者側だと思うんだ。だから話し合えばきっと分かり合える。
しかし、私達が付き合い始めた経緯を素直に話すと、火に油を注ぐ結果になるのは目に見えている。
答えに詰まる私に苛立ちを募らせたのか、ダンッと地面を踏みつける。
「ねぇ、普通に考えて嘘なんでしょ?嘘の噂広めて西島くんに取り入ろうとしてるんでしょ?」
「え、違う。本当に付き合って……。」
「うるさい!!」
急に大声を出され、口を噤む。今何を言っても逆上させるだけなのかもしれない。
しかし、彼女はそれすらも気に食わないようだ。振り上げられた腕を見て、冷静な頭が「つけ爪の付いた手で叩かれたら痛いだろうな」と、冷静に分析する。
痛みに備えてギュッと目を瞑った。

………………。

…………?

一向に来ない痛みに、恐る恐る目を開ける。
川見さんの腕は振り上げられたまま、後ろに立つ人物に掴まれていた。

「に、し……」
「西島くん……?!」
私の声に被せるように川見さんが大声を上げる。
腕を掴んだまま、西島くんが川見さんを冷めた目で睨む。
「何してるの?」
「そ、それは……」
「彼女が俺の恋人って知ってて、手を上げてるのかな?」
昨日とても温和だった彼の声が冷え切っていて、恐怖を覚える。
それは直接向けられている川見さんの方が強く感じているのか、顔が真っ青だ。
ゆっくり川見さんの腕を西島くんが離す。
「あ、私……」
「ごめんね、俺、今、結構怒ってるから、君に優しく出来ない。目の前から消えてくれるかな?」
「……っ」
目に涙を溜めた川見さんは弾かれたように走り去る。私はその光景を眺めることしか出来なかった。
「浦田さん!」
西島くんに腕を掴まれて、ハッと我に返る。彼特有の優しい声と温もりにホッとする。
「西島くん……」
はらりと、涙が頬を伝って零れ落ちる。
思っていたより恐怖心を抱いていたことに気づき、安心した瞬間に涙が止まらなくなってしまう。
「ごめん、怖い思いをさせてしまって…。君に攻撃が向くなんて、想定できる事だったのに……。」
「ちがう、これは西島くんの姿を見て安心したからで……。来てくれてありがとう。」
手で涙を拭って、心配そうな彼に笑いかける。
「明日からはこんなことがないようにするよ、絶対に。」
「私なら大丈夫だよ」
「俺が大丈夫じゃない。浦田さんは俺に付き合ってくれてるだけなのに。本当に無理なら別れても……」
グッっと眉を寄せた彼の顔を見て、知り合って間もないが、責任感が高くて優しい人なのだと感じることができた。
「あははっ」
私が急に笑いだしたからか、ギョッとする彼。
「どうしたの?」
「ううん、ごめん。なんか、君って本当にいい人だね。」
シワを刻み込んでる眉間に指をトンっと乗せる。
「約束したじゃん。卒業するまで彼女するって。こんな短期間で約束は破らないよ。でも怖かったから、守ってくれる?」
へへへ、とそう笑えば、彼もつられて笑う。

「必ず守るよ。絶対に」




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