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『第3章 黒い霧、悪夢の織り手』
到達、清廉騎士団-1
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―― ”欲深なドラン=ヴィスラの砦”を出て丸2日。街道を離れた森林の中を犬にも似た生き物に乗った一団が駆ける。
一番先頭に居た男は白銀の甲冑を着込み、一直線に目的地へと向かっていた。
「うん?」
その一団の名は清廉騎士団。その十数人の団員を率いるは団長のハインリヒ。ハインリヒたちは街までもう少しというところで、黒い霧に行く手を遮られていた。
馬ほどに大きく、そして銀色をした長毛が特徴の狼に似た馬狼と呼ばれる獣に乗り、道なき道を進んでいるときのこと。いつの間にやら濃くなった黒い霧にハインリヒたちの駆る馬狼が怯え、伏せをしたまま動かなくなってしまったのだ。
「……馬狼たちがこんなに怯えるなんて初めてだ」
ハインリヒは馬狼から降りると、伏せをした馬狼の頭を優しく撫でる。
「くぅーん……」
「ああ、よしよし。 ……この先に何かあるのか?」
黒い霧は段々とある方向から濃くなっていく。
ハインリヒはその方向を見るが、霧に阻まれて何も見えなかった。
「団長、どうします。流石に馬狼に載せた荷物を人力で運ぶのは厳しいかと」
「ああ、それは分かってるさ。それにルゥを早く街に行って治療しないとな。”乾燥医草”で保たせているとはいえ、そこまで時間があるわけがないし」
ちらりとハインリヒは後ろを見る。
そこには痛々そうに左脇腹を押さえた状態で、別の団員に支えられて馬狼に乗るルゥの姿があった。
「ハインリヒ団長……。私なら、大丈夫です」
「強がりはよせ。内蔵まで穴が空いてんだぞ」
「っ……」
ルゥは口を閉じて顔を伏せる。
重い空気が辺りを包み、ハインリヒは顎に手を当てて考える。そこに無精髭を伸ばした団員が、馬狼から降りてハインリヒの方へと歩いて来る。
「団長、提案があるんですが」
「フレデリックか。どうした?」
「俺、野盗をしていた頃にここら辺りを縄張りにしていましてね。それでここら辺りに小さなエルフの村がありまして、ちょいとそこのやつらに顔が利きましてね」
「うん、それで?」
「その村には結構優秀な”癒やし手”がいましてね。俺も世話になったことがあるんですが、徒歩なら街に向かうよりもその村に向かった方が早く副長の怪我も治せるかと」
「……よしっ。ならその村からその”癒やし手”を連れて来よう。フレデリック、その村に案内出来るか?」
「任せてください! 急いで向かいましょう」
「あと3人僕たちに付いてきてくれ。残りはここで待機していてくれ。何かあればいつも通りに僕らを置いて一旦退避だ。先を急ぐぞ」
ハインリヒは団員を引き連れて徒歩でその村へと向かう。
後に残った団員たちは歩哨に立ち、辺りを警戒するのであった。
――ハインリヒたちが黒い霧の中を歩き続けて2時間ほど経過した頃。
先頭を歩いて居たフレデリックが足を止める。急に歩を止めたフレデリックに対し、ハインリヒは怪訝な表情を浮かべる。
「フレデリック、どうした? もう村の近くまで来たのか?」
「……団長、静かに。”あれ”が見えますか?」
「どこだ?」
「あのちょっと右曲がりの木の隙間辺りです。どうです?」
「……見えた。だが、あの化け物はいったい?」
ハインリヒは目を凝らしてその化け物を見る。不細工な人間の頭、カマキリのような体と鎌、脚の代わりに4対人間の腕を持ち、裂けた口から汚らしく涎をこぼしながら何かを貪る巨大な化け物。
ハインリヒたちとその化け物にはまだ距離があり、まだハインリヒたちのことは化け物にバレてはいないようだった。
「あれは……たぶん”ファリス”です。といっても俺も実物は見たことないんで、あれがそうなのかは分かりませんが」
「ファリス? そんな化け物は聞いたことがないぞ」
「ここら辺りの、まあ子供に聞かせるおとぎ話みたいなもんです。夜更かしする子や夜出歩く子、わがままを言う子はファリスがやってきて喰われるぞっていう、お話なんですが。その話に出てくるファリスという化け物そっくりなんですよ、人の顔、鋭い鎌、四対の枯れ枝のような手、そしてあの大きさ」
「避けては通れないか? あれがファリスだろうが何だろうが、僕らには相手にしている暇はない」
「少し遠回りになりますがなんとか。……あっ」
フレデリックが小さく声を漏らす。先ほどまで何か枝のようなものを貪り喰っていたファリスがフレデリックの方を向いていたのだ。
そして合う、フレデリックとファリスの視線。
「……マズいな」
ハインリヒはそのことに気が付いて声を漏らす。
そして腰に携えた剣を引き抜くと、団員に向かって号令を掛ける。
「みんな剣を抜けっ! あの化け物を叩き潰すぞっ! 清廉騎士団の力を見せつけてやれっ!」
「「「うおぉぉぉおおおーっ!!!」」」
「ん;いど;gんhぃ!!!!!」
ファリスは奇妙な咆吼を上げて木々をなぎ倒し、ハインリヒたちに迫ってくる。
ハインリヒたちもまた剣を掲げると、ファリスに向かって行くのであった。
一番先頭に居た男は白銀の甲冑を着込み、一直線に目的地へと向かっていた。
「うん?」
その一団の名は清廉騎士団。その十数人の団員を率いるは団長のハインリヒ。ハインリヒたちは街までもう少しというところで、黒い霧に行く手を遮られていた。
馬ほどに大きく、そして銀色をした長毛が特徴の狼に似た馬狼と呼ばれる獣に乗り、道なき道を進んでいるときのこと。いつの間にやら濃くなった黒い霧にハインリヒたちの駆る馬狼が怯え、伏せをしたまま動かなくなってしまったのだ。
「……馬狼たちがこんなに怯えるなんて初めてだ」
ハインリヒは馬狼から降りると、伏せをした馬狼の頭を優しく撫でる。
「くぅーん……」
「ああ、よしよし。 ……この先に何かあるのか?」
黒い霧は段々とある方向から濃くなっていく。
ハインリヒはその方向を見るが、霧に阻まれて何も見えなかった。
「団長、どうします。流石に馬狼に載せた荷物を人力で運ぶのは厳しいかと」
「ああ、それは分かってるさ。それにルゥを早く街に行って治療しないとな。”乾燥医草”で保たせているとはいえ、そこまで時間があるわけがないし」
ちらりとハインリヒは後ろを見る。
そこには痛々そうに左脇腹を押さえた状態で、別の団員に支えられて馬狼に乗るルゥの姿があった。
「ハインリヒ団長……。私なら、大丈夫です」
「強がりはよせ。内蔵まで穴が空いてんだぞ」
「っ……」
ルゥは口を閉じて顔を伏せる。
重い空気が辺りを包み、ハインリヒは顎に手を当てて考える。そこに無精髭を伸ばした団員が、馬狼から降りてハインリヒの方へと歩いて来る。
「団長、提案があるんですが」
「フレデリックか。どうした?」
「俺、野盗をしていた頃にここら辺りを縄張りにしていましてね。それでここら辺りに小さなエルフの村がありまして、ちょいとそこのやつらに顔が利きましてね」
「うん、それで?」
「その村には結構優秀な”癒やし手”がいましてね。俺も世話になったことがあるんですが、徒歩なら街に向かうよりもその村に向かった方が早く副長の怪我も治せるかと」
「……よしっ。ならその村からその”癒やし手”を連れて来よう。フレデリック、その村に案内出来るか?」
「任せてください! 急いで向かいましょう」
「あと3人僕たちに付いてきてくれ。残りはここで待機していてくれ。何かあればいつも通りに僕らを置いて一旦退避だ。先を急ぐぞ」
ハインリヒは団員を引き連れて徒歩でその村へと向かう。
後に残った団員たちは歩哨に立ち、辺りを警戒するのであった。
――ハインリヒたちが黒い霧の中を歩き続けて2時間ほど経過した頃。
先頭を歩いて居たフレデリックが足を止める。急に歩を止めたフレデリックに対し、ハインリヒは怪訝な表情を浮かべる。
「フレデリック、どうした? もう村の近くまで来たのか?」
「……団長、静かに。”あれ”が見えますか?」
「どこだ?」
「あのちょっと右曲がりの木の隙間辺りです。どうです?」
「……見えた。だが、あの化け物はいったい?」
ハインリヒは目を凝らしてその化け物を見る。不細工な人間の頭、カマキリのような体と鎌、脚の代わりに4対人間の腕を持ち、裂けた口から汚らしく涎をこぼしながら何かを貪る巨大な化け物。
ハインリヒたちとその化け物にはまだ距離があり、まだハインリヒたちのことは化け物にバレてはいないようだった。
「あれは……たぶん”ファリス”です。といっても俺も実物は見たことないんで、あれがそうなのかは分かりませんが」
「ファリス? そんな化け物は聞いたことがないぞ」
「ここら辺りの、まあ子供に聞かせるおとぎ話みたいなもんです。夜更かしする子や夜出歩く子、わがままを言う子はファリスがやってきて喰われるぞっていう、お話なんですが。その話に出てくるファリスという化け物そっくりなんですよ、人の顔、鋭い鎌、四対の枯れ枝のような手、そしてあの大きさ」
「避けては通れないか? あれがファリスだろうが何だろうが、僕らには相手にしている暇はない」
「少し遠回りになりますがなんとか。……あっ」
フレデリックが小さく声を漏らす。先ほどまで何か枝のようなものを貪り喰っていたファリスがフレデリックの方を向いていたのだ。
そして合う、フレデリックとファリスの視線。
「……マズいな」
ハインリヒはそのことに気が付いて声を漏らす。
そして腰に携えた剣を引き抜くと、団員に向かって号令を掛ける。
「みんな剣を抜けっ! あの化け物を叩き潰すぞっ! 清廉騎士団の力を見せつけてやれっ!」
「「「うおぉぉぉおおおーっ!!!」」」
「ん;いど;gんhぃ!!!!!」
ファリスは奇妙な咆吼を上げて木々をなぎ倒し、ハインリヒたちに迫ってくる。
ハインリヒたちもまた剣を掲げると、ファリスに向かって行くのであった。
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