おとぎまわり

アン

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いばら姫

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妖精達から祝福を与えられ、私は世にも幸せに育った
齢十五を迎えたあの日、王国と共に百年の眠りに就くまでは…

眠れる私に、心優しい妖精が掛けたもう一つの魔法

「姫様は永遠に老いない
長く眠りであろうとも、その美しさを侵す事は出来ない」

そして、長い長い時が経ち
王国が茨に包まれた頃…あの人がやって来た

その口付けは百年という偶然に重なり、世にも運命的な目覚めとなった
呪いから解放された姫と、勇敢な王子…軈て産まれた、可愛い子供達

幸せな終わりの物語
…そう思っていた

長い長い時が経ち
時代は変わってゆく

夫を見送り、我が子を見送り
…それでも尚朽ちぬ私の体
自慢の長い髪、羨ましがられた瞳の色も
何一つ衰える事無く、生き続けた

人々は噂した

いつまでも居座る女…
不気味な程変わらぬ容姿…
もしやあれこそが魔女なのでは…

もう耐えられなかった

魔女…私を呪い、父も母も…国民も…
祝福無き者全てを奪った、憎き相手と同列に語られるなんて

泣き疲れて眠っても…寄り添ってくれる人は、もうこの世に居ない

嗚呼…ごめんなさい、妖精さん
貴方はきっと、私の事を思って魔法を掛けてくれたのよね
でも、こんなのあんまりだわ

「返して…私の人生を返してよ!」

【妖精は悲しい表情かおで、杖を一振り
光の粒子が王妃を包み込んだ

暫くの後、そこに居たのは魔法が解けた彼女

輝く金の髪も、白く柔らかな肌も、見る影も無い…弱々しい老婆

老婆はみるみる内に骨となり、崩れ、砂となり…風に吹かれて消え去った】
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