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第54話 魔王軍四天王
しおりを挟むケイトたちがエリクサーを作っていた頃、魔界では少し騒動が起きていた。
「みな、良く集まってくれた」
魔王軍四天王のひとり。吸血鬼の始祖であるブラド卿が、指令所に集合した魔人たちに声をかける。彼以外に三人の魔人がやって来ていた。
「今日は何の用だ?」
「強制招集は久しぶりね」
ブラド卿と鬼人族の男、九尾狐の女が四天王であることは変わっていない。
「ブラド卿のお呼びとあれば、私はいついかなる時でも招集に応じます」
新たに四天王に加わったのはブラド卿の配下のひとりだった。吸血鬼である彼は他の四天王の配下を倒してこの座に就いた。
「今の貴様は我と同じ四天王のひとりだ。あまり我にへりくだる必要はない。貴様にも配下ができたのだから、そいつらに示しがつかなくなる」
「は、はい! 承知いたしました」
「なんかまだ硬いな」
「もっとラフに行きましょ」
「……こいつらのようになれとは言わんが。まぁ、そのうち慣れるだろう。さっそく本題に入ろうか」
ブラド卿が侍女に用意させたお茶を口に運び、心を落ち着かせる。彼が同僚の四天王たちにこれから伝えることは、彼自身もいまだに信じられない情報だった。
「十六天魔神、プラエフェクトス様の存在が消えた」
「……は?」
「き、消えた!? 十六天魔神のおひとりが?」
「ブラド卿。それは事実なのですか?」
三人の四天王はブラド卿が魔王からそのことを聞かされた時と同じような反応をしている。
「真実だ。我はその情報を、魔王様から直接お聞きした」
四天王が四人がかりで戦っても、たったひとりに勝てないほどの力を持つ八大魔将たち。更にその八大魔将より強い者たちが十六天魔神を名乗ることを魔王に許されている。人間界最強戦力である勇者が死力を尽くしても魔王軍四天王ひとりを倒すのがやっとなのだが、魔界には四天王よりも遥かに強い存在がいるのだ。
「まさか勇者が?」
「いや、それはありえねぇ」
勇者は常に成長し続けて強くなっている。しかし現状では八大魔将にすら劣る。そのことは四天王たち全員が把握していた。その気になればいつでも勇者を殺せるという意識から、わざわざ人間界まで出向いて勇者を襲うようなことはしなかった。
「うむ。我も勇者が原因ではないと思っている」
そもそも勇者は魔界に来るような力を持っていないはず。
「原因は分からぬが、プラエフェクトス様が消えたのは事実だ。そこで問題が発生した」
「問題?」
「プラエフェクトス様は十六天魔神。十六人いた魔神のおひとりがいなくなったのだ」
「それって」
「もしかして──」
「早急に人員を補充せよと魔王様から命令が下った。八大魔将のおひとりが十六天魔神に昇格するため、我ら四天王の中からひとり八大魔将へ繰り上げで昇格する」
八大魔将や十六天魔神と言っても名ばかりで、常に八人や十六人揃っていたわけではない。しかし近年は魔王がその辺にいた魔物に力を注ぎ込んで強力な魔人を生み出すことが増え、ちょうど名を示す通りの人数が集まっていた。
そんな中、突如十六天魔神の一体が消えた。魔王にとってプラエフェクトスが消えた理由などどうでも良かったが、十六天魔神なのに十六人ではなくなったことが気に入らなかったのだ。
「で、でもよ。八大魔将に上がる条件って、現役四天王全員と同時に戦って勝つことだろ?」
「今の私たちじゃ、誰もその条件を達成できないわ」
「一番可能性があるのはブラド卿ですね」
「我も三人同時だと厳しいな。特にお前の血操術と我は相性が悪い」
「きょ、恐縮です」
魔人は百年や千年という短期間で強くなることはほとんどない。主に魔王からどれだけの力を分け与えられたかで、その生涯で到達しうるの強さのほとんどが決定してしまう種族だ。最弱の魔物のであるスライムがたまたま魔王に気に入られ、強大な力を貰って十六天魔神となったこともある。
魔界とはそういう場所。
「俺たちの誰も八大魔将への昇格条件を満たせないとなると、どうなるんだ?」
「今回は特例ということになった。我ら四天王で人間界に攻め込み、勇者を殺した者が八大魔将に昇格する」
「えっ、マジ!?」
「条件はそれだけか!?」
「あぁ。それだけだ」
九尾の女とオーガの目つきが変わる。八大魔将になるというのは、魔王のそばに行けるということ。より多く魔王に接する機会を得ることで、力を分け与えられる可能性が増える。本来の昇格条件を満たせずに昇格したとしても、それはさほど問題ではない。八大魔将に見合うだけの力はいずれ得られるのだ。
「勇者討伐レースだな」
「ふふふっ。勇者を探して狩るだけ。直接あなたたちと戦わなくても良いなら、私にもチャンスがあるわね」
「わ、私は、四天王になったばかりなのですが……」
「もちろん貴様にも参加する資格がある。我と同列になったのだから当然のこと」
ブラド卿が鋭い眼光でかつての配下を睨む。
「負けぬぞ。貴様も死力を尽くすがよい」
「はい! 全力でいかせていただきます!!」
元配下の男は緊張で声を震わせながらも、敬愛していたブラド卿から同列だと言われて感動していた。
「それでは四天王会議を終了する。この部屋を出た瞬間から、みな好きに動け。一番早く勇者の首をとってきた者が次の八大魔将だ」
とある魔導士が十六天魔神を異空間に収納してしまったせいで、魔王軍四天王の全員が人間界に侵攻してくることとなった。
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