予測者~Prophet~

高ちゃん

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獣人族戦編

飛空狩人ホーク①

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「あ、いや、火を消せるという事は分かってたよ」
今更と言う言葉に対し、言い訳の様なことを言った。
現在澪は柱を上っていて、俺はそれをワープしながら追っている。
「ただ自分を守るためのものだと思っていたって話だ」
そう、そこまでは察しの悪い俺でも分かったさ。
「まあそれも間違ってないんだけどねー…っと」
柱の頂上にたどり着く。
澪は手を膜にかけて飛び上る。
「うおっ」
俺も上の世界をやっと見ることができた。
落ちてくる火を氷の膜が何とか守っている。
だが少しずつ溶けている。
というのも水っぽい部分があったり、月のクレーターのようにへこんでいる部分があったりしたから分かった。
「よーし間に合ったー」
澪はその光景を見たと同時に氷の上を滑りだす。
真っすぐにへこんでいる部分に向かっていた。
途中、何度か火に当たっていたが全て水の鎧ウォーターアーマーが防いでいた。
「さーて到着ー」
澪はへこんだ部分にたどり着くと、鎧の一部をちぎる。
そしてそれを手放す。
手放した瞬間、それは普通の水になりへこんだ部分に注がれていく。
そう、俺が気づいたのはこれだ。
氷の膜がいくら強かろうとあの火は防ぎきれないだろう。
というのも広さはすごいものだが、厚さはそうでもない。
ちょっとは耐えれるだろうが、少しずつ溶けてしまうものだ。
それを澪が水を使い、補強及びガードする役目を担っていた。
それは水の鎧ウォーターアーマーの能力で火の大群を防げる澪にしかできないことだ。
今この状況、澪にこの役目が与えられるのは何ら不思議じゃない。
だが未来、お前ここまで読んでいたのか?
ここまで読み切れるほどの考察要素が今までにあったか?
何か色々奇跡的な事も起こっているような気がするが。
「っと、そんな事考えている場合じゃないな」
俺もやれることをやらなければ。
何をすべきか。
それはもう分かり切っている。
俺は火の大群の、火を落としきったやつを見る。
見たらもう完了だ。
既にそこにワープしている。
後はそいつを斬っていくだけだ。
数は多いが一体一体小さくて弱いやつ。
こんなのは簡単だ。
さっきまでは火の対処に困っていたから焦っていたが。
仲間が頑張ってくれたこの状況。
正直楽勝だ。
ちび共が俺に向かってくる。
ぺしぺしとちょっとした感触はある。
だが猫パンチ程度のものでしかない。
「いくぜぇぇぇぇ!!」
一気に方をつけてやる。
そのつもりだった。
そう思い、一体の方に剣を振りかざす瞬間だ。
ちび共がそいつに集まりだす。
そしてどんどん大きくなっていく。
鷹の顔。
筋肉隆々の体。
ホークその人になっていった。
俺はそのまま剣を振りかざす。
「…ふー」
「っ!!」
だがその剣は途中で止まってしまう。
片手で受け止められてしまった。
力で押し切ろうにも全く動かない。
「やってくれたねー人間さん!」
ヤバい!
俺は咄嗟の判断でそいつの後ろにワープする。
何か嫌な予感がしたんだ。
これから来るものはとんでもないものだと。
「…あっれー?」
俺がさっきまでいた位置を見る。
するとホークは俺の事を殴っていたらしい。
拳が伸びていた。
何だ…さっき感じたのは殴られる程度のものなのか…?
「ん?おぉ後ろか」
ホークはキョロっと後ろを振り向いて俺の事を見つけたらしい。
目がしっかりと合った。
「なるほどね、どうやって浮いているんだろうと思ったよ」
「?…何の話だ?」
「俺は君の能力が浮遊なのかなと思っていたけど…多分瞬間移動か」
「な!?」
もうバレたのか。
あまりにも早すぎる。
「正確には浮いているのではなく、今の位置にずっと瞬間移動し続けてその場に留まっている、違うかなー?」
応用法までバレている!?
「…はは、それはどうかな…?」
だが俺はバレてないふりをしてやる。
未来が言っていた。
情報は出来る限り出さないようにするべきだと。
もしバレそうになってもハッタリの可能性がある間は隠し通せと。
だからポーカーフェイスをかましてやるんだ。
「ははっ君の表情を見ると、正解のようだね」
俺の表情を見て確信された。
わりぃ未来、お前の戦い方は無理みたいだ。
「まあいい、分かったところでどうすんだ!」
バレたなら仕方ない。
俺は逆にガンガン使ってやることにした。
それも多方向にかく乱するように飛び回る。
「おぉ!その使い方を見るに回数制限みたいなのはないみたいだねー」
ホークはキョロキョロと見渡す。
この状況でも冷静に見てるだけか。
それは悠長だぜ。
俺は空を斬りつけるように剣を振り出す。
そして剣を振り切る瞬間に。
奴の後ろにワープ!
その時剣を振るモーションは止まっていない。
そのまま斬りつけられるんだ!
「やっべ」
ホークが一瞬焦っていたがもう遅い。
その時には既に。
俺は背中を斬りつけた。
「いっつぁぁ!」
ホークは急いで俺から距離をとるように飛んでいった。
「…あれ?」
俺は今背中を斬った。
おかしいな。
油断した隙に倒せるように一刀両断のつもりでやったのに。
「あっぶねぇ!ギリギリ気づけたぁ!」
気づけた…まさか読まれた?
俺の瞬間移動能力から何をするかに気づき、ギリギリで避けたっていうのか?
今までそんな相手と戦ったことなんて…。
やはり四天王と呼ばれているだけの事があるんだな。
俺は気を引き締めた。
「さーてと、今のチャンス逃したのは大失敗だぜ人間!」
「何だと」
「もう俺はあんたに勝つ方法を見つけたからな!」
ホークが俺をどや顔で指さす。
勝つ方法を見つけた?
俺の能力の法則を見つけたか?
いやでもそれは無理だ。
俺の能力は目に見えるところならどこにでも飛べる。
だから壁に閉じ込めてしまえば封じることはできる。
でもここは壁も何もない空だ。
だったら俺の能力は全力全開で発動できる。
「はっ!やれるものならやってみろ!!」
もう一度ワープを何度も行い、かく乱する。
これを止めることは不可能なはず…。
そんな時だ。
「がっ…!?」
俺の脇腹に重い感触があった。
一体何が…?
横をちらっと見ると、ホークがそこにいた。
ホークが俺の脇腹に膝で攻撃していた。
馬鹿な、ホークはそこにいるはず…。
目を離した覚えはないぞ。
ていうかやばい。
段々脳が自分に起きたことに気づき始めた。
脇腹がとんでもなく、痛い。
息ができない。
俺は瞬間移動を忘れてしまい落ちていた。
だがホークの追撃は止まらない。
落ちている俺を思い切り殴りつけた。
「ぼはっ!?」
俺は空を横に吹っ飛んでいた。
どこまでも飛んで行ってしまう。
俺は意識を何とか保ち、氷の膜の方をちらっと見る。
そっちにワープしていった。
「がはっ!?」
やっと床のある所にたどり着き、安心したように倒れこむ。
少しずつ息が戻っていた。
「くっそ、何で、こんなことに」
ワープするとき、俺はちゃんとホークの事は見ていた。
目を離した隙になんてそんな油断はしてない。
なのに、何故?
俺は上を見上げる。
「な!?」
そこで何が起きたか分かってしまう。
「「よー!どうだい、俺の能力は」」
そうだった。
こいつは分身ができるんだ。
現在ホークは何体もいた。
えーと…16体そこにはいた。
「そうか、分身をいろんなところに配置していたのか…」
こいつは元々多くの分身体になっていた。
そうやって火の大群を作っていたのだから。
そして一体大きくなっていたからてっきりそれで全部なのかと思っていたが。
まだあまりがあったのだろう。
そいつが密かに合体していたんだ。
「…でもおかしくないか」
こいつの能力は確か分身できるがその度に力が1/2になっていくというもの。
「何で16体にもなってそんなに…」
「強いのかって?」
俺のいう事を読まれていた。
「俺がさっき何体になっていたか知っているか?」
「さっき…」
それはきっと火の大群、あのちびだった時の事だろう。
「えっと…50体ぐらいか?」
「ぶっぶーまあ小さすぎて分からんよな、答えは64体だ」
64体…そんなに離れていたなかったのか。
「ここでちょっとお勉強だ、元々の一人が二人に分裂、その二人がそれぞれ分裂ていうのを繰り返したら何回で64になるでしょう?」
「え…あ、えと」
算数は苦手なんだよ…。
えーと1が2になって、2が4で、4が8で……。
「7だ!」
「ぶっぶー答えは6回だ」
腕で×を作られた。
「俺は6回も分裂していたんだあんときは」
「それがどうした!?」
俺が暗算で苦しんでいただけじゃないか!
「まあ聞け、分裂すると俺の力はその度に半分になるんだが」
それは知っている。
「つまり俺の攻撃力は半分の半分の半分の半分の半分の半分ってわけだ」
ということは相当弱かったわけだ。
どおりでさっきは猫パンチ程度のものしか…ものしか…。
「…あ」
こいつが何を言いたいか気づいた。
「逆に言えば俺の力はあのときの倍の倍の倍の倍の倍の倍なわけなんだが…どうだい?」
さっきの嫌な予感の正体が今になって分かった。
あんときはただのパンチだと思っていたが、とんでもない。
あの一撃で、俺は死んでいた。
こいつ、とんでもない攻撃力を持っている…。
「はっはっは、何でこんな話したか分かるか?」
確かに…こんなことを教える理由が無い。
一体なぜ?
「今の表情を見るためだよ」
俺の顔をじっくり見てきた。
もしかして顔に出ちゃってるのか。
この恐怖が…。
想像できないものに対する恐怖が…。
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