勇者召喚に巻き込まれた水の研究者。言葉が通じず奴隷にされても、水魔法を極めて無双する

木塚麻弥

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第2章 水の研究者、魔族と戦う

第59話 勇者パーティー(2/3)

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「それでは、こちらの石板に手を置いて私の質問に回答してください」

「こうですか?」

 健悟が冒険者ギルドの受付嬢に言われた通り、カウンターの上に置かれた石板に手を触れた。魔法陣が書かれているその石板がぼんやりと輝きだす。

「罪のないヒトを殺したことがありますか?」

「あ、ありません」

「先ほど書いて頂いた“ケンゴ”という名前に偽りはありませんか?」

「はい。俺はケンゴです」

 彼らの苗字である柳や橘、九条、松本はどれもこの世界で珍しい響きであり、異世界人とバレやすい。勇者として名を売るつもりがなかった彼らは、出来るだけ目立たないようにと、名前で呼び合うことにしていた。

「冒険者になる目的をお聞かせください。どうしても言いたくなければ、黙秘でも構いません」

「えっと……。魔物を倒して路銀を稼ぐため。あと、身分証が必要だからです」

 ケンゴがそう答えると、石板が青白く光った。

「はい、問題ありません。次の方──というか、めんどくさいので3人まとめてやっちゃいましょう。どう見ても君たち、人殺しなんてしてそうにないですから。さぁ、この上に手を置いて下さい」

 レンとアカリ、シオリが受付嬢の指示に従い、ケンゴと同じように質問に答えた。

 全ての回答を終えると、今回も石板は青白く光った。

「これは、なんだったんですか?」

「冒険者登録のための審査って言ったでしょう。この“真偽の石板”で、貴方たちの犯罪歴の有無と名前に偽証が無いか確認させていただいたんです。青く光ったので、皆さん嘘をついていないみたいですね」

 カウンターの下をゴソゴソと漁る受付嬢。少しして彼女は、4枚の青銅製プレートを引っ張り出した。

「こちらが冒険者証になります。無くされますと、このギルドでは再発行ができません。気を付けてくださいね。もっとも、無くしちゃったら別の街まで行って作ればいいんですけど」

「そんなに緩い感じで良いんですか?」

「良いんです。そもそもブロンズの冒険者にそこまで信頼はありません。無差別殺人鬼や、名前を偽るような輩ではないという最低限の保証がされるだけ。ただその保証すらされないようなら入国を認めてくれない国が多いのも確かです」

「なるほど。それでこのプレートが他国に行く際の通行証として使えるんですね」

「話が早くて助かります。ちなみにこの真偽の石板で名前と冒険者証を紐づけますので、仲間のものであっても間違って首にかけることが無いようにお願いします」

「間違えた場合はどうなるんですか?」

「色が真っ黒になって、証として使えなくなります。そういう魔法がかけられているんです。殺人を犯したヒトが冒険者を襲って証を奪い取ることへの対策ですね。間違えちゃった場合でも再発行は不可能ですので、気を付けてください」

 手に取るくらいなら問題ないが、首にかけると登録者でない魔力を検出した際に色が変わってしまう仕組みとなっていた。

「これで冒険者登録は完了です。お疲れ様でした。できれば月に一度くらいはギルドに来て、依頼を受注して頂けると嬉しいです」

「わかりました。善処します」
「おねーさん。ありがと」
「「ありがとうございました」」

 冒険者が魔物を倒した場合、それを買い取ってくれるのは冒険者ギルドとなる。一般人が魔物を倒すと魔具屋などに売ることになるのだが、その場合は適正価格よりかなり安価で買い叩かれる。

 路銀としては十分な資金があるケンゴたちだが、レアな魔物を倒せた時にそのまま放置してしまうのはもったいないのではないかという考えから、とりあえず冒険者登録しておくことにした。

 ちなみに彼らがこうしたのは女神からのアドバイスに従った結果だった。

 魔導都市ラケイルなど例外もあるが、多くの国で入国時に冒険者証があれば審査が簡単になる。この世界に親族のいないケンゴたちにとって有益な身分証となるのだ。


「思ってたより簡単だったな」

「戦闘力とか見ないんだね」

「死んだら自己責任の世界だからな。当然、保険とかもない」

「そ、そう思うと、少し怖いな」

 冒険者登録は問題なく終わった。

 問題がなさ過ぎて、レンは自分が警戒しすぎていたと考えたほどだ。彼は以前このギルドでトールの情報を調べた時、アカリとシオリをギルド内に入れなかった。外でケンゴと一緒に待つように言って、ひとりで情報収集していた。

 それは勇者パーティーの可愛い女の子が、厳つい冒険者たちに絡まれるというラノベのお約束展開を警戒してのこと。

 しかし身分証を手に入れるためには全員で冒険者登録する必要があった。かなり緊張しながらの行動だったが、予想に反して何も起こらなかったのでレンは拍子抜けした。

 彼はひとつ失念していた。
 それは──


「よう。ボウズたち、冒険者登録完了おめでとう」

「早速だが、先輩冒険者である俺らが色々と手ほどきしてやろう」

「君ら可愛いね。魔法使い? 俺が魔物との戦い方教えてやるよ」

 数人の冒険者たちがケンゴたちに絡み始めた。言葉はまだ優しいが、迫ってくる圧が普通ではなかった。

 冒険者が一般人に手を出せば他の冒険者から粛清されるという暗黙のルールがある。逆に冒険者同士であれば、喧嘩するも自由。他のパーティーに気に入った女性がいれば、上位の冒険者が力づくで奪ってしまうこともある。

 ケンゴたちは冒険者登録が終わるまで泳がされていたのだ。
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