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カルタゴ軍
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数々の高峰を擁するアルプス山脈の氷河を源に、ガリア地方を縦断して中海へと注がれるのがロダヌス川である。ガリア北部と中海とをつなぐこの川は、この辺りの河川で最大の長さと流域面積を誇っていた。マッシリア近郊の下流では大小の船が完備され、人や物が行き交うが、密林地帯である上流の中央ガリアにはそのような設備がなく、この川が東西の交通を強固な砦のように遮っていた。
カルタゴ軍が進軍している中央ガリアで、ヒスパニア方面からマッシリアに向かうにはロダヌス川を渡らねばならず、大軍の行軍には少なからず犠牲が伴う。さらにその辺りを縄張りにしているガリア人の諸部族は形式的にせよローマと結んでいるため、カルタゴ軍がこの川を渡る条件は最悪であった。ロダヌス川を渡るカルタゴ軍を襲い、物資を略奪するのにガリア人が躊躇う理由は何一つないからだ。
カルタゴ軍がロダヌス川を渡るには多大な犠牲を払うことから、マッシリアではローマ軍とカルタゴ軍との戦場はロダヌス川の西側であると考えられ、偵察隊も重点的にその辺りを捜索していた。偵察隊からコルネリウスの元に一報が届いたのは、探索を開始してから実に三週間後のことだった。
報告によると、カルタゴ軍の偵察隊と遭遇して、敵の本隊の陣営地を突き止めたと言う。また、この遭遇戦で百四十騎を失ったが、敵の偵察隊を二百騎撃破したとのことだった。
カルタゴ軍の陣営地はマッシリアから北西に四日行程のロダヌス川上流西側である。コルネリウスは直ちに全軍を率いてマッシリアを出発した。
ローマ軍の動きは早かったが、コルネリウスはカルタゴ軍と一気にけりをつけようとは考えていなかった。敵の戦力がどれほどのものか不明であったし、そもそも敵の目的がわからなかったからだ。コルネリウスは行軍を急がせながらも、斥候を放って情報収集を怠らなかった。ようやく見つけた敵を再び見失わないよう急ぎながらも、不意打ちを食らうのを最大限警戒したのだ。父の傍でそうした指揮を見ていたプブリウスは、また一つ父の偉大さに感動するとともに、自らの頭にそうした父のやり方を刻みこんでいった。
ここで予想外のことが起こる。斥候からの報告で、ハンニバル率いるカルタゴ軍がロダヌス川を西から東に渡ったことが明らかになったのだ。カルタゴ軍の陣営跡に到着したコルネリウスは、さらに多くの斥候を方々に放って情報収集に専念する。これにより、コルネリウスはカルタゴ軍の足取りをかなり正確に掴むことになった。
ローマ軍の目と耳から逃れるように中央ガリアに入ったカルタゴ軍は、ガリア人の諸部族との争いを極力避けるため、ときには彼らに多額の金品を渡し、挑みかかってきた部族だけを叩きのめすやり方で東進したと言う。ロダヌス川の西側には戦いの跡が点々とあり、そこには多くのガリア人の亡骸が放置されたまま今も森の一部と化していた。金品で懐柔されなかった部族も多く、ガリア人の好戦的で縄張り意識が強い気質が、彼らの寿命を縮めることになった。
カルタゴ軍が進軍している中央ガリアで、ヒスパニア方面からマッシリアに向かうにはロダヌス川を渡らねばならず、大軍の行軍には少なからず犠牲が伴う。さらにその辺りを縄張りにしているガリア人の諸部族は形式的にせよローマと結んでいるため、カルタゴ軍がこの川を渡る条件は最悪であった。ロダヌス川を渡るカルタゴ軍を襲い、物資を略奪するのにガリア人が躊躇う理由は何一つないからだ。
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