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第46話 魔術師が抜けた勇者パーティー
しおりを挟む「だぁぁぁ!! くそがっ!!」
勇者ルークスが近場にあった大岩を殴りつける。
大きな亀裂が入り、大岩が砕けた。
「ちょっとルークス! 暴れないでよ」
「あぁ。少し落ち着け」
賢者レイラと戦士アドルフがなだめようとするが、ルークスの不満は収まらない。
「こんな状況で落ち着けるか! 俺たちはさっき、オークの群れ相手に負けたんだぞ!? たかがCランクの魔物に!!」
「で、でもあの中には危険度Bランクのオークファイターもいました」
「ファイターなんて三体しかいなかっただろ!」
聖女セリシアの言葉でも彼の怒りを鎮められなかった。
「魔物に負けて逃げるのだってここ最近多くなった。以前はこんなこと少なかったじゃないか」
「それはたぶん、魔王が力を付けてきてるから魔物も強くなってるんだよ」
レイラの発言は半分正解で半分間違っている。
「確かに魔物が強くなってるってのはある。でも俺たちは、オークの群れ程度に後れを取るようなパーティーじゃなかった!」
数か月前のルークスたち勇者一行であれば、ファイターが十体以上いるオークの群れでも短時間で殲滅することができていた。
「くそっ! なんでだ!? どうしてこんなことになってる!!」
彼らがここまで追い詰められていた理由。
それは──
「やはりアイテム管理の人員が必要なんじゃないでしょうか?」
「セリシアが言う通りだ。俺もそう思う」
戦闘中に回復アイテムや予備の装備を上手く管理できていないことが大きな要因であった。
「回復アイテムとかを回すのは俺がやってんだろ」
「そりゃあ、アンタしかやれる人がいないからね」
収納魔法を使うケイトがこのパーティーを抜けた後、アイテム管理はルークスが行っていた。
前衛で敵の攻撃を受け止めるアドルフにはそんな余裕がない。賢者レイラは魔法の発動に高い集中力を有する。彼女の魔法は威力が高い分、ミスした時に仲間に被害が出る可能性があるのでアイテム管理などしていられない。
残るは聖女セリシアだが、彼女はこのパーティーにおける本職の回復役だ。セリシアの手が回らないときに、応急で回復薬を使うのだから彼女にアイテム管理などさせたら本末転倒になってしまう。
消去法でルークスがアイテム管理をすることになったのだ。
「でもアンタ、さっき私に魔力回復薬を投げて渡して失敗したよね」
「あ、あれはレイラがちゃんとキャッチしないから!」
「私にアレをキャッチできるような反射神経を求められても無理だって! それに急に投げてくるから、集中も途切れちゃったし」
「わ、私もあの速度で投げられたら受取れません」
「悪いな、ルークス。俺もできれば手渡しが良い。受け取りでミスって回復薬を三本も無駄にしなければ、おそらく今日は負けなかった」
「アドルフまで……」
ルークスがアイテムを投げ渡そうとして他のパーティーメンバーがキャッチミスすることで失ったアイテムはかなりの量になっていた。
無駄に失うアイテムが多くなったこと。また国やギルドからの依頼を達成できなくなったことで、勇者パーティーのお財布事情はかなりマズいことになっている。
「じゃあ、今まではどうしてたんだよ!? まさかケイトがお前ら全員に回復薬や予備の装備を手渡ししてたって言うのか?」
「そうよ」
「いつも手渡しでした」
「受け取りミスなんてなかった」
「な、なん…だと……?」
激しく状況が移り変わる戦闘中に、パーティー全員の状況を把握しつつピンチになったメンバーに最適なアイテムを最適なタイミングと方法で受け渡していたケイト。
そんな彼が抜けたことで、勇者ルークスが率いるパーティーは戦力が大幅に低下していた。
単体であれば危険度Aランクの魔物もひとりで倒せるルークスも、仲間を守りながら各員の支援も行うというのは非常に困難であった。
「やっぱり、ケイトに戻って来てもらわない?」
「それが良いです。みんなで謝りましょう」
「今のままじゃ、魔王はおろかその辺の雑魚魔物にも負けかねない。俺たちいつか、本当に全滅しちまうかもしれない」
レイラたちはケイトに帰ってきてもらうべきだと考えていた。今後も魔王討伐を目指すのであれば、あの収納魔法を使いこなす彼の存在が必要だと思っている。
しかし勇者ルークスは、それをどうしても認められなかった。
「ダメだ! 何があってもアイツは呼び戻さない!!」
「な、なにムキになってるの? ちょっと謝るだけじゃん。きっとケイトなら帰って来てくれるからさ」
「お前、ケイトにされたことを忘れたのか?」
「それは……。確かに許せないけど」
「アイツは聖剣を勝手に売ったんだぞ!? 俺たちになんの相談もなしで!! そんな奴を仲間に入れられるわけないだろうが!!」
その後、ルークスがアイテム管理を今まで以上に頑張るということで折り合いがついた。
しかし攻守の要である勇者がアイテム管理を担うようになったことで、勇者パーティーは何度も格下の魔物に後れを取ってしまうこととなる。
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