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獣人族戦編
龍太の覚悟
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僕は油断していた。
今日の予定はそれぞれコンディションを整えるため自由行動のつもりだった。
それは皆そうだった。
疲労回復や武器の手入れもそうだが何よりも心の準備。
決戦というプレッシャーと命のやりとり。
それが何よりも必要になる。
そう思っていた。
だがそれは甘かった。
僕はそれを突然起きた爆発音で思い知らされる。
「何が起きた!?」
僕は自室で資料を再度読み直していた。
エレファンについて見逃している重大なものは無いかななどそんな確認だ。
だがけたたましくなった爆発音を確認するため僕は自室のベランダから外を見る。
「な…まさか…」
僕は今まで予測を外したことは多々ある。
だが大事な、重大な予測はあまり外してこなかったつもりだ。
だが、たった今、流石に外してしまった。
獣人族が、グランドヘヴンの門に穴を開けていた。
そしてそこから入ってくる。
「早すぎる…!?」
ふざけるな。
あっちだってしっかり調整しなきゃいけないはずだ。
それももう少し長い、短くて二週間ぐらいと考えていた。
それが今日だと?
しかもまだ明るい時間に…?
そんなことがあり得るのか?
いや、やられたものは仕方ない!
「王!!戦える奴らを外へ!!」
王に対し指示を出した。
これは早急な対応が求められる事態だ。
あんな迷路みたいな城を歩いている場合じゃない。
そんなことを考えていると部屋に新しい扉が出来ていた。
こっから出ろってことだな。
僕は部屋から小刀を持ち出し、外へ出た。
そこは王城の外へ続いていた。
どうやら普段は壁になっているところにできていた扉から出たらしい。
よく見ると周りの壁にも不自然な壁は何枚かあった。
次々に皆が出てくる。
「えーと来てないのは、獅童ぐらいか」
まあ獅童の能力上、この時間は何もできないから仕方ない。
「おいおい!もう街に入ってきてんじゃねーか!?」
街を見下ろしながら、龍太が驚く。
そうか、窓がこっち側じゃないから分からなかったのか。
それにしても。
「一体何人いるんだ、あいつら?」
予想では100人も行かないぐらいしか来ないと思っていたが、どう見てもそれ以上、いやそれどころか300はいそうだ。
「どういうことだ?まだあんなにいたのか?」
あんなにいたとしたらもっと出来ることが変わってたと思うが。
そんなに指揮官が無能なのか?
「あーこいつはやってくれたねー」
かりんが歯をギリっとさせた。
普段明るいこいつが珍しい。
「やってくれたっていうのは?」
「多分だけど、平民も一緒に攻め込んできてるよこれ」
「な!?」
そういうことか。
確かに多くの奴の武器が鍬とか農民が持っているものだ。
それに鎧を身に着けているものは少なく、本来兵士じゃないものが出ている証拠だろう。
ただ恐ろしいのは、例え兵士じゃなくても一般人を殺すことは可能な事。
数で押し切られればどんなに強くても危ういこと。
現に農民であろう兵士によって人間族の市民が殺されていく。
「本当いやになるねー、本職ならともかくさ」
珍しく怒ってると思ったらそういうことか。
皆は多分覚悟はしているんだ。
誰かを殺すということを。
でもそれは相手もこっちを殺そうと戦うものの話。
一般人と戦うというのはごめんなのだろう。
「…皆聞いてくれ」
ルインさんが皆に呼びかける。
「色々考えることはあるのだろうが、我らの目的は変わらない、この街を脅かすものを排除することだ」
ハッキリとそう言った。
分かり切っていることだが、大事な事だ。
誰かが言わなければ現実にならないのだから。
「でもー、一部は兵士じゃないんでしょ?そんなの…」
「その質問は恐らく無駄よ」
澪が言いかけたことに対して理恵が食い気味に反論する。
「あなたはそんな事本当にしなきゃいけないのと聞こうとしたのでしょうが、そうよ」
「っ!!」
「この街は放っておけば滅んでしまう、そしたら私達の居場所は無くなる」
理恵は淡々と理論的に話そうとしている。
だが顔色を見れば本音は嫌なのは伝わる。
「……」
澪は黙ってしまう。
澪だけじゃなく他の皆も。
そりゃそうだ。
理恵に、仲間にここまで言わせてしまったという罪悪感。
仲間意識は来たばっかの僕より強く感じている皆だからこそ思うのだろう。
現にうるさい龍太まで…龍太…。
「あれ…あいつは?」
ふと彼がいないことに気づく。
遠くの方を見てみる。
「あっ」
龍太を見つけた。
あいつはすでに戦いに参加していた。
瞬間移動であそこまで飛んだのだろう。
そして剣を振り回している。
そうだった…。
今は急がなきゃいけない事態。
こんなところで油を売っているわけにはいかない。
僕は気が付いたら動き出していた。
「うおおおおおお!!」
俺は剣を振り回し獣人族と戦う。
ちょっと聞いてたから分かる。
こいつらは農民だ。
本来命のやり取りをしていい相手じゃない。
それでも。
それでも俺は戦う。
俺は買出係だからよくこの街には降りてた。
魚屋のおっちゃん、肉屋の爺さん、八百屋のおばさん、鍛冶屋のおっさんにその奥さん、それに…。
上げだしたらキリが無いお世話になった人たち。
何も分からなく不安なこの世界で仲良くしてくれた人たち。
その人たちが今、こいつらの手によって殺されかけている。
だったら戦う。
守るために戦う。
これはもう居場所を守るための戦いじゃないんだ。
俺は瞬間移動で翻弄させながら武器を奪ったりして斬る。
この時無力化が速い相手は殺さないように気絶させる。
だが少しでも抵抗した場合は…。
取り返しのつかないことになる前に…。
俺はこの世界でそれを学んだ。
最初はRPGみたいでスゲーとか思ってた。
剣を振り回して襲い掛かる敵を倒せたらかっこいいだろうなと思っていた。
だが、敵が自分と同じ言語と分かったとき、罪悪感が強くなった。
何故だか知らないが自分との共通点を見つけると、命のやり取りに実感が湧いてしまう。
羽虫などには思わなかった感情。
それが芽生えるんだ。
だから俺は躊躇していた。
殺さないよう、襲い掛かってきた奴を懲らしめる程度にしとこうと。
だが、中にはそんなんじゃ納まらないやつもいた。
へこへこ謝りだして俺が後ろを向いた瞬間に再び襲い掛かる奴がいたんだ。
完全に油断していた俺は、多分本来はそこで死ぬはずだったのだろう。
だがそいつは凍り付いてくだけた。
目の前で突然だ。
何が起きたか分かる、理恵がやったんだ。
理恵は俺を助けるために、咄嗟にそいつを殺した。
あの時の理恵の顔が忘れられない。
あの時の理恵の仕草が忘れられない。
あの時の理恵の発言が忘れらない。
『…大丈夫?』
大丈夫じゃないやつにそう聞かれてしまった。
俺はあの日以来から躊躇を止めた。
理恵にあんなことをさせたくないから。
もう仲間を傷つけたくないから。
俺の手はすでにどす黒く汚れている。
例え、この後東京に戻れたって。
例え、ここでの罪がバレなかったとして。
例え、バレても仕方なかったと言われたとしても。
俺は二度とオリンピックには出れない。
そんな資格が無いやつに成り下がった。
失うものがもうないんだ。
だから俺は殺す。
敵は必ず殺しきる。
「ひぃぃぃ助けてくれぇぇぇ」
獣人の一人が鍬を捨てて命乞いをした。
だがそいつは右手を隠していた。
だからしっかりと斬った。
「うっぎゃあああああ!!」
倒れた時、そいつの右手には小刀があった。
本当にいやになる。
それにしても、何人いるんだ?
俺は後、何人と戦わなければならない。
俺は後、何人殺さなければならない。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
そんな悩みを吹っ飛ばすように俺は叫ぶ。
もう誰にも、こんなこと。
そんなことを思っている時だ。
「澪!!地面を触り、柔らかくしてくれ!!」
「分かったよ!!」
そんな声が聞こえた。
その後床はふにゃふにゃになり、全員立ちづらくなる。
「かりん!!そこの店のロープを使って捕獲だ!!」
「かりんちゃんだよ!!」
その後ロープが一人でに動き出し、立ちづらい獣人の周りをぐるぐる回りだした。
「な!?何だこれは!?」
「くっそ逃げようにも逃げられない」
そのまま成すすべなくぐるぐる巻きにされていく。
「き、貴様ら何者だ!?」
縛られてない獣人族が槍を持って迫ってくる。
「ごめんねー、でも」
ゆうきが槍の持ち手の一部をちくっと刺す。
するとその槍はそこでぽきっと折れて使い物にならなくなる。
「な!?何だこれは!?」
他にも氷漬けや毒の沼のようなものも出来ていた。
「…はは、やっぱ強いなー」
誰だか一発で分かる、俺の仲間だ。
あいつらがやってくれたんだ。
「よー龍太」
未来が俺に話しかけてくる。
「お前、これって?」
「ああ、お前らじゃ殺す一択でしんどいだろうと思ったよ」
未来は自分の頭を指さす。
「僕の予測があれば、殺さない手だってすぐに思いつく」
相変わらず嫌味な奴だ。
いちいちマウント取った言い方してくるし。
それに俺の覚悟まで結構あっさり踏みにじったことを言える。
…本当に嫌味で、頼もしいやつだ。
俺が出来なかったことをやってのけそうだ。
少し劣等感のようなものを感じてしまう。
「未来」
「なんだ?」
「お前はこっからどうするんだ?」
「手始めに二手に分かれるつもりだ」
「二手?」
「エレファン担当とホーク担当」
「どう分けるんだ?」
「ホークは空飛んでてやっかいな敵だ、ほとんど手出しできない」
まあそうだと言っていたな。
だが…。
「だが、龍太、お前の瞬間移動ならそれが可能なはずだ」
「未来…」
「そっちはお前に任せていいか?」
「…ああ任せろ!」
たった今劣等感を感じた相手に任せていいかと聞かれた。
それで熱くならないやつはいないだろう。
真の意味で、俺はたった今こいつと仲間になれた。
対等な存在になれた。
「ホークはまだ見当たらないが、どこかのタイミングで来るはずだ」
「OK!誰連れてっていい?」
「宮垣とルインさん以外なら誰でもいい」
「そうかい、じゃあゆうきとかりんちゃんで」
「理恵はいいのか?」
「理恵は大丈夫」
あいつはきっといい戦力になる。
理恵なら、お前らを任せられる。
「まあいいか、それじゃその分かれ方で行くぞ」
「おう!!」
見てろホーク。
俺達の結束の力。
とてつもなくつえーからな。
今日の予定はそれぞれコンディションを整えるため自由行動のつもりだった。
それは皆そうだった。
疲労回復や武器の手入れもそうだが何よりも心の準備。
決戦というプレッシャーと命のやりとり。
それが何よりも必要になる。
そう思っていた。
だがそれは甘かった。
僕はそれを突然起きた爆発音で思い知らされる。
「何が起きた!?」
僕は自室で資料を再度読み直していた。
エレファンについて見逃している重大なものは無いかななどそんな確認だ。
だがけたたましくなった爆発音を確認するため僕は自室のベランダから外を見る。
「な…まさか…」
僕は今まで予測を外したことは多々ある。
だが大事な、重大な予測はあまり外してこなかったつもりだ。
だが、たった今、流石に外してしまった。
獣人族が、グランドヘヴンの門に穴を開けていた。
そしてそこから入ってくる。
「早すぎる…!?」
ふざけるな。
あっちだってしっかり調整しなきゃいけないはずだ。
それももう少し長い、短くて二週間ぐらいと考えていた。
それが今日だと?
しかもまだ明るい時間に…?
そんなことがあり得るのか?
いや、やられたものは仕方ない!
「王!!戦える奴らを外へ!!」
王に対し指示を出した。
これは早急な対応が求められる事態だ。
あんな迷路みたいな城を歩いている場合じゃない。
そんなことを考えていると部屋に新しい扉が出来ていた。
こっから出ろってことだな。
僕は部屋から小刀を持ち出し、外へ出た。
そこは王城の外へ続いていた。
どうやら普段は壁になっているところにできていた扉から出たらしい。
よく見ると周りの壁にも不自然な壁は何枚かあった。
次々に皆が出てくる。
「えーと来てないのは、獅童ぐらいか」
まあ獅童の能力上、この時間は何もできないから仕方ない。
「おいおい!もう街に入ってきてんじゃねーか!?」
街を見下ろしながら、龍太が驚く。
そうか、窓がこっち側じゃないから分からなかったのか。
それにしても。
「一体何人いるんだ、あいつら?」
予想では100人も行かないぐらいしか来ないと思っていたが、どう見てもそれ以上、いやそれどころか300はいそうだ。
「どういうことだ?まだあんなにいたのか?」
あんなにいたとしたらもっと出来ることが変わってたと思うが。
そんなに指揮官が無能なのか?
「あーこいつはやってくれたねー」
かりんが歯をギリっとさせた。
普段明るいこいつが珍しい。
「やってくれたっていうのは?」
「多分だけど、平民も一緒に攻め込んできてるよこれ」
「な!?」
そういうことか。
確かに多くの奴の武器が鍬とか農民が持っているものだ。
それに鎧を身に着けているものは少なく、本来兵士じゃないものが出ている証拠だろう。
ただ恐ろしいのは、例え兵士じゃなくても一般人を殺すことは可能な事。
数で押し切られればどんなに強くても危ういこと。
現に農民であろう兵士によって人間族の市民が殺されていく。
「本当いやになるねー、本職ならともかくさ」
珍しく怒ってると思ったらそういうことか。
皆は多分覚悟はしているんだ。
誰かを殺すということを。
でもそれは相手もこっちを殺そうと戦うものの話。
一般人と戦うというのはごめんなのだろう。
「…皆聞いてくれ」
ルインさんが皆に呼びかける。
「色々考えることはあるのだろうが、我らの目的は変わらない、この街を脅かすものを排除することだ」
ハッキリとそう言った。
分かり切っていることだが、大事な事だ。
誰かが言わなければ現実にならないのだから。
「でもー、一部は兵士じゃないんでしょ?そんなの…」
「その質問は恐らく無駄よ」
澪が言いかけたことに対して理恵が食い気味に反論する。
「あなたはそんな事本当にしなきゃいけないのと聞こうとしたのでしょうが、そうよ」
「っ!!」
「この街は放っておけば滅んでしまう、そしたら私達の居場所は無くなる」
理恵は淡々と理論的に話そうとしている。
だが顔色を見れば本音は嫌なのは伝わる。
「……」
澪は黙ってしまう。
澪だけじゃなく他の皆も。
そりゃそうだ。
理恵に、仲間にここまで言わせてしまったという罪悪感。
仲間意識は来たばっかの僕より強く感じている皆だからこそ思うのだろう。
現にうるさい龍太まで…龍太…。
「あれ…あいつは?」
ふと彼がいないことに気づく。
遠くの方を見てみる。
「あっ」
龍太を見つけた。
あいつはすでに戦いに参加していた。
瞬間移動であそこまで飛んだのだろう。
そして剣を振り回している。
そうだった…。
今は急がなきゃいけない事態。
こんなところで油を売っているわけにはいかない。
僕は気が付いたら動き出していた。
「うおおおおおお!!」
俺は剣を振り回し獣人族と戦う。
ちょっと聞いてたから分かる。
こいつらは農民だ。
本来命のやり取りをしていい相手じゃない。
それでも。
それでも俺は戦う。
俺は買出係だからよくこの街には降りてた。
魚屋のおっちゃん、肉屋の爺さん、八百屋のおばさん、鍛冶屋のおっさんにその奥さん、それに…。
上げだしたらキリが無いお世話になった人たち。
何も分からなく不安なこの世界で仲良くしてくれた人たち。
その人たちが今、こいつらの手によって殺されかけている。
だったら戦う。
守るために戦う。
これはもう居場所を守るための戦いじゃないんだ。
俺は瞬間移動で翻弄させながら武器を奪ったりして斬る。
この時無力化が速い相手は殺さないように気絶させる。
だが少しでも抵抗した場合は…。
取り返しのつかないことになる前に…。
俺はこの世界でそれを学んだ。
最初はRPGみたいでスゲーとか思ってた。
剣を振り回して襲い掛かる敵を倒せたらかっこいいだろうなと思っていた。
だが、敵が自分と同じ言語と分かったとき、罪悪感が強くなった。
何故だか知らないが自分との共通点を見つけると、命のやり取りに実感が湧いてしまう。
羽虫などには思わなかった感情。
それが芽生えるんだ。
だから俺は躊躇していた。
殺さないよう、襲い掛かってきた奴を懲らしめる程度にしとこうと。
だが、中にはそんなんじゃ納まらないやつもいた。
へこへこ謝りだして俺が後ろを向いた瞬間に再び襲い掛かる奴がいたんだ。
完全に油断していた俺は、多分本来はそこで死ぬはずだったのだろう。
だがそいつは凍り付いてくだけた。
目の前で突然だ。
何が起きたか分かる、理恵がやったんだ。
理恵は俺を助けるために、咄嗟にそいつを殺した。
あの時の理恵の顔が忘れられない。
あの時の理恵の仕草が忘れられない。
あの時の理恵の発言が忘れらない。
『…大丈夫?』
大丈夫じゃないやつにそう聞かれてしまった。
俺はあの日以来から躊躇を止めた。
理恵にあんなことをさせたくないから。
もう仲間を傷つけたくないから。
俺の手はすでにどす黒く汚れている。
例え、この後東京に戻れたって。
例え、ここでの罪がバレなかったとして。
例え、バレても仕方なかったと言われたとしても。
俺は二度とオリンピックには出れない。
そんな資格が無いやつに成り下がった。
失うものがもうないんだ。
だから俺は殺す。
敵は必ず殺しきる。
「ひぃぃぃ助けてくれぇぇぇ」
獣人の一人が鍬を捨てて命乞いをした。
だがそいつは右手を隠していた。
だからしっかりと斬った。
「うっぎゃあああああ!!」
倒れた時、そいつの右手には小刀があった。
本当にいやになる。
それにしても、何人いるんだ?
俺は後、何人と戦わなければならない。
俺は後、何人殺さなければならない。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
そんな悩みを吹っ飛ばすように俺は叫ぶ。
もう誰にも、こんなこと。
そんなことを思っている時だ。
「澪!!地面を触り、柔らかくしてくれ!!」
「分かったよ!!」
そんな声が聞こえた。
その後床はふにゃふにゃになり、全員立ちづらくなる。
「かりん!!そこの店のロープを使って捕獲だ!!」
「かりんちゃんだよ!!」
その後ロープが一人でに動き出し、立ちづらい獣人の周りをぐるぐる回りだした。
「な!?何だこれは!?」
「くっそ逃げようにも逃げられない」
そのまま成すすべなくぐるぐる巻きにされていく。
「き、貴様ら何者だ!?」
縛られてない獣人族が槍を持って迫ってくる。
「ごめんねー、でも」
ゆうきが槍の持ち手の一部をちくっと刺す。
するとその槍はそこでぽきっと折れて使い物にならなくなる。
「な!?何だこれは!?」
他にも氷漬けや毒の沼のようなものも出来ていた。
「…はは、やっぱ強いなー」
誰だか一発で分かる、俺の仲間だ。
あいつらがやってくれたんだ。
「よー龍太」
未来が俺に話しかけてくる。
「お前、これって?」
「ああ、お前らじゃ殺す一択でしんどいだろうと思ったよ」
未来は自分の頭を指さす。
「僕の予測があれば、殺さない手だってすぐに思いつく」
相変わらず嫌味な奴だ。
いちいちマウント取った言い方してくるし。
それに俺の覚悟まで結構あっさり踏みにじったことを言える。
…本当に嫌味で、頼もしいやつだ。
俺が出来なかったことをやってのけそうだ。
少し劣等感のようなものを感じてしまう。
「未来」
「なんだ?」
「お前はこっからどうするんだ?」
「手始めに二手に分かれるつもりだ」
「二手?」
「エレファン担当とホーク担当」
「どう分けるんだ?」
「ホークは空飛んでてやっかいな敵だ、ほとんど手出しできない」
まあそうだと言っていたな。
だが…。
「だが、龍太、お前の瞬間移動ならそれが可能なはずだ」
「未来…」
「そっちはお前に任せていいか?」
「…ああ任せろ!」
たった今劣等感を感じた相手に任せていいかと聞かれた。
それで熱くならないやつはいないだろう。
真の意味で、俺はたった今こいつと仲間になれた。
対等な存在になれた。
「ホークはまだ見当たらないが、どこかのタイミングで来るはずだ」
「OK!誰連れてっていい?」
「宮垣とルインさん以外なら誰でもいい」
「そうかい、じゃあゆうきとかりんちゃんで」
「理恵はいいのか?」
「理恵は大丈夫」
あいつはきっといい戦力になる。
理恵なら、お前らを任せられる。
「まあいいか、それじゃその分かれ方で行くぞ」
「おう!!」
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俺達の結束の力。
とてつもなくつえーからな。
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