封印されし欲深な龍と半龍混じりの契約者 ~イリオス・アーティファクト~

重弘 茉莉

文字の大きさ
6 / 22
『第1章 転落、紅き龍との契約』

強襲、冒険者たち-2

しおりを挟む
 グルダンの強烈な脚力により、弾丸のように蹴飛ばされた金貨。
それらがキラキラと光りながらも、真っ直ぐにヴィスラに向かって飛んでいく。


「” 乱れ火矢ラン・グレイス”!」


 グルダンが金貨を蹴飛ばすと同時に、グルダンの後ろに居た弟のタケシィが火の矢の魔法を唱える。
金貨の合間を縫うように放たれた何本もの鋭い火矢が赤髪のヴィスラへと宙を走る。


「死ねぇっ!」


 大男のグルダンは棘のついた鉄球、モーニングスターを振り回す。
そして火矢と金貨がヴィスラに当たるのと同時に、勢いを付けて柔らかい脇腹へとその鉄球で殴りつける。


 飛礫《つぶて》となった金貨と火矢はヴィスラの顔に突き刺さり、金貨ごと顔を焼く。。
同時に鉄球が無防備になったヴィスラの脇腹へと突き刺さる。だが。 


「ああっ?」


 グルダンの指先で感じていた鉄球の重さがにわかに消える。
さらには鉄球を振り回すために踏ん張っていた足がつんのめる。グルダンは何が起こったのかわからずにいたが、中途半端に切り取られた鉄球の一部が飛んでいくのを見て理解する。


「ぬぅぅっ」


 通常ならば、顔を狙われれば咄嗟に防御反応を示して手で防御に回るはず。
だが、ヴィスラは全く防御をせずに火矢と金貨を顔で受けつつ、右手の鋭いかぎ爪で鉄球を瞬時にえぐり取ったのだった。


「うっ!」


 グルダンはそこまで理解し、咄嗟にヴィスラへとつんのめる自身の体を止めようとする。
だが、勢いは止まらない。


「あァあァ。でっかいのとちっこいの、なかなか面白いことしてくれるさね。だけどね」


 顔を燃やされながらもヴィスラはまばたき1つせず、にたにたと口角を持ちあげる。
まるでそれは子供が虫を弄ぶような、歪んだ笑顔。


「勢いが、だいぶ足りないさね」


 ヴィスラの脇を通り抜け、グルダンは大きく躓《つまず》いて倒れ伏す。
咄嗟に起き上がったグルダンはモーニングスターの柄を持ち上げようとするが、手に感じられたのは柄がまるで何もないような軽さしかない。


「……っ!?」


 重量だけではなく指の感覚すらない。
グルダンは自身のその右手へとゆっくりと視線を向ける。


「あァ、こいつを忘れてるさね」


 ヴィスラは足下に落ちた”もの”を拾い上げると、グルダンへと放り投げる。
固まるグルダンの顔にぺちゃりと生暖かい湿ったものがぶつかる。グルダンは目の前に落ちた自身が見慣れた”それ”を見て身を震わす。


「お、俺の、て、手……」


 グルダンの右手。正確には人差し指の付け根から真一文字に切り取られた部位。
親指を除いた4本の指と手の平の一部が、まるで死んだクモのように目の前に転がっていた。


「あっ、あっ……」


 グルダンは祈るように自身の右手に視線をやる。
そこには親指を残しただけの自身の右手。そして忘れたように吹き出る血液。


「グルダン兄貴ぃ! クソッ、” 乱れ火矢ラン・グレイス”!」


 タケシィの持つ杖から何本もの火の矢が飛び出し、ヴィスラの背へと突き刺さり燃える。
だが、ヴィスラは全く意に介さない。


「ん、まァ。楽には死なせてやるさね」


 かぎ爪をぶらぶらと揺らしながら、ヴィスラはグルダンに向かって近づいていく。


「ちょ、ちょっとっ!」


「あァん?」


 ずっと固まっていた 蒲生 悠がもう ゆうが声を上げる。
そして気怠そうにヴィスラは悠の方に視線を向けたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

「役立たず」と追放されたが、俺のスキルは【経験値委託】だ。解除した瞬間、勇者パーティーはレベル1に戻り、俺だけレベル9999になった

たまごころ
ファンタジー
「悪いがクビだ、アレン。お前のような戦闘スキルのない寄生虫は、魔王討伐の旅には連れていけない」 幼馴染の勇者と、恋人だった聖女からそう告げられ、俺は極寒の雪山に捨てられた。 だが、彼らは勘違いしている。 俺のスキルは、単なる【魔力譲渡】じゃない。 パーティメンバーが得た経験値を管理・分配し、底上げする【経験値委託(キックバック)】という神スキルだったのだ。 俺をパーティから外すということは、契約解除を意味する。 つまり――今まで彼らが俺のおかげで得ていた「かさ増しステータス」が消え、俺が預けていた膨大な「累積経験値」が全て俺に返還されるということだ。 「スキル解除。……さて、長年の利子も含めて、たっぷり返してもらおうか」 その瞬間、俺のレベルは15から9999へ。 一方、勇者たちはレベル70から初期レベルの1へと転落した。 これは、最強の力を取り戻した俺が、雪山の守り神である銀狼(美少女)や、封印されし魔神(美少女)を従えて無双し、新たな国を作る物語。 そして、レベル1に戻ってゴブリンにも勝てなくなった元勇者たちが、絶望のどん底へ落ちていく「ざまぁ」の記録である。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...