勇者召喚に巻き込まれた水の研究者。言葉が通じず奴隷にされても、水魔法を極めて無双する

木塚麻弥

文字の大きさ
56 / 101
第2章 水の研究者、魔族と戦う

第56話 情報収集

しおりを挟む
「勇者だぁ? んなもん、見たことあるわけねーだろ」

 ガロンヌさんとシャルロビさんに俺の杖の製作を依頼し、完成まで暇になったのでこの世界に関する情報収集することにした。色々と情報は集まってきたが、どこで聞いても勇者の情報だけは出てこなかった。

「俺もねーな」
「同じく」
「儂もじゃ」

 冒険者ギルドに併設された酒場で、冒険者たちに酒を奢って情報を集めているのだが、誰も勇者を見たことも、その噂を聞いたこともないという。 

「てかよ、勇者がこの世界にくるってことは、魔族が復活してるってことだぜ?」

「だな。そろそろ魔族が出現する年だってのは言われているが、この辺りで魔族をみた奴らなんていない」

 へぇ、そうなんだ。

 俺はもう2体も魔族を倒してるけど、出現報告ってそこまで出てないみたい。

 犠牲者が出る前に魔族を仕留められているってことだから、そこは喜んでいいのかもしれない。

 しかし困った。それなりに貿易が盛んで、冒険者の出入りが多いこの街でこれだけ勇者の情報が出てこないとなると、サハルで情報が得られる見込みは低そうだ。

 あの高校生たち。本当にこの世界に勇者として召喚されてきてるのか?

 俺がこっちに送り込まれた時間軸とラグがあるって可能性もあるな。もしくは女神によって最初に呼び出されたあの空間でチュートリアルを受けてるとか。

 それだったら良い。彼らが危険な思いをしていないのなら、問題ない。

「ところで、お前よ。可愛い猫獣人連れてんな」

「獣人てのは発情期になると大変なんだろ?」

「俺らが相手してやろう」

 酒に酔った冒険者たちが絡んできた。

「こっち来ないでニャ!」

 やはりミーナを連れてきたのは間違いだったかもしれない。彼女は俺を心配してついてきてくれたんだが、案の定ミーナの方が冒険者たちの標的になった。

「ミーナに触ったら、殺しますよ」

「おいおいおい、粋がんなよ」

「強い言葉えば俺らが怯むと思ってんのか」

「ちょっと金がある程度で調子に乗るな」

 俺とミーナがゴールドの冒険者であることは言ってない。言ったところで見た目で舐められることは分かり切っていた。

「警告はしましたからね。そこから一歩でも近づけば攻撃します」

 あらかじめこうなることを予測し、このギルドのマスターには話を通してある。

 殺しはしない。でも冒険者が絡んできてどうしようもなくなった時は、死なない程度に攻撃しても良いって言ってもらった。

 冒険者やってるような奴らって、結局は強い奴にしか従わないから。

「近づいたら、なんだって」
「ほら、来てやったぞ」
「俺らをどうす──ぐぼっ!?」

 警告を無視して3人の冒険者が接近してきたので、彼らの頭に水球を落として溺れさせた。水球はあらかじめギルドの天井付近にいくつか設置していたもの。

 戦意を喪失させるのが目的なので、10秒ほどで解除してあげる。

「ゲっ、ゲホっ。…て、てめぇ!」
「な、なにしやがった!?」

 ふたりはまだ俺への反抗心が消えなかった。もうひとりは溺れた時パニックになり、大量の水を飲んだようで泡を吹いて倒れている。

「俺の水魔法。言ったよね。近づいたら攻撃するって」

「み、水魔法!?」
「あの水量を……」
「ありえねーだろ」

 何人かは俺にビビってる様子。

「ギルド内での魔法の使用が認められると思ってんのか!」

「冒険者でもない奴が、ちょ、調子に乗るんじゃねーよ!」

 外野から口で文句だけいう奴らもいた。

 一番問題なのは、ギルドへの忠誠心がそれなりにあって、俺が魔法使いだと把握したうえで接近戦には弱いはずだと判断してしまった冒険者がいたこと。


「あっ、やば──」

 ひとりの男が剣を振りかぶって俺に突進してきた。

 でも俺なら水魔法で対処できる。

 俺がヤバいと思ったのは、俺の魔法より速く彼女が動いたから。


「異分子は排除す──ぐべらげばっ!!」

 俺に斬りかかる寸前、彼は横っ面をミーナに全力で殴られ、酒場の扉を突き破って外まで吹き飛んで行った。

「お、おい。セイヤが」
「ゴールドだぞ、あいつ」
「い、一撃で!?」

「トールに危害を加えるつもりなら、ウチが相手になるニャ。他にも死にたい奴がいれば来ると良いニャ。でも次は、手加減してあげないからそのつもりでニャ」

 あ、あれで、手加減してるんですか?

「それで。誰がウチの相手してくれるって言ったかニャ?」

 ミーナが酒場内を見渡すと、冒険者たちはみな目を逸らした。

「よーし、誰がボスか分かったみたいニャ。では、アンタらのボスのウチのボスであるトールの指示を聞くニャ」

 いつの間にかミーナが冒険者たちのボスってことになってた。しかも何故かそのボスが俺になってる。

「さぁ、トール。こいつらに指示を」

「えっと……。さすがにここまでのことはギルマスさんに許可を貰ってないけど」

「良いから良いから。情報収集の伝手は多い方が助かるニャ」

 まぁ、そりゃそうだが。
 指示に従ってくれるのか?

 とりあえず言うだけいってみる。

「それじゃあ。俺は勇者の情報が欲しいです。あと魔族が出現したって情報も。それらについてなにか分かったら、教えてください」

「「「…………」」」

 酒場内は静まり返っている。

 ほらね。こんなもんでしょ。
 だからダメだって。

「おやぁ。返事が、聞こえないニャ」
 
 俺ですら背筋がゾワっとするほどのプレッシャーがミーナから発せられる。

「「「は、はい!!!」」」

 その場にいた全員が一瞬で立ち上がった。

「なに突っ立ってるニャ。さっさと調べに行けニャ!」

「「「はい!!!!」」」

 冒険者たちがすごい勢いで酒場から飛び出していった。

 全員が出ていったのを見届けたミーナは、金貨の入った袋を持って酒場のカウンターへ向かう。そこには騒ぎを聞いて様子を見に来たギルドのマスターがいた。

「これ、壊しちゃった扉の弁償だニャ」

「ど、どうも。あの……。俺も、情報収集に行った方が良いですか?」

「あんたはここで情報の集約してニャ。たまにウチらが聞きに来るから、その時に報告お願いするニャ」

「承知致しました!」

 オリハルコン級の冒険者とかだと、ギルドマスターでも頭が上がらないこともあるという。今のミーナはそのクラスの威圧感を纏っていた。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

処理中です...