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気魄
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すでにローマ騎兵団の陣形は崩壊し、敵味方入り乱れての激しい局地戦が繰り広げられていた。執政官コルネリウスも一兵卒として剣を振った。この時点でローマ軍の敗北は決定的だったと言えよう。コルネリウスは少数の護衛と共に敵に囲まれ、退却命令を全軍に伝えることもできないでいた。
コルネリウスらを取り囲む敵兵から歓声があがった。カルタゴ兵の投げ槍がコルネリウスの右肩を貫いたのだ。ローマ軍の象徴である執政官がついに地に落ちた。これで近衛兵の激しい抵抗に討ちあぐねていたカルタゴ兵らに勢いが生じた。これが最後とばかりに突撃し、目指す敵将めがけてありったけの剣を振う。
そこに全身に返り血を浴びた一騎のローマ兵が、執政官に群がるカルタゴ兵らの背後を襲った。取り囲んでいる自分たちの背後からいきなり敵が現れたことで、カルタゴ兵らは一瞬動揺した。たかが一騎であり、圧倒的に数で有利なカルタゴ軍だが、わずかに隙が生じたのである。敵将の首を獲っても自分の命を落としては意味がない。カルタゴ兵らは漆黒のローマ騎兵から一旦距離をとった。すでに勝利を手中に収めている者のおごりがそこにはあったのかもしれない。漆黒のローマ騎兵は負傷して落馬したコルネリウスを自分の馬に乗せると、
「死にたい者はそこを退くな」
と、大声で叫び、鬼のような形相で取り囲んでいるカルタゴ兵に向かって突進した。
――気魄だった。カルタゴ兵を一瞬たじろがせたのはまさしくラエリウスの気魄だった。執政官をこれまで守ってきた護衛兵らもラエリウスの後に続き、これが最後とばかりにありったけの力を振り絞って突撃した。囲みを突破したラエリウスらは戦場を疾駆しながら、
「執政官が負傷された。集結せよ。一丸となって執政官をお守りするのだ。全軍退却。退却。退却。退却――」
と、叫び続けた。戦場にローマ軍退却の合図が鳴り響いた。カルタゴ兵から逃げるラエリウスらの元にぞくぞくとローマ兵士が集まってきた。執政官を守るこの一団は、悲痛な戦場からの離脱に死力を尽くす。
コルネリウスらを取り囲む敵兵から歓声があがった。カルタゴ兵の投げ槍がコルネリウスの右肩を貫いたのだ。ローマ軍の象徴である執政官がついに地に落ちた。これで近衛兵の激しい抵抗に討ちあぐねていたカルタゴ兵らに勢いが生じた。これが最後とばかりに突撃し、目指す敵将めがけてありったけの剣を振う。
そこに全身に返り血を浴びた一騎のローマ兵が、執政官に群がるカルタゴ兵らの背後を襲った。取り囲んでいる自分たちの背後からいきなり敵が現れたことで、カルタゴ兵らは一瞬動揺した。たかが一騎であり、圧倒的に数で有利なカルタゴ軍だが、わずかに隙が生じたのである。敵将の首を獲っても自分の命を落としては意味がない。カルタゴ兵らは漆黒のローマ騎兵から一旦距離をとった。すでに勝利を手中に収めている者のおごりがそこにはあったのかもしれない。漆黒のローマ騎兵は負傷して落馬したコルネリウスを自分の馬に乗せると、
「死にたい者はそこを退くな」
と、大声で叫び、鬼のような形相で取り囲んでいるカルタゴ兵に向かって突進した。
――気魄だった。カルタゴ兵を一瞬たじろがせたのはまさしくラエリウスの気魄だった。執政官をこれまで守ってきた護衛兵らもラエリウスの後に続き、これが最後とばかりにありったけの力を振り絞って突撃した。囲みを突破したラエリウスらは戦場を疾駆しながら、
「執政官が負傷された。集結せよ。一丸となって執政官をお守りするのだ。全軍退却。退却。退却。退却――」
と、叫び続けた。戦場にローマ軍退却の合図が鳴り響いた。カルタゴ兵から逃げるラエリウスらの元にぞくぞくとローマ兵士が集まってきた。執政官を守るこの一団は、悲痛な戦場からの離脱に死力を尽くす。
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