予測者~Prophet~

高ちゃん

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獣人族戦編

暗殺者レオン②

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対暗殺者レオンの作戦、必要な条件は全部で3つ。
①相手の位置が分かること
これはセラミさんの血が舌についたことで分かる。
というのも舌についているときは見えないがぽたぽた垂れた時は普通に見えるからだ。
②距離を取られすぎないこと
これに関しては現在部屋の中というので満たされている。
③攻撃のタイミング
これが一番の難点だった。
だが僕の能力のおかげで分かるみたいだ。
それなら条件はオールクリア。
必要なのは覚悟だけ。
予測が間違えていたらという覚悟。
恐怖が無いと言ったら、まあ嘘になる。
だが、不思議と出来なくなるほどではない。
それほどに今の予測に自信があるんだ。
だから、失敗しないように集中するんだ。
奴の位置をしっかりと把握しろ。
そしての発動を見逃すな。
『右方から攻撃』
ここは避ける。
まだだ、作戦に適した位置ではない。
『上方から攻撃』
ここでもない。
まだか、まだ。
奴の位置を見るたびもどかしくなる。
ここではない、ここでは。
早くしなければ、セラミさんが本当にやられてしまう。
作戦が始まらないうちに、セラミさんも攻撃を受け続けている。
龍太もだ。
動きずらそうな龍太をセラミさんが片手間で守ってくれているから助かっているが、時間の問題だろう。
まだか、まだか。
焦りが現れ始める。
だが焦ってはいけない。
そもそも悟られてはいけないのだ。
僕がということを。
だから冷静に。
避けるので精いっぱいな演技をし続けろ。
焦っているのはふりだけ。
冷静沈着、ぶれずに観察しろ。
そうしなければ…。
来た…。
…レオンが僕の対角線上に来た。
『攻撃まで1秒』
全て揃った。
僕は目の前のテーブルに飛び乗った。
運動神経は悪い方だが、土壇場で迷いを無くせば飛べるものだな。
そして一秒。
まだ攻撃は来ない。
恐らく僕が上に飛び乗ったことで驚き、戸惑ったのだろう。
だが、攻撃はすぐ来るはずだ。
それこそまた一秒後に。
だから僕は、奴の位置へ、とにかく前へ行く。
さあこれで最後だ。
ここでが発動したらすべてが終わりだ。
発動条件が命の危機、つまり発動イコール死ぬような攻撃が来るって事。
それは僕の予測の間違いという事を現す。
逆に一秒。
この一秒間予測者が無ければ、成功だ。
さあ。
………。
ズドン
「がはっ!!」
鈍い音が僕の腹部から聞こえる。
攻撃を受けたのだ。
とてつもなく痛い。
息ができなくなる。
だからこそ僕は。
ーー思わずニヤリとしてしまった。
これは失敗何だが仕方ない。
全てがうまくいったのだから。
僕は逃げられる一瞬の隙も与えずナイフを振りかざす。
そして腹部の前にあるであろう奴の舌へ突き刺した。
「ぐぎゃああああああ!!」
奴の悲鳴が聞こえた。
そりゃそうだ。
舌には神経が集中している。
自分で少し噛んだだけでも痛いんだ。
ナイフなんか刺されたら激痛だろう。
しかも奴は舌で攻撃できるほどうまく操っている。
神経は人間以上だろう。
僕はナイフを引っ張るように抜く。
「がぁぁぁぁぁ!!」
血もぼたぼたと垂れてきた。
「はぁ…はぁ…」
やっと息ができるようになってきた。
それぐらい衝撃は半端なかった。
だが、成功した。
僕の予測だが、それはこの舌攻撃にはある法則があるのではということだ。
というのも無事の龍太と重症のセラミさんの違い。
それは何かと考えた時、なのではないかと仮説を立てた。
龍太が奴に攻撃を仕掛けた時、僕は奴の大体の位置は把握していた。
だから龍太にそこに攻撃しろと指示をした。
結果はすぐに逃げられ失敗した。
だがこの時、あまり離れられなかったとしたら。
距離をあまり取れないうちに龍太への攻撃チャンスがやってきたとしたら。
そこで奴は近いうちに攻撃。
結果比較的軽傷で済んだ。
セラミさんの場合は恐らくしっかりと攻撃していた。
一回一回を大切に、しっかりと仕留めるように攻撃していた。
その時奴は遠くにいたはずだ。
だって僕が避けられるぐらいだからな。
よって違いは距離だという事が分かった。
そして龍太とセラミさん。
近いのは龍太の方。
つまり、近ければ近いほどうまく威力が乗らないのだろう。
それは何故かというと、これも仮定だが奴の攻撃はしているのではないか。
舌を伸びてくうちにだんだんと速度を増していく。
速さは同時にパワーとなり、最終的にはコンクリートに穴を開けるほどになっていく。
だったらやるべきことは決まりだ。
奴が攻撃するタイミングに一気に近づき、あまり威力が出ないうちに当たる。
その行動に困惑し対処が間に合わないうちにナイフで一気に刺す。
「全て、予測通りだ…がふっ」
それでもきついのには変わりないがな。
「くそがぁ…」
奴の声が聞こえる。
まだ戦う気か。
まあそりゃちょっと舌ケガしたぐらいだからな。
やろうと思えばやれるだろう。
ちなみにさっきの作戦はもうゴメンだ。
一回で結構なダメージだ。
何回もはできない。
だがそもそもその必要が無い。
さっきと状況は違うのだから。
「うおおおおお!!」
「な!?」
奴はビックリしたのだろう。
そりゃ戦闘不能になったと思った龍太が、突然目の前で剣をふりかざしているのだからな。
「うおりゃあああ!!」
「ぐああああああ!?」
血がぶしゅっと出てきた。
奴は切られたのだろう。
「何故だ!?ぐあっ!?何故がぁ!?俺の位置ぐぁあ!?」
奴が喋ってる間も龍太は何度も切りつける。
それも奴が避けようとしても的確にだ。
「はっ!!そんだけ血を流してたらよぉ!!未来じゃなくても位置が分かるぜぇ!!」
そう、僕がつけた傷。
そこから垂れてくる血が丸見えなのだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
最後の一撃を放った時、奴は丸見えになって吹っ飛んだ。
「やっと拝めたな、てめえの姿」
龍太が倒れているレオンを見下ろす。
「てめぇ、カメレオンか」
そこには、顔がカメレオンの獣人がぴくぴくとなりながら倒れている姿があった。
「…ふー何とか勝てたようだね」
セラミさんが顔を青ざめながら、ほほ笑んで倒れた。
「セラミ!!」
龍太が駆け寄る。
仕方ない。
あの人は肩貫通で出血も多かった。
そんな中最後まで自分だけでなく僕たちまで守ってくれたんだ。
そりゃ倒れるさ。
「とりあえず医務室まで急ごう」
僕は龍太と一緒にセラミさんを担ぎに行く。
だが。
『後方より攻撃』
「なっ!?」
僕は咄嗟に右に跳んで避ける。
どういうことだ、後ろを見たら…驚いた。
奴が、レオンが立ち上がっていたのだ。
「まだだ…俺はまだ、死んじゃいねえええ!!」
ふらふらになりながらも僕たちに対し攻撃を仕掛けてきた。
「くそ…なんてタフなんだ」
「くそ、もう一回…」
龍太がセラミを床に置く。
そして瞬間移動で斬りかかる。
だが、奴は龍太の腹部を殴った。
一瞬で対応されたのだ。
「ガッ…!?」
龍太は膝をついてしまう。
「もう油断しねぇ…俺は四天王だ…」
くそ、これはまずい。
獣人族の本来の特徴。
それは能力がそこまで強くないのに対し、身体能力の高さにある。
奴の筋力はタウロスとか程ではなくても人間からしたら相当だ。
そのうえ、龍太の能力は対応されてしまった。
「また…あれをやるしかないか…?」
僕は自分の腹を抑えながら迷った。
「……大丈夫だよ…ミライ君…」
後ろからセラミさんの声が聞こえた。
「現在時刻は13:30…私達の…勝ちだ…」
「え?」
どういうことだ?
何故セラミさんは、この状況を時計見ただけで勝ちと…?
「この最強の能力者…あの人が気づくよ…」
最強の…能力者?
一体誰の…?
「はっ!!一体何を……ん?」
「…何だあれは?」
奴の下の地面が…膨れ上がっていた。
「な、なんだ…?」
不気味に思ったやつが離れようとした、そんな時だ。
その地面が一気に天井までまるで噴火のように跳ね上がる。
「ぐぁ!?」
奴は地面と天井に挟まれる。
つぶれるほどでは無かったが、恐らく何本の骨がいったであろう。
それぐらいにはつぶれていた。
「何だ!?何が起きている!?」
そして膨れ上がった地面はぱかっと割れる。
「な、な?」
成すすべも無く割れ目に落ちていく。
そして丸まって閉じ込めるように地面の割れ目が無くなる。
「何だよ一体!!??」
結果奴は、謎の地面に捕まり幽閉された。
「どういうことだ…?」
僕は困惑した。
龍太もポカーンと呆然している。
僕らには何が起きたか分からないのだ。
そんなことを思っているとき。
キーン
王の御言葉が聞こえてきた。
『すまなかったな、早めに気づけず』
「いえ…助かりました…」
セラミさんが言葉を返す。
まさか今のは…王が?
『とにかく医務室に急ぐぞ、そこの部屋からまず出るんだ』
「はい…」
セラミさんはふらふらと立ち上がり、ドアへ向かう。
僕と龍太は急いでセラミさんに肩を貸す。
「セラミさん、何とか、医務室まで遠いけどがんばってください」
医務室まではここから確か歩いて30分。
それも普通に歩いた状態でだ。
けが人3人、それも一人がふらふらな状態なら倍以上かかってもおかしくない。
だがセラミさんは
「大丈夫だよ…恐らく王が対処してくれた…」
そう言って余裕そうだった。
対処?
何か外出たら移動しやすくなっているのか?
そう思って部屋から出た。
「え?」
僕は少し固まった。
「マジかよ」
龍太も驚いていた。
そりゃそうだ。
部屋から出た僕らが最初に目についたものは。
「医務室…何故?」
遠くにあるはずの医務室だった。
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