ヒキアズ創作BL短編集

ヒキアズ

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51~60

(59)腹話術師とヒモ少年

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テレビで人気の腹話術師、望月とびらは、ある日ひったくりに鞄を取られる。それを助けてくれたヒモ少年に、泊めて欲しいと迫られて……。

ヒモ少年×コミュ障腹話術師(+ウサギ)

流されやすい受けに付け込んで利用して裏切るんだけど、絆されちゃってる攻めが好きです。

望月 とびら(もちづき とびら)
トラウマ持ちのコミュ障青年。パペットだけが友達。
ネーミングは、餅つき・ラビット。

桜花 ふるう(おうか ふるう)
打算癒し系少年。実家は捨てた。
ネーミングは、狼・ウルフ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『あっ。望月ラビットじゃん!』『あっ。ほんとだ~!』
「!」
 人が溢れる街中。甲高い女の子の声に心臓が跳ねる。
 まさか、バレて……?
 恐る恐る声のした方に振り返る。が。
『黙れェ、下民どもめェ! ラビット様のお通りだァ!』
『きゃ~。かわい~』『てかウケる~!』
 モニターから聞こえてくる自分の声。それを見て、きゃっきゃと騒ぐ女子高生。
 なんだ。テレビか……。
 自分の正体が暴かれたわけでないと知り、胸を撫で下ろす。
「ちょっと有名になり過ぎだよなぁ……」

 僕こと望月 とびらは、絶賛活躍中の腹話術師『望月ラビット』だ。最近になってテレビの露出が増え、あっという間に有名人に成り上がってしまった。ウサギのお面を被りながら、毒舌ウサギのパペットを操るその姿がお茶の間の人気を博したらしく。お陰様で今までの借金や年金もすっかり払えてしまった。まぁ、なんていうか運が良かったんだと思う。このまま調子よくテレビに出続けることは難しいかもしれないが、せめて今の時期はできる限り頑張ろうと思っていた。思っていたのだが。
「疲れるんだよなぁ……」
 ウサギのお面を被っているとはいえ、パペットがメインだとはいえ、テレビに自分の姿が映ることへのストレスと、多忙なスケジュールのせいで、心身ともに疲弊していた僕は、一日だけ休暇を取ることにした。体を壊してしまっては元も子もない。
「とにかく、明日は休みなんだ。早く帰って、寝よう……」
 口の中でぼそぼそと呟き、足を速める。周りにいるのは人人人。皆が自分を見て笑っているような気がした。大衆の中に紛れたとしても、僕はとにかく異質なような気がした。典型的な対人恐怖症。それが人気を博した腹話術師の正体だった。
 こんな自分、世間に知られるわけにはいかない。そう思って、本番以外でも全てウサギに喋らせていた。周りはプロ意識なんだろうと思っているみたいだが、実際は自分で話すのが怖いだけだった。
「いつまで続くだろうか。もう少しだけ、稼いでおきたいよなぁ……」
 ぼんやりと地面を見つめながら、横断歩道を渡っていると……。
 どんっ。
「えっ?」
 マスクとサングラスをした男が、僕に向かって思いきりぶつかる。そして、尻餅をついた僕の手から鞄を奪い取ると、男は素早く走り去る。
 ひったくりだ……!
 そう気づいたときには、既に男の姿は遠く、運動不足の僕では追いつけない。
「どうしよ……」
 明日、まともな家具や家電を買いに行く予定だった僕は、おろしたばかりの金を持ち歩いていた。それが、まさかこんなことになるなんて……。いや、百歩譲ってそれはいい。金はまた稼げばいい。でも、あの鞄の中には、唯一無二の相棒であるウサギが入っていて……。
「そんな顔しないでください。俺が取り返しますから」
「へ?」
 横断歩道の真ん中で座り込んだままの僕の肩に手を置いた少年が、きりりとした表情で頼もしい台詞を吐く。
 誰……?
 呆然としていると、彼はすぐにひったくり目掛けて走り出す。その速いこと。僕は人があんなに速く走れるなんて思いもしなかった。あっという間に追いついた彼は、ひったくりを取っ捕まえて鞄を奪い返した。
「すごい……」
 ようやく立ち上がり、横断歩道から退いた僕は、テレビで見た狼を思い出していた。きっとウサギなんか簡単に殺されてしまうのだろうな……。
「はい。取り返しましたよ」
「……!」
 どうでもいいことを考えている間に、少年が僕の目の前に鞄を掲げる。
 驚きながらも僕はそれを無言で受け取ると、即座に彼に背を向ける。
 逃げなきゃ……。
 どうしてかそう思った。お礼を言わなきゃいけないシーンで、この対応はさすがに無い。でも、怖いものは怖い。そもそも、ウサギを使わないと僕はまともに話せないし……。
「あ、待ってください。今、警察呼んでもらったんで。事情聴取とか……」
 そんなもの、受けたら絶対週刊誌に載ってしまう! 僕が悪くないにしても、こんなことで話題になるのは御免だ。
 彼の手を振り解こうとするが、彼の瞳がまじまじと僕の顔を見ていることに気づいてビビる。
 ひっ……。なんだコイツ……。放してほしい……。なんか、ほんと怖い……。
「てか。もしかしなくても望月ラビットですよね?」
「……!」
 どうして。何故。見知らぬ少年が、どうして僕のことを知ってるんだ? 僕の素顔を知る者は数えるほどしかいない。それなのに……。
「俺、わかっちゃうんですよね。望月さんの大ファンなんで! 体型と声が完全に一致っていうか!」
 体型って。いつもスーツ着てるし、そんな曖昧なものでわかるのかよ。それに、声って。僕はここに来てほぼ言葉を発していないんだが……?
 得体の知れない恐怖を感じて、無意識に一歩下がる。
「あ、怖がらないでくださいよ。俺、ほんとに怪しいモンじゃなくて、アンタを助けたくて」
「ひ……!」
 下がった分より更に距離を詰められて、慌てた僕は鞄を取り落とす。
「あ~。大丈夫ですか? ってこれ。やっぱり! ラビットさんじゃないですか!」
「ッ!」
 鞄の中からはみ出したウサギのパペット。それを彼が興奮気味に拾って観察する。
 もう駄目だ……。誤魔化すのはきっと無理だ。
「俺、すっごいファンで! 望月さん! ああ! 是非サインを……!」
 限界だった。人の集まるこの場所でこれほど騒がれては、いつ周りにバレるかもわからない。その恐怖も手伝って、僕は気づくと、彼の手からパペットを奪い取っていた。
『黙れ小僧ゥ! オレは目立ちたくないんだヨ! 察しろ馬鹿がァ!』
「あ、そうですよね……! わっかりました! 今すぐ離脱しましょう!」
「えっ」

「ってことで。この公園なら大丈夫かと」
 少年に引っ張って連れてこられた公園は、人気のない寂れた場所だった。閑静な住宅街にひっそりと佇む小さな憩いの場は、まるで遊ばれた形跡がなく、砂場も整ったままだった。
「は……、はぁ……」
「あれ、もしかして今ので息切れですか?」
『黙れと言っただろうがこのアホ餓鬼!』
「わ~。ほんとにラビットさんだ~! すごい……。あ、申し遅れました! 俺は桜花 ふるうって言います! 職業はヒモです! さっきも言ったけど、俺、望月ラビットさんの大ファンで……!」
『助けてくれたことには礼を言うが、オレはお前のことなど知ったこっちゃない!』
「そんな~!」
 職業ヒモだと堂々と言った彼は、確かにヒモとして生きていけそうな顔面をしている。きっと僕もこんなイケメンだったら、ウサギのお面なんか被らなくてもテレビに出る勇気が湧くんだろうなぁ……。いや、やっぱり僕の陰気な性格じゃ無理か。
 首を振るい、取り止めもない思考を飛ばす。明日は待ちに待った休みの日。こんなことをしている場合ではないのだ!
『そんじゃあな! ヒモ小僧!』
 少年の手を振りほどき、パペットを高く掲げて別れを告げる。こんだけファンサービス(?)をしてやったんだ。きっと彼も満足したはず……。
「待ってください!」
 かしゃり。
 え? 今、コイツ何した……?
 軽快なシャッター音に、思わず冷や汗を掻く。その発生源は少年が翳しているスマートフォン。
『貴様……、何して……!』
「あの。非常に申し上げにくいんですけど……。俺、彼女と別れたばっかで……。今日、泊まるとこがなくてですね……」
『何が言いたい?』
「つまりその~。これも何かのご縁なんで、俺を一晩泊めてください!」
『ハァ?!』
 勢いよく頭を下げる彼の図々しさに度肝を抜かれる。普通、初対面の男にそんなこと頼むか……?
「俺、財布とか全部、彼女の部屋に置いたまま追い出されちゃって……。どうしようかなって思ってたんです。銀行の前で、誰か俺に恵んでくれそうな女の子を探してたんです。けど、俺と同じく、ずっとその場を動かない男がいて」
『なんだそれ』
「最初は、俺と同じ目的の人かなって思って見てたんですけど。ところがどっこいその男、ニヤニヤしながら追いかけて行ったのは、色白くてひょろ長い不健康そうな陰キャ青年じゃないですか。こりゃあおかしいぞって思って」
『待て、貴様。お前が言う陰キャ青年って、まさか』
「はい。望月ラビットさんですね! いや~。俺も最初はまさかって思ったんですけど、あまりにも体型が似すぎてて。思わず追いかけちゃいました!」
『狂ってやがる……。じゃなくて。つまり、相棒を追いかけてた男ってのは』
「はい。さっきのひったくりです! 恐らく、望月さんみたいにチョロそうな人から金を奪うために張ってたんでしょうね!」
「チ……」『チョロいとか言うな!』
「ま、そういうことなんで。泊めてください!」
『なんでそうなる!』
「まさか望月さん、俺を見捨てる気ですか……?! 俺は体を張って貴方を助けたのに?!」
「う……」『当たり前だ! オレは芸能人なんだぞ?! お前のような一般人に構ってる暇など……』
「そうですよね。芸能人は忙しいですよね……。わかりました。それじゃあ俺は大人しく、この写真をSNSに上げて思い出に浸りますね」
「は……?」『待て待て待て! お前、それは脅してんのか?』
 画面に映っているのは、夕日を背にパペットを掲げる冴えない男。
「脅しだなんて人聞きの悪い。でも、俺としても明日が掛かってるもんで」
『こんなことするよりも、お前だったら女の子引っ掛けた方が早いだろうが』
「いや、最初は俺もそう思いましたよ。でも、女の子はめんどくさいんですよね~。昨日、ごたごたしたんで、尚更やる気が出ないっていうか」
『だったら、金やるから。ネカフェでもホテルでも勝手に泊まれ』
「え~。俺、人肌がないと眠れなくって」
『矛盾してるじゃねーか! てか、そんなケダモノと相棒を一緒にできるわけないだろ!』
「でも。俺、このままだと、本当に死んじゃうかも……」
『色目を使うな! 気色悪い!』
「望月さん。貴方だけが頼りなんです……」
「う……」

『ったく! 信じらんねェ! こんな得体の知れない男を家に上げるだなんて』「ごめん……」
「まぁまぁ。望月さんに損はさせません! 俺、こう見えて何でもできますから! 望月さんは先に風呂入っちゃってください!」
「えっ」『あっ、コラ! 勝手に剥がすな!』
「ね?」
「……」
 パペットを剥がされては何も言えない。不用心だとはわかっていながら、意志の弱い僕は従う他なかった。

「あ、早かったですね。でも、こっちももうすぐできますから」
「え……」
「食材、勝手に使っちゃいましたけど、大丈夫でした?」
「ん……」『お前、よくあんな少ない材料から料理が作れたな』
「さすがに手の込んだものは作れませんでしたけど。どうぞ冷めないうちに」
「おいし……」
「良かった。スープ、おかわりありますからね」
 弁当以外の物、久々に食べたなぁ……。あったかくて……。なんか少しくすぐったい。

「明日、何時ですか? 起こしますよ」
「ん……」『明日は休みだ! 外出予定だから、お前は朝一でとっとと出て行けよ?』
 マッサージを受けながら、彼のヒモ力が侮れないものだと知る。ふくらはぎを滑る彼の手は、確実に疲れを癒してゆく。
「てか、もしかしていつも床で寝てんですか? タオルケット一枚はさすがに辛くないっすか?」
「ん~」『だから明日、買いに行くんだろうがァ!』
「まじっすか。てか調理器具とかも買った方がいいですよ」
『調理器具……? そんなものは要らん!』
「でも、あると便利っすよ?」
「んん……」
 確かに、毎日あんな食事をしていれば、もう少し健康的になれるんだろうなぁ……。スープ、おいしかったなぁ……。余ってるって言ってたし、明日の朝、食べ、よ……。

 とんとんとん……。
「ん……」
 良い匂い、する……。それに、包丁の音……? なんだか、ずっとこうして聞いていたくなるような……。
「さ、朝ですよ。今日はお出掛けするんでしょう?」
「う……」
 開け放たれた窓から洩れ出す光に、思わず顔を歪める。
 あ、そうだ。昨日は変な少年を拾って。ご飯作ってもらって。マッサージが気持ち良くて。そのまま寝て……。
「顔洗ってきてください。ご飯、よそいますよ」

「んじゃ。行きますか」
『おい、待て。小僧はここでサヨナラだろうが』
「え~。いいじゃないですか~。俺、暇なんだし。昼飯くらい奢ってくださいよ~」
『コイツ、まだ集る気か……!』
「それに、望月さんだって、誰かと一緒の方が心強くないですか?」
「えっ……」
 きらきらとした瞳に真っすぐ見つめられ、半歩下がる。
「望月さん、ウサギないとコミュ障じゃないですか。そんなんで家具買えるんですか?」
「ぐ……」
 確かに。コンビニで弁当を選ぶことさえ緊張するというのに、家具なんてちゃんと選べるだろうか……。
「それに俺、色んな部屋を見てきたから、家具の良し悪しが多少わかります。アドバイス、欲しくないですか?」
『騙されるな、相棒。コイツは信用しちゃアならない』「でも……」
 パペットもなしに一人で店にいる自分を想像する。怖い……。絶対不審者だと思わるぐらいあたふたキョロキョロする……。
「それに、今の家電は色々難しいですからね。店員に聞かないとわかんないかも」
 店員に聞く……!? そんな無謀なチャレンジを提示されては、僕の心は耐えられない。
「あの……。ついてきてもらっても……?」『おい!』
「よろこんで」

 それから、無事に家具や家電、調理器具まで選び終えて。何故か彼の洋服を数点買わされ、昼食をとり、食材を買い。帰ってきた頃にはすっかり日が暮れていた。
「いや~。疲れましたね」
『いやいやいや! なんでお前がまだいるんだよ!』
「なんでって。なんとなく?」
『ふざけるな!』
「でもほら、せっかくの食材、望月さんに調理できます?」
「……」
 できるわけがない。というか、つい乗せられて買ってしまったけど、一人じゃこんなに消費できない。
「ささ。明日は仕事なんでしょう? 飯は作っときますから、さっさとお風呂入ってください」

「んじゃ、寝ましょうか」
 買ってきたばかりの新鮮な野菜を使った鍋は、とてもおいしかった。そして、一日歩き回り、疲れた足をマッサージされた後は、まさに夢見心地。電気を消して、隣に寝そべる彼の温もりを感じながら、充実した気分で一日を終え……。
『って、待て! なんでコイツが泊まる流れになってんだ!』
「え、まさかこんな時間に俺を追い出す気ですか?」
「う……」
 眠気を吹き飛ばしてパペットを操る僕に、少年は真顔で問う。た、確かに……。こんな夜中に出て行けだなんて、常識的ではないかもしれない……。でも、約束と違……。
「ベッド、早く届くといいですね」
 まるで子守歌のように穏やかな声でそう呟いた彼は、当たり前のように目を閉じる。
『お前、相棒に大きめのベッドを勧めていたが、まさか……』
「ほらほら。寝ましょう! いや~。ほんと、今日は良い一日だったなぁ。ね、望月さん」
 やや白々しい様子でこっちに微笑む彼は、流れるように僕の手からパペットを剥がすと、枕元に置く。
「あ。ちょっと……」
「ほら、こっちの方があったかいですから」
 そう言って彼は僕の手を取り、自分の手を絡める。
「いや……。えっと……」
 すぐに離そうとしたけど、力強く握りしめられてしまって敵わない。
 うう。恥ずかしい……。でも、本当にあったかいや……。
 そうこうしている内、再び襲い来る眠気に身を委ね、僕はまたしても得体の知れない少年と共に眠ってしまった。

「んじゃ。行きますか」
 爽やかな顔で彼が玄関のドアを開ける。いつもなら怠くて仕方がないこの瞬間。今日は朝から美味い朝食を食べたからだろうか、幾分か調子が良い。
『おう。今度こそ、お前はここでサヨナラだな』
 マンションのロビーまで下り、パペットの手を振る。自分の部屋に他人を招き入れるなんてどうかしていた。良心と疲労で鈍った判断力に流されてしまったが、もし彼が悪い人間だったらどうなっていたことか……。でも。
 彼と過ごした休日、決して悪いものではなかったな……。
 むしろ彼が居たことによって、いつもより有意義に過ごせた。そう思うと、少し勿体ないような気がした。
「なんて。僕が人と暮らせるわけないのにね」
 ぽつりと零した言葉に、ウサギが口を開きかける。出てくるのは果たして罵倒か。それとも……。
「望月さん! なにぼーっとしてんですか! 行きますよって!」
「え?」
 ウサギが喋り出すより先に、大きな声で叫ぶ彼が車の中から手招きをする。
 え、いつの間に車に……? ていうか、行くってどこに……?
「仕事! 早くしないと、遅れちゃいますよ?」
「あっ」
 彼の声に慌てて腕にある時計を見る。まずい。電車……!
 思ったよりもぼーっとしていた時間が長かったらしく、僕の足では到底駅に間に合いそうにない。
「だから、乗ってくださいって!」
「えっと、でも……」
「早く!」
「は、はいっ」
 急かされた途端、僕は情けなくも言われるままに、彼の運転する車に乗り込む。
『おい、お前! この車一体どうしたんだ?! まさか盗んだんじゃあるまいな?』
「馬鹿言わないでくださいよ。知り合いの女の子がくれたんですよ」
『は? いつ?』
「今日。ていうか、つい先ほど。望月さんのお役に立てればと思って。いやぁ、俺は貸してって言っただけなんですけど。くれるって言うんで」
『お前、それ絶対保険とか大丈夫じゃないだろ』
「ま、それは後程、ね?」
『小僧、まさかお前、本格的にヒモる算段じゃあるまいな?』
「いや~。だって。ほんとに行くとこないんですって」
『その女のとこに行けばいいだろうが!』
「言ったでしょ。めんどくさいんだって。それに、ほら。考えてもみてくださいよ。俺を運転手として養うことによって、すし詰め電車に乗らなくて済むんですよ? タクシー代だと思えば安すぎるぐらいですよ?」
『お前を雇うぐらいなら、他に正式な奴を寄越すよう事務所に言うわ!』
「でも、普通の運転手はご飯作ってくれませんよ?」
『飯ぐらい。余りの弁当を持ち帰った方が食費も浮くぞ!』
「じゃあ、掃除は? 洗濯は? 望月さんの部屋、今はすっからかんだからまだ綺麗かもしれませんけど、家具やらなんやら増えると掃除が一気に大変になりますよ? それに、疲れて帰ってきた後、マッサージだってしますよ、俺。ちゃんと気持ち良かったでしょ?」
「う……」
「ね。望月さんが売れてる今、この時。望月さんが過労で倒れてしまっても、ブームは待ってくれませんよ?」
「ぐ……」
「望月さんだって、本当は今の生活ギリギリなんじゃないですか? 精神的にも、肉体的にも。ね、俺だったら望月さんのこと、完璧に支えてあげられますよ?」
「……」
 いや、確かに。そうだけど。でも……。
「はい。着きました。それじゃあ、仕事終わったら電話ください。迎えに来ますから」
「う、うん……」
 頷いてからハッとする。僕はまた流されて……。
「ふふ。よろしくお願いしますね」
 柔らかい笑みを浮かべた彼は、手帳にペンを走らせると、それを千切って僕に渡す。
「あっ、でも。やっぱり僕は……」
「ほら。早く行った方がいい。時間、結構ギリギリですよ」
「あ! その、送ってくれてありがとう……。い、行ってくる!」
 結局断れないままに、番号の書かれた紙をポケットに突っ込み、車を降りる。
 その後、長い収録を終え、くたくたになった僕がどうしたのかは察してほしい。

 そうして、怠惰な僕と打算的な彼の同居生活が始まった。
「望月さん、ほら寝ないでください。髪の毛、乾かしますから」
「ん……」
 風呂を出た後、ソファにうつ伏せで寝ころんでいると、いつものように声が降ってくる。僕はそれに曖昧な返事をすると、そのままの体制で目を瞑る。
「全く。甘えたですね」
 そう呟いた彼が、わしわしと髪をタオルで拭いた後、丁寧にドライヤーで乾かしてくれる。
「ん~」
 最初の頃は拒否したそれも、一週間を過ぎた頃にはすっかり受け入れてしまうようになった。
 だってこれ、マッサージぐらい気持ちいいんだもん……。
「そういえば。望月さんって、本名、なんていうんです?」
「え……?」
 ドライヤーの電源を切った後、ちゃんと乾かされているか確かめるように僕の髪を撫でながら彼は言った。
「あ、聞いちゃ駄目でした?」
「……いや。えっと。とびら」
「望月 とびら? へぇ、変わった名前ですね」
「ふるう君に……言われたくない……」
「はは。気に障りました? でも、俺は好きですよ。なんかほら、色んな世界に誘ってくれそうで」
「……」
 一瞬の沈黙。心身の硬直。ああ、僕はまだこんなにも……。
「望月さん?」
 不思議そうに覗き込んでくる彼から視線を逸らし、急いでパペットを手にはめる。
『それより小僧、お前は一体いくつなんだ?! 出身はどこだ。親は? 若いくせにどうしてマトモに働かん?』
「一気に質問しないでくださいよ。えっと、十九歳、出身は京都。親とは喧嘩中。俺ぐらい顔が良いと真面目に働くのが馬鹿らしくなってくるから。これでいいですか?」
『お前、未成年のくせにヒモ生活してんのかよ……。悔い改めた方がいいぞ』
「だからこうして、女じゃなくて望月さんを選んでるんじゃないですか。俺なりの改心ですよ」
『大迷惑だ!』
「本当に? ってか、望月さんこそいくつなんです?」
「う……」『コイツは今年で二十九だ』
「うわ。ちょうど十コ違うんですね~。でも、望月さんそんなに歳食ってるようには見えませんね」
『垢抜けていないと言いたいのか?』
「それもですけど、なんかこう……。綺麗だし」
「!」
 ドライヤーを片付けた彼が、ふいに僕の髪に口づける。
『女じゃないんだから、そういうのは要らんぞ』
「わかってますよ~。でも、ちょっと勿体ないかも。テレビで望月さんの素顔が拝めないなんて」
『ゴマを擂る暇があったらさっさと寝ろ。明日も早いんだからな!』
「今日も引っ付いて寝ていいですか?」
『駄目だと言ってるだろ! お前は床で寝ろ!』
「ま、拒否られてもくっつきますけど」
 くつくつと笑う彼に、それ以上何も言えなかった。それに、彼とくっついて寝るのは僕も嫌いではなかった。不思議だけど最近は、心地良いとさえ思えるようになっていた。


 幸いにも望月ラビットは、芸能界においてすぐに飽きられることはなかった。その毒舌パペットのおかげでレギュラー番組を次々と獲得し、テレビやラジオ、ライブや取材と仕事が尽きることはなかった。
「望月さん。今日もお疲れ様」
「うん」
 彼が来てからもうすぐ一年。宣言通り彼は、僕の身の回りの世話を文句の一つもこぼさずにやって退けた。
「今日のご飯、なに?」
「今日は望月さんの好きなオムライスにしましたよ」
「……うれしい」
 オムライスには器用にケチャップでウサギが描かれていた。彼のオムライスを見ると、犬だろうか。口先のとがった動物が描かれていた。
「犬が好きなの……?」
「まぁ、ね。そんなことより、早く食べないと冷めますよ」
 一人じゃないことがこんなに温かく心地よいものだとは知らなかった。僕は、すっかり彼に頼りきっていた。今では、彼と出会うまで自分はどうやって生きていたのかと思うほど、僕はこの生活が気に入ってしまっていた。
 もうすぐ一年、か……。改めて思い返してみると、本当に目まぐるしい日々だった。彼無しでやっていたら絶対に体を壊していた。ほんと、感謝しないとなぁ……。
 食事を済ませ、満腹の幸福に浸る。その傍らでせっせと食器を片付ける彼の姿をぼんやり見ていると、視線に気づいた彼は微笑みをくれる。
「!」
「なんですか? 俺に見惚れてたんです?」
「ち、ちが……!」
「な~んて。ほら、眠くならないうちに、さっさとお風呂済ませてくださいよ」
「ん……」
 一体いつまで彼はココにいてくれるのだろうか。この言いようのない幸福を感じる度に、僕はそう心の中で呟かずにはいられなかった。
 さっさとお前の口で聞けばいいだろ? そんで、さっさとこの茶番を終わらせろ!
 何と無しに見たパペットは、鞄からはみ出しながら、そのつぶらな瞳で僕を睨みつける。
 僕はそれからそっと目を逸らすと、黙って風呂場へ足を向けた。

「今日で一年……」
 ライブがどうにか終わり、逸る気持ちを抑えながら街中を歩く。最近、どうも腹話術の調子が悪い。今日のライブでも、途中で言葉を詰まらせてしまった。きっと疲れているんだろう。
 ここ一年はどこへ行くにも彼がついてきてくれていたので、一人で歩くのは少し心もとない。でも。
「プレゼント……。それから、ケーキも……」
 今日は彼を連れていては意味がない。一周年記念のサプライズ。彼が覚えているかもわからない記念日。女々しい、めんどくさいと言われるかもしれないと随分迷ったけれど、彼にお世話になり過ぎているしと、自分を無理に納得させてみた。
「あれ、いいかも……」
 商店街を歩いていると、ふいに犬の刺繍がついたマフラーに目が留まる。冬物セールのワゴンに置かれたそれは、商品の中で一際目立っていた。
 でも、ダサいかも……。僕、センスないし……。でもでも、ふるう君、マフラー持ってないみたいだし……。犬好きだし……。
『あら、これ可愛いんじゃない?』『え~?』
 手に取るべきか迷っていると、後ろから親子が近づいてくる。僕は急いでそ知らぬふりして他のワゴンに移動すると、そのまま親子に目を向ける。
『お父さん犬好きだし。寒がりなんだから、マフラーなんていいじゃない?』
 母親が躊躇うことなく手に取ったそれは、目をつけていた犬マフラー。
『え~。でも、もうちょっと他も見てみよ~?』
『そうね。まだ時間あるし、そうしようかしら』
 娘の提案に頷いた母親は、マフラーを元の位置に戻し、雑踏に消える。
「……」
 それを見届けた僕は、再びマフラーの目の前に立ち、恐る恐る手に取ってみる。
 心臓がぎゅっと縮まる。寒いぐらいなのに、汗が止まらない。商品を一つ買うにしてもこの緊張だ。だけど……。
『次はどこ見る~?』『そうね~』
 数軒先の店から出てきたあの親子の声に、危うくマフラーを取り落としそうになる。
「ぐ……」
 慌てて強く握りしめ、彼の笑顔を思い浮かべる。
 そうだ、きっと彼なら……。

 買ってしまった。でも、ふるう君ならきっと喜んでくれる。そう自分を宥めすかし、なんとかケーキを買って帰路に就く。
「あれ。早かったんだね? 電車で帰ってきたの? 電話くれたら迎えに行ったのに」
「えっと。だって、その……」
「うん」
 しどろもどろになる僕の言葉に、彼は静かに耳を傾ける。ここで言わなければ。ちゃんと伝えなければ……。
「君は覚えてないかも知れないけど! 今日は、僕たちが出会った日だから、コレ……!」
「ああ、なんだ。望月さんも覚えててくれたんですね」
「えっ。じゃあ、ふるう君も」
 緩慢な動作でプレゼントを受け取った彼は、蕩けるような笑顔をみせる。
「勿論。忘れるはずがないでしょう? なんたって今日は」
 ああ。良かった。やっぱり彼は優しい。こんなどうしようもない僕との出会いを、ちゃんと覚えていてくれて……。
 伸ばされた手が、ケーキの箱に触れる。そして……。
「大嫌いなアンタと、ようやくおさらばできる日だからな!!」
「え……?」
 僕の目に映った彼は、まるで童話の狼のように下卑た笑みを浮かべていた。
 一体、彼は誰だ……?
 床に叩きつけられたケーキを見つめながら、震える自分の手を握りしめる。
「聞こえなかったか? 望月ラビット。俺はアンタを恨んでたんだよ。アンタは俺の居場所を奪ったんだ。俺はずっとアンタのことが憎くて仕方がなかったんだよ……!」
「何のこと、言って……」
「ああ、わからないだろうね。アンタみたいな天才にはさ! 実力じゃアンタに敵わないさ。だから、俺はアンタに近づいた」
「ふるう君……」
「俺は、最初っからアンタの精神をズタボロに引き裂いてやるためだけに近づいたんだよ」
「嘘だ」
「アンタが俺に懐いたところで、俺はアンタを捨てる。シンプルだけど、元々孤独なアンタには相当効くはずだ」
「うそ、だ……」
「はは。思った通りみたいだな。唇まで真っ青だ」
 唇をなぞる彼の指の感触が、思い出を少しずつ壊してゆく。
「僕、は……。だって……。君が、喜ぶと、思って……」
 震える手で、彼の手にある紙袋を握りしめる。
「ああ。これ、プレゼント? 健気だね~。って。うわ~、ダサ……。これで喜ぶとか、マジで言ってんの? 俺がこんなの使うわけないじゃん!」
「あ……」
 包装紙を雑に破いた彼はマフラーを見た後、躊躇うことなく床に投げ捨て、暴言を吐く。
「は~。俺もよく一年耐えたよな。ま、お陰でアンタはこ~んないい顔になったけどさ」
「……っ!」
「どうせなら、絶望のどん底に落としてあげよっか」
 楽しそうに歪む彼の唇。まるで僕を傷つけることしか考えていないのだ。怖い。声が、出ない。急いでパペットに手を伸ばそうとするが、腕を掴まれ、ベッドまで引きずられる。
「は、放し……」
「可哀想だね。でも大丈夫。アンタの喉が枯れるまで、たくさん酷いことをしてやるよ」
「は……」
「せいぜい良い声で鳴きなよ。寂しがり屋のウサギちゃん」
 そう言って肩に噛みつく彼の狂気に、僕は震えることしかできなかった。

「なぁ、気づいてたか? アンタのパペット、途中から仕事の時しか喋んなくなってたじゃん」
「あっ」
 熱い。どろどろに溶かされた理性では、反論することもままならない。
「あれさ、予想外だったよ。俺には心許してくれてたから、パペット使わなくなったんでしょ?」
「んん……!」
 ああ、そうかもしれない。言われて初めて気がついた。確かに僕は、彼に慣れてからというもの、ウサギに頼らなくても彼と会話ができていた。それじゃあ、もしかして……。
「やっぱ気づいてなかったんだ。アンタは疲れてるせいで調子が悪いんだって言ってたけど、それは違う。アンタはそのパペットが要らなくなったんだよ」
「やめ……」
「アンタの才能は、孤独なアンタが生み出した幻影だったってわけだ。このまま優しさでアンタのウサギを殺しても良かったんだけどね」
 そうか。ウサギが喋るようになったきっかけは確か、僕が……。
「俺、最初っから決めてたんだよ。一年経ったらアンタを壊すって。これ以上アンタと過ごすのは、俺がしんどいんでね。当初の計画通り、人前に立てないぐらい精神どん底に落としてやるよ」
「う……」
「はっ。その顔、いいよ。最高。アンタのそういう顔が見たかったんだよ」
「あ……、ああ……」
 色んな感情がない交ぜに溶けてゆく中で、僕は自身を呪った。ああ、どうして僕は……。



『とびらにはね、パパとママを新しい世界に連れて行ってほしいなって思って名前をつけたのよ』
「うん。ボク、きっとパパとママが幸せな世界の扉を開くよ」
 無邪気な少年は笑った。このときはまだ、幸せに満ちていた。少年は信じていた。この幸せがずっと続くことを。
 でも。しばらくして、幸せなんてものはすぐに壊れてしまうものだと知った。
『アナタ、また株で失敗したの?!』『うるさいな。次で取り返せばいいんだろ?』『もう辞めてって言ってるのよ!』『お前こそ、オレの金使って、どこの誰と遊んでんだよ!』
 いつからか両親は顔を合わせる度に怒鳴り合うようになった。扉越しに聞こえてくる暴言は、いつも少年を苦しめた。
「お父さん……」
『邪魔だ! あっちに行け!』
「お母さん……」
『邪魔しないでよ! あっちに行ってなさい!』
 少年はいつも邪魔者だった。
『もううんざりよ! 私は出て行くわ!』『このアバズレ! 行くなら金を置いていけ!』
「やめて……」
『きゃあ!』『お前がいけないんだ! お前がオレに逆らうから!』
『殺してやる……。アンタなんか殺してやる!』『ぐ、くそったれ!』
「ひっ」
 父親が母親を殴り。母親が、極限まで達した怒りをぶつけるように刃物を振るい。刺された父親が、自分から引き抜いたナイフで母親を刺し……。
「あ……」
 ドア越しに覗いていた少年に血しぶきが飛んだ。少年は扉を閉めると後ずさり、そのまま
誰かが来るまでずっと、震えていた。
『駄目だ、二人とも死んでるぞ!』『馬鹿、子どもが怯えてるだろうが!』『もう大丈夫だからね』
 大人たちの声に、少年はただ震えることしかできなかった。そして、その地獄の光景は彼の心に大きな傷を残した。気づけば少年は、人前で声を発することができなくなっていたのだ。
『可哀想に』『このままずっと喋れないのかしら』
 親戚の家に引き取られた彼は、やはり静かなままだった。そんな彼を静寂から救ってくれたのが、部屋の隅に置かれたウサギのパペットだった。
 まだ少年が幸せだった頃に母親が買ってくれたそれは、ただ静かに少年を見つめていた。
 ね、ボクはこれからどうすればいいのかな……。
 少年は、漠然とした不安をウサギに向かって、心の中で呟いた。
 オレを手につけてみろ。
 ウサギのつぶらな瞳がそう訴えた。そして。
『大丈夫だ。これからはオレがお前の代わりに喋ってやる。お前が寂しい時は、オレが話し相手になってやる』
 その日から、ウサギは喋るようになった。もちろん、周りの人々は気味悪がったが、少年はもう怖くはなかった。
 そして、異質な少年は芸能事務所からスカウトを受け、そのままトントン拍子に仕事が舞い込み。腹話術師として活躍するようになって数年、ついにテレビの仕事まで勝ち取ったのだった。
 それでも。彼の心は決して満たされることはなかった。ウサギに頼り切ったまま、弱い自分に嫌気がさしていた。
 そんなときに桜花 ふるうが現れて、彼に人間味を与えて、そして……。



「……」
 起き上がる。そして、あちこち痛む体に顔をしかめる。
 ああ、そうか。僕は彼に裏切られたんだったな……。
 彼と同居してから、まるで自分が普通の人間になったかのような錯覚さえ起こしていた。それほどに幸せという感情が、僕に安堵を与えていた。でも、それも結局は。
 そりゃそうだ。僕は所詮、誰からも愛されることのない空っぽな人間だ。愛されているのは、ウサギだけ。あれは僕の力じゃないし……。
 時計に目をやると、正午を少し過ぎた時刻。丁度、生放送の仕事が入っていた時間だった。
 きっと、恐らくは。
 震える手でテレビのリモコンを操作する。そこに映ったのはやはり……。
『今日は急遽、望月さんの体調が悪いということで、代わりに桜花ウルフさんに来てもらいました~!』
『こんにちは~! 桜花ウルフです。どうぞよろしくガウ!』
 桜花ふるう。昨日までここにいたはずの彼だった。
 やっぱり、そうか。
 詰めていた息をそっと吐きだす。
 彼の手には狼のパペットがはめられていた。その立ち振る舞いからして、恐らく素人ではないのだろう。
『いや~。桜花さん、お若いですね~。それに、何と言ってもすごくイケメン!』
『そんなことないガウ!』
『可愛らしい! これは奥様方のハートを鷲掴みですわ』
『あははは!』
 犬じゃなくて狼だったんだな。
 床に落ちたままのマフラーを拾い上げる。そのダサいと言われた刺繍は、まるで僕を馬鹿にしたようにニコニコと微笑んでいた。
 本当に僕は、何にもわかっちゃいなかったんだな。


 森の中。適当な場所で鞄の中からウサギを取り出す。
 そんなに睨むなよ。僕が馬鹿なのはわかってるだろ。
 不機嫌な相棒をひと撫でして、木の根元に横たえる。
 お前には世話になった。お前がいなければ、僕はとっくに死んでいたさ。だから、そんなに悲しい顔をしないでくれよ。なあ、たった一人の友人として、僕の最期を見ていてくれよ。
「さあ。これで、ほんとにサヨナラだ」
 掠れた声で世界に別れを告げ、踏み台を蹴る。
 木に括られたマフラーは、しっかりと首を絞めつける。
 これが、僕の最期。惨めなお葬式には、犬とウサギだけで結構だ。これでも僕は、後悔してない。ウサギを失ったファンのみんなには悪いけど、でもきっと大丈夫。後は彼が何とかしてくれるはずだから……。



「ら……」
 真っ新なはずの意識の中。若い人間の声を聞く。
 もう一度聞きたかったはずのそれは、うるさいほど僕を責め立てる。
「とびら……! 開けろ……!」
 ああ、無理だよ。もう僕には無理だよ。だって、僕は駄目だった。僕なんかじゃ、幸せな世界になんか連れていけない。
「頼むから……。目を開けろ! 望月 とびら!!」
 え、僕の目を……、開ける……?
「そんで、俺を見ろ! 頼むから、声を聞かせてくれよ……!」
 悲痛な叫びが僕を揺さぶる。
 どうして? どうして彼が僕を望んでいるんだ?
「なあ、俺は、お前のことが――!」


 目を覚ますと、すぐ側に彼の顔があった。
 どうして、泣いているんだろう……。ぼんやりとする頭じゃ、考えてもわからない。
「やっぱり、駄目だった。俺、本当はわかってたのに……」
 か細い声で呟いた彼の手には、ボロボロになったマフラーがあった。
 そんなの、捨てなきゃ。君には、似合わないから……。
 手を伸ばす。すると、彼がこちらに気づいて、目を丸くする。
「意識、戻って……?! ナースコール……!」
 ナースコール? ああ、僕、助かっちゃったのか……。
 彼の手を掴み、首を振る。いらない。僕は、このまま死んでしまいたいんだ。
「なんで止めるんだ?」
 動きを止めた彼が、眉を顰めながらこちらを見つめる。僕はそれに答えるべく言葉を紡ごうとするが、口がぱくぱくするだけで全く声が出ない。
「チッ。コレ、はめろ」
 苛立たし気に舌打ちした彼が、僕の手に被せたそれは、くたびれてしまった僕の相棒。横たえたときについたであろう土は、綺麗に取り払われていた。
『コイツは、死ねなかったんだな……?』
 ウサギが僕を憐れむように彼に問う。
「なんなんだよ、アンタ。あのマフラー使って死のうだなんて、当てつけも大概にしろよ……」
 ああ、そうか。僕の死の原因が彼にあると思われたら、たまったもんじゃないだろう。
『それは、悪かった。だが、お前に迷惑をかけるつもりだったわけじゃない。それに、そう心配しなくとも、あのマフラーがお前を意味するなんて誰にもわからないだろ』
「そうじゃねぇよ。そんなことが言いたいんじゃなく……。なぁ。許してくれ。俺を」
 そうじゃない? 許す? 彼のしおらしい態度に首を傾げる。
『許すも何も。悪いのはオレらだろう。お前、あれだろ。人形師の桜花一族。京都ってのと名字で気づけばよかった』
「は。バレてたのか。そうだよ。でも俺は、落ちこぼれ。子供向けのパペットなんかにハマっちゃってさ。親の反対押し切って、上京してこれで生きていこうとしてたんだ」
『だが、お前が出演するはずだったオーディション番組。お前の代わりにオレたちが出て。それがきっかけでブレイクしちまった、ってわけだ』
「知ってたのかよ」
『いや、今更になって気づいたよ。そういやソイツ、親が危篤だから急遽京都に帰るんだって聞いたなって。悪かった。アンタには恨まれて当然さ』
 全てが解ければなんてことはない。僕は、彼の不幸を踏み台にして人気を得ていたんだ。もっと早く気づけばよかった。彼の恨みに。いや、気づいていたとしても、僕にできることなんか、きっと何も……。
「違う。こんなの……。望んでない。俺は、馬鹿だった。逆恨みもいいところだ。これでアンタが死んでたら、俺は……」
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『……さあ。でも、オレたちの人生はお前のもんじゃない。オレたちがどうしようが、お前には……』
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「っ……。なに、それ……」
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「俺だって、こんな感情、わかんないっての! 許してくれとは言わない。だけど、死ぬのはやめてくれ。俺の側にいてほしい……。もっと俺を愛してほしい。誰よりも、愛してほしいんだよ……!」
「そん、なの……。僕は、もうとっくに! 君を、愛してる……。愛してるって……!」
 彼の切羽詰まった訴えに、僕は泣きじゃくりながら答える。例え嘘でも構わない。考えることを放棄した僕は、無我夢中で彼を抱きしめた。
「嘘じゃないよな?」
 泣きそうな顔で問う彼に、僕は何だかおかしくなって、年上らしく頭を撫でてやる。
「僕は君ほど嘘つきじゃないからね」
「はは。確かに。望月さんってば、嘘が全然似合わない」
「そう?」
「うん。でも、俺だって嘘じゃない。もう辞める。俺は、望月さんにもう嘘は吐かない」
 悲しそうに笑った彼は、僕の頬にそっと手を当て、唇を近づける。
「おい」
「キスがしたい。アンタが欲しい。もっとアンタのことをちゃんと知りたい。駄目?」
 子犬みたいな顔で情熱的な台詞を吐いた彼に、僕がどう抵抗できるというのだろうか。
「……好きに、するといい」
「やめた、は無しだよ?」
「んっ」
 ベッドに押し倒された後、すぐさま唇が重なる。甘い眩暈に襲われながら、視線を巡らす。
 いた。ベッドのすぐ横。先ほどまで彼が座っていた椅子の上。そこに横たわる相棒が、つぶらな瞳でこちらを見つめ返す。
 ったく。オレが剥がされたのにも気づかないなんて。のぼせすぎだぞ、相棒。ま、今日ぐらいは許してやるけどよ。
 そう言って笑うウサギに、僕は心の中で感謝する。
 ありがとう。僕は君がいたから生きてこれたんだ。
「ちょい。どこ見てんのさ。何考えてんのさ。ちゃんと俺を見てほしいんだけど」
「ん……。でも……」
 服の下に手を伸ばす彼に、身をよじる。しかし、そんな抵抗も虚しく、再び唇を塞がれて……。
『まぁ、病院で盛るのはオススメしないけどな!』
「「え……?」」
 突如、椅子の上から聞こえた声に、二人の肩がびくりと震える。
「望月さん……。やっぱ嫌なの……?」
「は? いや、僕じゃないよ? 今の。だってほら、舌くっつけてんだから、いくら腹話術でも、僕が喋ったらわかるでしょ?!」
「そりゃあ、そうだけど。じゃあ、誰が喋ったっていう……」
『だから、オレだろ?』
「「へ……?」」
 再び聞こえた声の方を二人同時に振り返る。そこにいたのは、ウサギのパペット。元気に椅子の上で飛び跳ねていて……。
「「え、ええ~?!」」



『というわけで、今日は望月ラビットさんと桜花ウルフさんの新ユニット『ウルラビ』をお迎えしていま~す!』
『こんにちガウ~!』『開幕早々あざとい!』
『あはは!』
『いや~。ボクはてっきり望月さんと桜花さんはライバル関係にあると思ってたんですけど、まさかお二人が組むとは』
『ほんとですよね~。でも、お二人、結構仲良さげで~、そこがなんか可愛いっていうか~』
『タラシの狼に兎が激しくツッコむってのも面白くて、子どもにも人気ですよね』
『そして、何と言ってもラビットちゃんが勝手に動いてるのもすごい! 一体どういう原理なんです?』
『マジックの種は明かしちゃ駄目ガウ』『秘密に決まっとる』

「ほんと、一体どういう原理なの? ラビットさん」
 僕の部屋でこれでもかというぐらい、ぐで~っと寛ぐ彼が、テレビから目を離して相棒に問いかける。
『オレも詳しいことはわからんけど。実は前々から自我のようなものが芽生えていてだな……。恐らく、コイツがオレを長年大事にしたおかげだろう』
「付喪神的な?」
『そうそれ』
「ええ……?」
 結局、僕の相棒は、僕の精神が落ち着いてからも、自分の意志で動いて喋った。
「不思議なこともあるもんだな~。は~。俺のウルフくんも勝手に喋りだしたりして」
『小僧は腹話術が好きなんだろうが。勝手に喋っちゃ仕事がないだろ』
「望月さんはいいんですか~?」
『コイツは好きでやってたんじゃないしな。筋は良かったが、意識的にやるもんじゃない』
「勿体ないな~」
『それに、コイツなりに最近喋る努力はしてるみたいだからな』
「う……。上手くトークできないけど、ね……」
「いや、それが逆に良いキャラになって視聴者にはウケてますけど」
「それは、ふるう君の返しが面白いから……」
『おいおい。イチャイチャすんのもほどほどにしてくれよ? そろそろ仕事、行く時間だろ』
「あ、ほんとだ」
「ちぇ。それじゃあ、いちゃつくのはまた帰ってきてから!」
『オレが寝てからにしろよ!』
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「気合て……」
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 ドアを開け、彼に手を伸ばす。陽が眩しいせいか、彼は目を細めてから僕に向かって微笑む。
「はい!」
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「う、うん」
『こうして、仕事前にも関わらずイチャイチャを繰り返すバカップルは、末永く幸せに暮らすのでした』
「ラビットさん、鞄の中から変なナレーションしないでくださいよ」
「ってか、ほんと急ぐよ! 遅れる!」
『チャンチャン』
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