隘路

橘華 玲慧

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一変する日

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俺の母親は話をちゃんと聞いてくれる。
だけど、こっちの話もろくに聞かないで、一方的に決めつけてくる人は嫌いだ。

昨日のあの先生達だって、俺の話は聞かずに年下を殴ったからと言ってずっと責め立ててきた。
確かに暴力はいけない。だけどそれを使うということは、それ相応の動機があるんだ。ということを考えない。それで、年齢の話ばっかりして叱り続ける。

正直死んでほしいけど、そう思ってても仕方ない。殺すわけにはいかないんだからな。

俺はいつものように家を出て学校へ向かった。

そもそも、俺は子供っぽい奴が嫌いなんだ。
だから学校に行くときや帰るとき、たまに見かける変な事ばっかやってる年下に対して周りが迷惑そうにしてる光景を目にすると、思わず大声で叱ってやりたくなる。

でもそうしない。関わるのがめんどくさいから。
どうせ俺が怒られるんだし、変に決めつけられて怒られるくらいだったらほっといておく。

俺も、もっと大きくなったら今の自分を醜く感じるようになるんだろうな。

学校に着き、支援学級ではなく通常クラスの教室に向かう。そして自分のクラスに足を踏み入れる。
しかし、今日のクラスは雰囲気がおかしい。
いつも通り会話は聞こえてくるし、風景が変わったわけでもないのに、どことなく湿っぽい、嫌な感じだ。

悠斗「よう、おはよう」

「おはよう…」

悠斗「なんか、今日変じゃない?」

「そ、そうか?」

悠斗「うん、ちょっと暗い気がする」

「俺はそう思わないけどな…」

悠斗「…」

やはり変だ。
他にも話しかけようとしたが、みんなそそくさと何かを始めたり、人と話している。
そういえば、誰も目を合わしてくれない気がする。
モヤモヤが残るなか、俺は自分の席に座った。

「それじゃあ、隣の人と話し合ってみよう」

授業中、先生の指示でペアワークする事がある。
今日もあって、それが今だ。

悠斗「全部分かった?」

「…まあ、うん」

悠斗「分かんないとこあるなら言って、教えるよ」

「…ありがとう」

悠斗「…?」

いつもなら積極的に進めれるはずのペアワークも、やはりぎこちない。
目を合わせようとしないで、プリントを見ながら返事を返している。
それに、出来れば話したくなさそうな返事の仕方だ。


「はい、さようなら」

「「「さようなら」」」


今日はずっと暗かった。
いつの間にか誰かに話しかける気も失くなって、気まずい感じもし始めて、とにかくずっと早く帰りたかった。

でももう帰れる。
なんとなく気まずいから今日は一人で帰ろう…
昇降口まで歩いて、靴に履き替えようとした時に違和感を感じた。
ランドセルを降ろして、中身を確認すると水筒が入ってない。
教室に忘れてきたようだ。俺は教室に戻って水筒をとりに行こうとした。

「~~でさ~…」

教室の方から何やら話し声が聞こえてくる。
まだざわめきが残る廊下で、その声がする方へゆっくりと向かう。
近付くにつれて、徐々にハッキリと会話の内容が聞こえてきた。

「ていうかさ、昨日ね」

「なになに?」

「ウチ保健室行ってた時あったじゃん?」

「あったあった」

いつもなら何も気にしないで通るんだけど、今日はできなかった。

「それで教室に戻るとき~、支援学級の方からめっちゃ泣き声と怒ってる声聞こえてきて~」

「えぇ~なにそれ」

「なんか、ちょっとだけ聞こえたんだけど、悠斗君がその泣いてる子殴ったみたいな、感じのが聞こえてさ~」

「あ~だから今日のみんな変だったんだ」

「そっか途中から来たから…」

どうやら、昨日のあの場面を耳にしたようだ。
そんな話をしてる以上、俺は通り辛くて仕方ない。
少し考えたが、やっぱりダメだ。
はぁ…もう水筒は諦めよう。また明日持って帰ればいいか。

結局、俺は昇降口に戻って帰ろうとした。
視線を下にやると俺は、ん?と思った。

さっき下駄箱から出して、履き替えてる途中で気付いたから、ここに俺の靴が置いたままになってるはずなんだけど、無い。

誰かが蹴ってしまって、見えないとこにいったのかと思って周りを見てみたが、やはり無い。

いや、親切な誰かが下駄箱に戻しておいてくれたのかもしれない。そう思って自分の下駄箱を確認するけど、ここにも無い。

あれ?俺の靴はどこにいった?
もっと周りを見て回ったけど無い。
いくら探しても見つからなくて、どうしようかと悩んで、ふと癖で視線を上にやったら、何か見えた。

掃除用具入れの上に、黒い何かが見える。
近付いてみると、それは靴だった。しかも見覚えのある。
手を伸ばしてとってみると、それは俺の靴だった。

なんでこんな所に?
置いてある場所が意味分かんない。
少しホコリが付いてるのを手で払って、そのまま履いて帰ろうとした。

その時、後ろからガタッと何かが揺れる音がした。
後ろを振り向いてみるが、誰もいないし何も起きてない。


俺は密かに外から昇降口の後ろに回り込んで、音のした場所らへんに行こうとした。

すると、人の声がした。

「どう、もういない?」

「帰ったっぽい」

「よし、出るか」

小声で話していて、角から少し覗いてみると、昇降口の後ろにある窓にクラスメイトが二人いた。

「はーやっとか」

「めっちゃ探してたなw」

「でもずっと真顔だからあんま面白くなかったな」

「次どうする?上履き?」

「でも先生にチクられたらやばいよ」

話ながらこっちへ向かってくる。
俺は足音を立てないように後退りして、さっき出てきた昇降口のとこよりさらに奥へ行き、柱に身を隠した。

少ししてあの二人が見えると、一旦昇降口に入ってから出てきて、そのまま帰っていった。

俺は下駄箱まで行って上履きのあるとこをみてみると、無かった。

はぁ…
すぐ出てきたし、どうせその辺にある。
少し探して、今度は掃除用具入れの中にあった。
ホコリを払って下駄箱に戻さずに、ランドセルに入れて持って帰ることにした。

これは…完全にいじめられているな。
それもおそらく、俺があいつを殴ったから。
はぁ。どっちが最初に始めたのかも分かってないくせに、やっぱり嫌いだ。
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