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(63)寺の子
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八鹿を祓ってあげた崇哉は、すっかりと懐かれる。最初は嫌厭していた崇哉も、次第に心を許し始める。が、ある日、崇哉の兄が突然死んでしまう。跡取りを押し付けられた崇哉は……。
妖怪祓い×怪しい転校生。
人外が人間にいいようにされるのが好きです。最後が上手く纏まらなかった感。
明大寺 崇哉(みょうだいじ しゅうや)
お寺の息子。本当は絶大な力を持っているが、跡取りになりたくないがために隠している。
綾風 八鹿(あやかぜ ようか)
イケメン転校生。憑りつかれやすい体質のようで……?
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「親の都合で転校してきました、綾風 八鹿です。みんな、よろしくね?」
ある日のこと。うちの学校にイケメン転校生が来た。勿論、クラスの女子は彼を気に入って、SHRが終わるや否や、彼を囲んで尋問のような質問攻めをした。
あんなに囲まれて、気持ち悪くないのだろうか。……人間でないものにも囲まれて。
「イケメンくん」
「ん?」
「ゴミ、ついてたよ」
「ああ、ありがとね」
『ちょっと~! ゴミなんてついてないわよ!』『そうよ、明大寺は入ってこないでよ!』
親切心で女子に割って入ったのがいけなかった。イケメンに関わるもんじゃあないな。
総スカンを食らった俺は、大人しく席に着くと、読みかけの本に目を落とした。彼に関わるのはこれきりにしよう。そう決めていたのだけど……。
「君、明大寺 崇哉くん、だっけ?」
あれから一週間ほど経った頃。避けていたというのに、イケメン君の方から俺に話しかけてくるとは。
「僕さあ、今まで肩凝り酷かったのに、こっちに来てからあっさり治ったんだよね」
「あ~。空気いいからね、ここ」
「そうそう。なんか有名なお寺があるから、ここは他より綺麗なんだってね」
「ああ、そうかもね」
「んで、そのお寺の息子が明大寺くんなんだってね」
「……それで?」
食えないやつだと思った。へらへらしている割に、どうにも目つきが鋭すぎる。
「うん。もしかしたらあの日、君が、僕に憑りついてた悪霊を祓ってくれたのかなって」
「俺にそんな力ないよ」
「え~。本当に~? でも、お寺の息子だったらさ~。ありそうだよ~? 跡取りなんでしょ~?」
「いや、俺は力がないから継がないし……」
「えっ。ほんとに力とかあるんだ! え、ってことは、君のお父さんはあるの? あ、明大寺くんの髪型が坊主じゃないのは継がないからなの?」
「……うるさい」
「いて」
ぺちりと彼の額を叩く。すると、うざったいほど周りを飛んでいた妖怪たちが、一斉に逃げてゆく。
「って。あ、また体が軽くなった。やっぱ力あるでしょ?」
「……」
彼の言う通り、俺は力を持っていた。だけど、寺を継ぐのは面倒臭いから親にもバレないように無能を装い、嘘を吐き通していた。だから極力、力を使いたくないのだけど……。
「ねえねえ明大寺くん~。お願い、アレもう一回だけやって! 体が重くて仕方がないんだよ~」
一度ならず二度までも祓ったせいで、彼は完全に俺の力を信じてしまった。
「知らないって言ってるだろ? そんなに祓って欲しければ、うちの寺で父さんか兄さんに頼んでくれ」
「でもそれ、結構な値段するよね? 僕、学生だよ? バイトもしてないし、一人暮らしだし……。ね、ね? 絶対誰にも言わないからさ!」
俺だって、鬼ではない。クラスメイトにこれだけ頼み込まれては、折れずにいられない。それに、目の前であれほどの妖怪たちを携えられては、こちらの気持ちが穏やかではない。
「本当に、誰にも言わないんだな?」
「うん! 言わない!」
こうして俺は定期的に、彼に憑いた妖怪たちを祓ってやることになった。
「明大寺くんってさ、いつも一人でいるよね。なんで?」
「さあね」
「いじめられてる?」
「っていうか、避けられてんだよ。お祓いとかって胡散臭いだろ?」
「そう? かっこいいけど」
「お前は実際に被害に遭ってるからそう言えるんだろ。一般人はそもそも妖怪とか幽霊とか信じてないんだよ。だから、お祓いで生計立ててるウチとは関わりたくないんだろうさ」
「明大寺くんの性格にも問題があると思うけどな」
「うるさいな。ていうか、名字で呼ぶのはやめてくれ。嫌いなんだよ」
「かっこいいのに。まあいいや。そんじゃあ崇哉くんね」
「くん付けとか、幼稚園かよ」
「じゃ、僕のことは八鹿って呼んでよ」
「わかったよ。イケメンくん」
「わかってないじゃん! なんだよ、イケメンくんって!」
「はは。むくれるとイケメンが台無しだぞ?」
「キャッ、褒め殺し! 抱いて!」
「ば~か!」
正直に言うと、彼にこうして懐かれるのは悪くなかった。まるで自分が普通の男子高校生になったような気がしたからだ。
彼は、お祓いのお礼にと俺を色んな場所に連れて行った。カラオケだのゲーセンだのファミレスだの。一人では入る勇気も気力も起きなかった場所は、思っていた以上に楽しくて。本当に。こんな毎日がずっと続けばいいと思ってしまった。ずっと、彼が妖怪に憑りつかれ続けてくれればいいとさえ思ってしまった。
でも、やはり俺は普通にはなれなかった。
唐突に、兄が死んだ。俺は、罰が当たったんだと思った。
「崇哉、貴方の力を覚醒させる他ないの」
「そんな。母さん、俺にはそんな力ないって……」
「最期に直哉が言っていたんだ。お前には力があるって。なあ、まさかお前、隠しているんじゃなかろうな?」
両親は俺を責め立てた。今まで俺に目もくれなかったくせに。俺は、兄を疎んだ。どうして俺の普通を奪うんだ。
「俺には、兄さん程の力はありません!」
勿論、俺は普通を装って、抵抗した。でも。
「もういい。崇哉を閉じ込めろ。飯は与えるな」
「でもアナタ……」
「能力を使えば出られるんだ。これではっきりするだろう」
「もし力がなかったら……」
「力のない者は明大寺に要らない」
父は言い切った。俺の価値など所詮は力次第だと。母は俺と目が合った瞬間に、気まずそうに視線を逸らした。自分の子どもを救えるだけの度胸はないらしい。今更、二人に期待していたわけではない。けれども、さすがの俺でも、傷つかずにはいられなかった。
「くそ。なんで兄さんはそんなことを言ったんだ……」
それが良心なのか、嫌がらせなのかは今となっては確かめようがない。
俺は兄に疎まれていた。幼い頃、一度だけ兄の前で力を使ったことがあった。それは、兄を上回るほど大きな力で。それを見た兄は、まだ幼かった俺に、力を使うなと脅した。
『オレは長男としての力を期待されているんだ。それをお前に奪われるなんて、考えたくもない!』
俺は、兄の意向に従った。兄に同情したのではない。圧をかけられている兄を見て、自分にお鉢が回ってくるのは勘弁してほしいと思ったからだ。俺は正義感を持てなかった。兄のように、親の期待に応えたいという意志もなかった。だから、こんな力はいらなかった。それなのに。
閉じ込められて丸一日が経った。たった一日だというのに、俺の腹は限界だというように激しい音で空腹を訴える。
「どうしたもんかなあ……」
大人しく捕まっていても、待っているのは死。かといって、力を使って脱出できたとしても、両親は血眼になって俺を探すだろう。もし捕まったら、両親の操り人形として一生を潰されてしまう。俺は兄のようにはなりたくなかった。そんな風に利用されるだけならば、死んだ方がマシだとさえ思えた。
「は~。アイツ、どうしてるかな……。妖怪に憑り殺されてないといいけど。な~んて」
人の心配をしている場合ではないとわかっていながら、どうしても頭は彼の笑顔を描き出す。
もう一度だけ、会いたいな……。会ってどうするわけでもないけど……。いや、せめて、お守りを渡してやりたいな。俺の力をたっぷり込めたやつ。最初っからそれを渡せばよかったんだろうけど。それをしなかったのは、俺のエゴだ。でも、もう友情ごっこもできなくなった今……。
「崇哉くん、元気してる?」
「は?」
突然現れた目の前のそれは、幻に違いないと思った。
「綾風が、ここに入れるわけがない……」
両親が張った結界は、何物も寄せ付けない。人間であろうが、妖怪であろうが、両親を上回る力を保有していなければ通れないはずで……。
「も~。八鹿って呼んでって言ったじゃん」
そう言ってむくれる彼は、確かに本物らしかった。でも、どういうわけか、いつも彼の側を飛んでいるはずの妖怪たちの姿が全くない。
「ああ、僕に憑いてた子たちは、さすがに通れなかったみたい」
「それじゃあ、お前は、どうやって入ったんだ……?」
「お見舞いだって言ったら、君のお母さんが入れてくれたんだ」
「母さんが?」
「そ。風邪って聞いたから、プリン持ってきた」
彼が掲げた袋には、プリンがいくつか入っていた。それを見た途端、俺は再び空腹を思い出し、彼の手から袋を奪い取った。
「他になんか食べ物持ってない?」
「ん~。あ、パンある」
「よこせ」
鞄を覗いてそう告げた彼から、再び食料を奪い取ると、俺は一心不乱に齧りついた。ずっしりと餡子の詰まったパンは、確実に俺の腹を満たしていく。こんなにも餡子がおいしいと思ったことがあっただろうか。
「何か大変だね。大丈夫?」
「ああ。どうしたもんかな。これじゃあ死ぬのを待つだけだ」
「お兄さんが死んじゃって悲しいだろうにね」
「俺が?」
「崇哉くん、本当はお兄さんのこと慕ってたんじゃないの?」
「ま、そうかもな。あっちにとっちゃ疎ましかったろうけど。俺は兄さんのこと、尊敬してたよ」
彼に言われて、初めて自分の気持ちに気づいた。確かに兄さんのことは、愚かで可愛そうな風よけだと思っていた。でも、同時に尊敬もしていたのだ。両親の期待に応えようとする姿勢は、俺には決して真似できない。だからこそ、眩しくも思えた。
「僕の胸貸してあげようか?」
「いらん。それよりも、お前にはこれをやる」
「お守り?」
「ああ。これさえ持っていれば、その憑りつかれ体質も少しはマシになるだろう」
「ありがとう! でも、こんなの、受け取れな……」
どっ。
「わっ」
「なんだ……?」
地面が激しく揺れたかと思うと、嫌な空気が立ち込める。
「妖気だ……」
遠くから漂うそれは、ここからでも感じ取れるほどに濃い。恐らく、数が多いのだろう。
『怪異が、あんなに! あの子がいないのに……!』
『馬鹿、急いで向かうぞ!』
壁越しに聞こえる両親の声は緊迫していて、ただ事ではないことが窺える。
「おい。お前はここにいろ」
「ちょっと、君はどうする気だい?」
「決まってる。行くんだよ」
「あ、ちょっと……!」
「やっぱり、学校か」
妖気の気配からして、学校付近だろうとは思っていた。が、間近で見ると、さすがに目を覆いたくなる。
夕焼けはまるで血糊のように赤々と辺りを染め上げて、妖怪たちを照らし出す。残っていた生徒たちは、既に覇気がなく、妖怪に憑りつかれ、酷い者はその身を引き裂かれ、食いちぎられている。
「くそ、やめろ!」
妖怪たちが人間をどうしようが俺には関係ない。そう思っていたけれど、襲われている人間の中には俺の見知ったクラスメイトもいる。例え、距離を置かれていたとしても、情くらいは湧くわけで。それを救う力が俺にあるというのなら、使わざるを得ないわけで。
「ねえ、本当に力を使っていいのかい?」
「八鹿! 来るなと言っただろうが!」
後ろから掛けられた声に、俺は振り向かず周囲の妖怪を祓う。が、どうにもキリがない。
「君は、跡継ぎになりたくないんだろ?」
「ああ」
「でも、君はやるんだ?」
「……」
「みんなまで死んだら悲しいもんね。君にだって、人間らしい感情ぐらいあるもんね?」
「悪かったな」
「いいんだ。所詮は君も非道にはなりきれなかったんだろう。でもさ」
含みのある声音に、思わず後ろを振り向くと、綺麗な唇がゆっくりと歪み出す。彼の手から落ちたお守りは、力なく地面に落ちる。
「本当に守りきれるのかな?」
「え?」
ざわっ。
辺り一面の空気が振動したかと思うと、怪異が一気に増え、俺を取り囲む。
「君はすごいよ? 妖怪相手によく戦ったよ。でもね……」
「俺を殺すか? 妖王」
「……なんだ、知ってたの?」
すぐ後ろに迫った彼に向かって静かに呟くと、彼は少し驚いたように声を上げる。
「気配消すの上手いから最初は気づかなかったけどさ。あんだけ不自然に妖怪くっつけて俺に執着してりゃ、嫌でも疑う」
「は~。なにそれ、ぜんっぜん楽しくない。興醒めもいいとこさ! 信頼してた相手に裏切られた君の、絶望した顔が見たくてここまで我慢してたのに!」
「くだらない」
まるで幼児のように頬を膨らませた彼。その可愛らしさとは対照的に、爪は鋭く尖り、頭には角が生え、目は赤く染まり。それは確かに鬼だった。隠す必要がなくなった途端にひしひしと、彼の人間ならざる力の気配が伝わって、場の空気を更に圧迫する。
「それが妖怪ってもんでしょ。純粋な妖は、人の驚く顔が大好物なの! さぁ恐怖してよ!」
「悪いけど、もう大抵のことじゃ驚けないよ」
「……は。ほんとつまんないよ、君」
「つまんないのはお前の方だろ。こんな雑魚ばっかり押しつけて。俺が殺せるとでも?」
「雑魚だって? よく見ろ。上級妖怪たちだぞ? ああ、お兄ちゃんに全部を押し付けていた君には見分けもつかない訳か」
「これで上級なのか。なるほどね。勉強になったよ」
「そうか。それじゃあ、そのちっぽけな知識と己の無力さを土産に、お兄ちゃんのとこに行きな。さよなら、崇哉くん」
どっ。
辺りに煙が立ち込める。俺にとってたった一人の友人が、容赦なく向けたその力。それは、確かにすさまじい威力を誇っていた。でも。
「な……」
「それで? もう終わり?」
愕然と佇む彼に、にやりと笑ってみせる。彼が驚くのも無理はない。なんせ、俺は彼の攻撃を丸々防いでみせたのだから。
「まさか……。どうして……。あの一瞬で僕の力を防げるわけがない!」
「うん。さすが妖王。人間を殺すにも全力だ。いくら俺でも瞬時には対応できなかったかも。でもさ、俺なりに手は打ってあるわけ」
「……これか」
「ご名答」
彼が少し考えて指し示した地面には、お守りが落ちていた。そう。本来なら詠唱しなければ張れない結界。それを瞬時に張れたのは、前もって彼に渡したお守りに言葉を込めておいたからだ。
「くそ。だから受け取りたくなかったんだよ。それなのに、無理やり押し付けやがって……。もっと早く捨てておけば……」
「ああ、俺ももっと早く渡しておけば、お前の暴走を抑えられたんだけどな。それ、お前の力を吸いとる術も掛かってるんだよ。持ってた時間が長いほど、お前の力は薄れ、お守りの力は強まるってわけだ」
「悪魔のような真似を……」
「鬼のくせに泣きごと言うなよ」
「はは。鬼を怒らせたこと、後悔するなよ!」
どっ。
彼の放った焔が、お守りを焼き尽くし、俺に向かって真っすぐ伸びる。
「やったか……?」
「ふ~。危ないなあ」
「嘘、だろ……?」
すんでのところで、焔に向かって札を投げる。これは、ウチの寺に伝わる由緒正しきお札だ。もちろん、何枚も用意してきたそれは、前もって全てに俺の力を込めてあるから、お守りよりも効力を発揮する。
「それはこっちの台詞だよ。こんなもんなの? 妖王ってさ!」
「っ……!」
弾き返した焔が彼を包み、苛む。その苦痛に歪んだ顔を見ていると、何故だか気持ちが高揚した。
「ほら、どうしたの? 友だちだから特別に遊んであげてんだよ?」
「聞いてない……、君がこんな、手に負えない力を、持ってるなんて……。まさか、妖王である僕にも勝る力が、人間にあるなんて……」
「うん。俺だって知らなかったよ。今まで碌に力を使ったことがなかったし。いやぁ、久々に力使ったからかな。なんか、すごく気分がいいんだ」
「ぐ……。こっちは、最悪だ、よ……」
「はは。胸貸してあげようか?」
「クソ、が……」
ついに膝を折った彼を見て、焔を消し、その頬を優しく撫でる。
「ねえ、八鹿。俺の力が欲しい?」
「は?」
俯いていた瞳が、真っすぐに向けられる。その赤を見ているだけで、気が変になりそうだった。いや、もうすっかりと変になっているのかもしれない。
「俺は、全ての力をお前にあげてもいいよ」
「おちょくっているのか? そんな冗談を言ってる暇があるのなら、さっさと殺せ」
「冗談じゃなくて提案だよ。俺がお前を殺しても、待っているのは寺の後を継ぐ運命だ。それこそ、ちやほやしてくれるだろうな。でも、俺はそんな人生お断りだ。今更両親の言いなりになんかなりたくないし、この力を妖怪退治だのに費やしたくない。だから、お前にこの力をやる」
「は、正気か? 力をくれるってんなら嬉しいが、僕はその力で、お前どころか人間という人間を全て殺して回るぞ?」
「いいや。君はそんなことをする妖怪じゃない。俺は君を信じているんだ」
「お前、あれが見えないのか?」
そう言って、彼が指したのはクラスメイトの亡骸。醜悪な姿になってしまったそれらは、確かに見ているだけで気分が悪くなる。が。
「あれ、お前が見せている幻だろ?」
「!」
目を丸くした彼を横目に、空に向けて札を飛ばす。すると、辺り一面にあった地獄が、いつも通りの静かな夕暮れに塗り替わってゆく。
「やっぱりね。他の妖怪たちも幻だったわけだ。手応えがないと思ったんだ」
「は~。まさか、僕の幻影を見破る人間がいるとはね。ほんと、君の力は底知れないな」
そう言って、ついに表情を崩した彼が、肩を竦める。それは、たとえ鬼の姿をしていても、変わらない、俺のたった一人の友人の顔だった。
「八鹿、お前は悪い妖怪じゃない。王でありながら、優しい心を持ち合わせている」
「だから、討伐対象じゃないってか? 甘いね」
「甘くて結構。俺はお前のことを想像以上に気に入ってるからな。甘やかしたくもなるんだ。その力は、俺のできなかった正義に役立ててくれ。必要以上に人間をいたぶる妖怪たちを取り締まるのは、元々お前の仕事だろ? 俺に尻拭いをさせる気か?」
「手厳しいじゃないか。全く。だが、君は力を失えば。待っているのは……」
「そうだな。用済みの俺はきっと両親に殺されるだろうな」
「だ、だったら、逃げればいい……」
「俺はまだほんの子どもだ。逃げきれたとしても、一人で生きていけるとも思えない」
「そんなこと……」
「なあ、だったらさ。力をあげる代わりに、俺を殺してくれ」
「……本気で言っているのか?」
「ああ。お前には悪くない条件だろう? そもそも、お前が俺に近づいたのは、むやみに妖怪たちを殺す明大寺家を潰すためなんだろ? 丁度いい」
「……僕は、君のお兄さんを殺した」
「そうだろうね。薄々気づいていたよ」
「なら、どうして?! お前は、少なからず兄を慕っていたはずだ。僕が憎いはずだ! 殺してくれだって? どうして……。どうして君は僕を責めないんだ!」
「責めて欲しいの? でも、駄目だ。お前を責めることなんてできない。俺の家族が罪もない妖怪たちをも葬ってきたことは知ってる。特に、兄はその実力を示すために必死で、見境なく妖怪を潰してたことも知ってるから。恨むことはできない」
「……はは。君はつくづく馬鹿だ。君は正義にも悪にもなれない。まるで……、僕と一緒じゃないか」
「そうかもな。だからこそ、俺は八鹿が好きだったよ」
「好きだなんて、易々と言える人間が羨ましいよ」
「俺は易々と好意を言葉にするような人間ではないんだけど?」
「……僕だって、君と過ごした疑似的な日常は、気に入っていたよ。でも、所詮僕は妖だ。君と過ごした時間なんて、僕にとってはほんの一瞬だ。年月を積み重ねるうちに、きっと忘れてしまう」
「それじゃあ、これで少しは忘れるのが遅くなるか?」
「んっ!? な、なにをするんだ!」
軽く触れただけのキスで、彼の頬は真っ赤に染まる。ああ、駄目だ。もう少しだけ、長く覚えておいてほしいな。
「八鹿……」
「んんっ……、っ、は……! や、めろ……! 妖怪相手に、こんなことして、楽しいかよ!」
更に深く口づけると、彼はさっき以上に目を潤ませる。赤い瞳がゆらゆらと宝石のように煌いて、俺はそれから目が離せなくなってしまう。
「うん。思った以上に楽しい……っていうか。は~、どうやら俺は、お前に欲情しているらしい」
「正気か?」
「さあ。俺は普通じゃないからな。お前が欲しくてたまらないよ」
「馬鹿が……。妖と体を重ねる気か? 後悔するぞ?」
「ああ、魂が穢れるとかいうやつ? いいよ、最初っから綺麗じゃないさ」
「駄目だ。穢れきった魂は、輪廻の輪に乗れず、地獄へと誘われてしまう。そうすれば君は、人間として生まれ変わることすらできなくなってしまう」
「いいよ。別に。どうせ生まれ変わったって、お前と一緒になれないんだろ? だったら、今ここで……」
目を細めながら、彼の腕を取る。そのまま三度目の口づけを果たそうとしたところで、彼が力強く腕を振り払う。
「やめろ。僕が良くないって言ってるんだ! ……君には次の人生こそ僕たちに関わらない普通の生活を送ってほしい。それが、人間にとっての幸せで……」
「じゃあ、殺せよ」
「くそ。君は、本当に性格が悪いな」
苛立った様子で彼がこちらを睨みつけたかと思うと、双眸がそっと閉じられる。感情を沈めるように深呼吸をした後、彼が再び目を開ける。そこにあるのは確かな決意だった。
「やる気になった?」
「ああ。そうだな。君がそこまで死にたいものとは思わなかった。だったら、僕は……」
彼の瞳と同じく赤々と燃える焔が目の前に灯る。
「少し痛むぞ」
「!」
綺麗だと思った。彼の手の平で燃え盛る焔が、俺の胸へと押し付けられる。ああ。熱い。体が、魂が、焼き尽くされる。熱い。でも。八鹿の赤はやっぱり綺麗で……。
「そのまま我慢しろよ?」
「え……?」
赤子をあやす様に優しく告げた彼が、己の指に鋭い牙を突き立てる。ぷつりと裂けた指の腹から流れる赤い血は、やはり美しい色をしている。一体、彼は何をしているんだ?
「ふ……」
視線に気づいた彼の唇が歪む。そして、滴り落ちる己の血を、その舌で舐め取ると……。
「……!」
彼は、焔に囚われたままの俺に口づけを落とした。それは、この世の薬を全て詰め込んだみたいに苦くて、この世の香辛料を全て詰め込んだみたいに辛くって、それでいてほんのりと甘かった。
「そのまま飲み込め」
言われた通りにそれを飲み込むと、一気に体の中が熱くなる。
「お前、何をしたんだ……?」
「ふん。君が死にたいと言うものだから、僕は君を生かしたんだ」
「生かした……?」
そう言えば、あんなに燃えていた焔がすっかりと消えている。
「妖が素直に言うことを聞くと思ったかい?」
「……お前は、どうやら俺の魂を本格的に穢したいようだな」
「好きなだけ穢すがいいさ。君はもう地獄に落ちることはない」
「ん……?」
「ふふ。そうさ。君はもう既に人間ではない。僕が君を鬼に変えたんだ!」
「ああ。なるほど。お前はそういうこともできるのか。早く言って欲しかった」
「……もう少し驚いてはくれないか?」
「驚いてるさ。お前はそこまで俺が好きなんだな、ってさ」
「な……」
言葉を詰まらせた彼を見て、確信する。ああ、この妖は本当に愛おしい。
「だって、簡単じゃないんだろ? 今のお前を見ればわかる。むしろ、イチかバチかの大勝負ってとこだろ」
「っ……」
「図星か。本当に、馬鹿なことをしてくれたな。これで俺はもう戻れない」
「……僕を恨むか?」
「まさか。最高の選択だよ。だって、これでようやくお前と愛し合える」
鋭い爪が彼の頬を傷つけないように、注意して撫でる。すると、彼の体が小さく震え、甘いため息を漏らす。
「君、は……。今、僕に、妖術を、かけたか……?」
「いや~。本当に鬼の力が使えるようになってんだね」
「今すぐ解け……!」
「あっれ。妖王のくせに解けないの?」
「くそ。やはり、君の力を、奪っておくべき、だったな……」
「詰めが甘いんだよ、八鹿はさ。ま、そんなとこが可愛くて好きなんだけど」
「あ……、駄目だって。は……。崇哉……」
「ああ八鹿。好きだ。愛してる」
結局、俺は立派な人間にはなれなかった。でも、所詮は両親に操られる人生だ。そんなものに未練などない。そんなくだらない世界から救い出してくれた八鹿には感謝してもしきれない。
欲は留まることを知らずに、八鹿をすっかり愛してゆく。ああ。何て幸せなのだろうか。
夕日で照らされて更に赤くなった瞳は、どんな色よりも綺麗で。俺は、それを守るためならば、人間さえ殺せると思った。
妖怪祓い×怪しい転校生。
人外が人間にいいようにされるのが好きです。最後が上手く纏まらなかった感。
明大寺 崇哉(みょうだいじ しゅうや)
お寺の息子。本当は絶大な力を持っているが、跡取りになりたくないがために隠している。
綾風 八鹿(あやかぜ ようか)
イケメン転校生。憑りつかれやすい体質のようで……?
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「親の都合で転校してきました、綾風 八鹿です。みんな、よろしくね?」
ある日のこと。うちの学校にイケメン転校生が来た。勿論、クラスの女子は彼を気に入って、SHRが終わるや否や、彼を囲んで尋問のような質問攻めをした。
あんなに囲まれて、気持ち悪くないのだろうか。……人間でないものにも囲まれて。
「イケメンくん」
「ん?」
「ゴミ、ついてたよ」
「ああ、ありがとね」
『ちょっと~! ゴミなんてついてないわよ!』『そうよ、明大寺は入ってこないでよ!』
親切心で女子に割って入ったのがいけなかった。イケメンに関わるもんじゃあないな。
総スカンを食らった俺は、大人しく席に着くと、読みかけの本に目を落とした。彼に関わるのはこれきりにしよう。そう決めていたのだけど……。
「君、明大寺 崇哉くん、だっけ?」
あれから一週間ほど経った頃。避けていたというのに、イケメン君の方から俺に話しかけてくるとは。
「僕さあ、今まで肩凝り酷かったのに、こっちに来てからあっさり治ったんだよね」
「あ~。空気いいからね、ここ」
「そうそう。なんか有名なお寺があるから、ここは他より綺麗なんだってね」
「ああ、そうかもね」
「んで、そのお寺の息子が明大寺くんなんだってね」
「……それで?」
食えないやつだと思った。へらへらしている割に、どうにも目つきが鋭すぎる。
「うん。もしかしたらあの日、君が、僕に憑りついてた悪霊を祓ってくれたのかなって」
「俺にそんな力ないよ」
「え~。本当に~? でも、お寺の息子だったらさ~。ありそうだよ~? 跡取りなんでしょ~?」
「いや、俺は力がないから継がないし……」
「えっ。ほんとに力とかあるんだ! え、ってことは、君のお父さんはあるの? あ、明大寺くんの髪型が坊主じゃないのは継がないからなの?」
「……うるさい」
「いて」
ぺちりと彼の額を叩く。すると、うざったいほど周りを飛んでいた妖怪たちが、一斉に逃げてゆく。
「って。あ、また体が軽くなった。やっぱ力あるでしょ?」
「……」
彼の言う通り、俺は力を持っていた。だけど、寺を継ぐのは面倒臭いから親にもバレないように無能を装い、嘘を吐き通していた。だから極力、力を使いたくないのだけど……。
「ねえねえ明大寺くん~。お願い、アレもう一回だけやって! 体が重くて仕方がないんだよ~」
一度ならず二度までも祓ったせいで、彼は完全に俺の力を信じてしまった。
「知らないって言ってるだろ? そんなに祓って欲しければ、うちの寺で父さんか兄さんに頼んでくれ」
「でもそれ、結構な値段するよね? 僕、学生だよ? バイトもしてないし、一人暮らしだし……。ね、ね? 絶対誰にも言わないからさ!」
俺だって、鬼ではない。クラスメイトにこれだけ頼み込まれては、折れずにいられない。それに、目の前であれほどの妖怪たちを携えられては、こちらの気持ちが穏やかではない。
「本当に、誰にも言わないんだな?」
「うん! 言わない!」
こうして俺は定期的に、彼に憑いた妖怪たちを祓ってやることになった。
「明大寺くんってさ、いつも一人でいるよね。なんで?」
「さあね」
「いじめられてる?」
「っていうか、避けられてんだよ。お祓いとかって胡散臭いだろ?」
「そう? かっこいいけど」
「お前は実際に被害に遭ってるからそう言えるんだろ。一般人はそもそも妖怪とか幽霊とか信じてないんだよ。だから、お祓いで生計立ててるウチとは関わりたくないんだろうさ」
「明大寺くんの性格にも問題があると思うけどな」
「うるさいな。ていうか、名字で呼ぶのはやめてくれ。嫌いなんだよ」
「かっこいいのに。まあいいや。そんじゃあ崇哉くんね」
「くん付けとか、幼稚園かよ」
「じゃ、僕のことは八鹿って呼んでよ」
「わかったよ。イケメンくん」
「わかってないじゃん! なんだよ、イケメンくんって!」
「はは。むくれるとイケメンが台無しだぞ?」
「キャッ、褒め殺し! 抱いて!」
「ば~か!」
正直に言うと、彼にこうして懐かれるのは悪くなかった。まるで自分が普通の男子高校生になったような気がしたからだ。
彼は、お祓いのお礼にと俺を色んな場所に連れて行った。カラオケだのゲーセンだのファミレスだの。一人では入る勇気も気力も起きなかった場所は、思っていた以上に楽しくて。本当に。こんな毎日がずっと続けばいいと思ってしまった。ずっと、彼が妖怪に憑りつかれ続けてくれればいいとさえ思ってしまった。
でも、やはり俺は普通にはなれなかった。
唐突に、兄が死んだ。俺は、罰が当たったんだと思った。
「崇哉、貴方の力を覚醒させる他ないの」
「そんな。母さん、俺にはそんな力ないって……」
「最期に直哉が言っていたんだ。お前には力があるって。なあ、まさかお前、隠しているんじゃなかろうな?」
両親は俺を責め立てた。今まで俺に目もくれなかったくせに。俺は、兄を疎んだ。どうして俺の普通を奪うんだ。
「俺には、兄さん程の力はありません!」
勿論、俺は普通を装って、抵抗した。でも。
「もういい。崇哉を閉じ込めろ。飯は与えるな」
「でもアナタ……」
「能力を使えば出られるんだ。これではっきりするだろう」
「もし力がなかったら……」
「力のない者は明大寺に要らない」
父は言い切った。俺の価値など所詮は力次第だと。母は俺と目が合った瞬間に、気まずそうに視線を逸らした。自分の子どもを救えるだけの度胸はないらしい。今更、二人に期待していたわけではない。けれども、さすがの俺でも、傷つかずにはいられなかった。
「くそ。なんで兄さんはそんなことを言ったんだ……」
それが良心なのか、嫌がらせなのかは今となっては確かめようがない。
俺は兄に疎まれていた。幼い頃、一度だけ兄の前で力を使ったことがあった。それは、兄を上回るほど大きな力で。それを見た兄は、まだ幼かった俺に、力を使うなと脅した。
『オレは長男としての力を期待されているんだ。それをお前に奪われるなんて、考えたくもない!』
俺は、兄の意向に従った。兄に同情したのではない。圧をかけられている兄を見て、自分にお鉢が回ってくるのは勘弁してほしいと思ったからだ。俺は正義感を持てなかった。兄のように、親の期待に応えたいという意志もなかった。だから、こんな力はいらなかった。それなのに。
閉じ込められて丸一日が経った。たった一日だというのに、俺の腹は限界だというように激しい音で空腹を訴える。
「どうしたもんかなあ……」
大人しく捕まっていても、待っているのは死。かといって、力を使って脱出できたとしても、両親は血眼になって俺を探すだろう。もし捕まったら、両親の操り人形として一生を潰されてしまう。俺は兄のようにはなりたくなかった。そんな風に利用されるだけならば、死んだ方がマシだとさえ思えた。
「は~。アイツ、どうしてるかな……。妖怪に憑り殺されてないといいけど。な~んて」
人の心配をしている場合ではないとわかっていながら、どうしても頭は彼の笑顔を描き出す。
もう一度だけ、会いたいな……。会ってどうするわけでもないけど……。いや、せめて、お守りを渡してやりたいな。俺の力をたっぷり込めたやつ。最初っからそれを渡せばよかったんだろうけど。それをしなかったのは、俺のエゴだ。でも、もう友情ごっこもできなくなった今……。
「崇哉くん、元気してる?」
「は?」
突然現れた目の前のそれは、幻に違いないと思った。
「綾風が、ここに入れるわけがない……」
両親が張った結界は、何物も寄せ付けない。人間であろうが、妖怪であろうが、両親を上回る力を保有していなければ通れないはずで……。
「も~。八鹿って呼んでって言ったじゃん」
そう言ってむくれる彼は、確かに本物らしかった。でも、どういうわけか、いつも彼の側を飛んでいるはずの妖怪たちの姿が全くない。
「ああ、僕に憑いてた子たちは、さすがに通れなかったみたい」
「それじゃあ、お前は、どうやって入ったんだ……?」
「お見舞いだって言ったら、君のお母さんが入れてくれたんだ」
「母さんが?」
「そ。風邪って聞いたから、プリン持ってきた」
彼が掲げた袋には、プリンがいくつか入っていた。それを見た途端、俺は再び空腹を思い出し、彼の手から袋を奪い取った。
「他になんか食べ物持ってない?」
「ん~。あ、パンある」
「よこせ」
鞄を覗いてそう告げた彼から、再び食料を奪い取ると、俺は一心不乱に齧りついた。ずっしりと餡子の詰まったパンは、確実に俺の腹を満たしていく。こんなにも餡子がおいしいと思ったことがあっただろうか。
「何か大変だね。大丈夫?」
「ああ。どうしたもんかな。これじゃあ死ぬのを待つだけだ」
「お兄さんが死んじゃって悲しいだろうにね」
「俺が?」
「崇哉くん、本当はお兄さんのこと慕ってたんじゃないの?」
「ま、そうかもな。あっちにとっちゃ疎ましかったろうけど。俺は兄さんのこと、尊敬してたよ」
彼に言われて、初めて自分の気持ちに気づいた。確かに兄さんのことは、愚かで可愛そうな風よけだと思っていた。でも、同時に尊敬もしていたのだ。両親の期待に応えようとする姿勢は、俺には決して真似できない。だからこそ、眩しくも思えた。
「僕の胸貸してあげようか?」
「いらん。それよりも、お前にはこれをやる」
「お守り?」
「ああ。これさえ持っていれば、その憑りつかれ体質も少しはマシになるだろう」
「ありがとう! でも、こんなの、受け取れな……」
どっ。
「わっ」
「なんだ……?」
地面が激しく揺れたかと思うと、嫌な空気が立ち込める。
「妖気だ……」
遠くから漂うそれは、ここからでも感じ取れるほどに濃い。恐らく、数が多いのだろう。
『怪異が、あんなに! あの子がいないのに……!』
『馬鹿、急いで向かうぞ!』
壁越しに聞こえる両親の声は緊迫していて、ただ事ではないことが窺える。
「おい。お前はここにいろ」
「ちょっと、君はどうする気だい?」
「決まってる。行くんだよ」
「あ、ちょっと……!」
「やっぱり、学校か」
妖気の気配からして、学校付近だろうとは思っていた。が、間近で見ると、さすがに目を覆いたくなる。
夕焼けはまるで血糊のように赤々と辺りを染め上げて、妖怪たちを照らし出す。残っていた生徒たちは、既に覇気がなく、妖怪に憑りつかれ、酷い者はその身を引き裂かれ、食いちぎられている。
「くそ、やめろ!」
妖怪たちが人間をどうしようが俺には関係ない。そう思っていたけれど、襲われている人間の中には俺の見知ったクラスメイトもいる。例え、距離を置かれていたとしても、情くらいは湧くわけで。それを救う力が俺にあるというのなら、使わざるを得ないわけで。
「ねえ、本当に力を使っていいのかい?」
「八鹿! 来るなと言っただろうが!」
後ろから掛けられた声に、俺は振り向かず周囲の妖怪を祓う。が、どうにもキリがない。
「君は、跡継ぎになりたくないんだろ?」
「ああ」
「でも、君はやるんだ?」
「……」
「みんなまで死んだら悲しいもんね。君にだって、人間らしい感情ぐらいあるもんね?」
「悪かったな」
「いいんだ。所詮は君も非道にはなりきれなかったんだろう。でもさ」
含みのある声音に、思わず後ろを振り向くと、綺麗な唇がゆっくりと歪み出す。彼の手から落ちたお守りは、力なく地面に落ちる。
「本当に守りきれるのかな?」
「え?」
ざわっ。
辺り一面の空気が振動したかと思うと、怪異が一気に増え、俺を取り囲む。
「君はすごいよ? 妖怪相手によく戦ったよ。でもね……」
「俺を殺すか? 妖王」
「……なんだ、知ってたの?」
すぐ後ろに迫った彼に向かって静かに呟くと、彼は少し驚いたように声を上げる。
「気配消すの上手いから最初は気づかなかったけどさ。あんだけ不自然に妖怪くっつけて俺に執着してりゃ、嫌でも疑う」
「は~。なにそれ、ぜんっぜん楽しくない。興醒めもいいとこさ! 信頼してた相手に裏切られた君の、絶望した顔が見たくてここまで我慢してたのに!」
「くだらない」
まるで幼児のように頬を膨らませた彼。その可愛らしさとは対照的に、爪は鋭く尖り、頭には角が生え、目は赤く染まり。それは確かに鬼だった。隠す必要がなくなった途端にひしひしと、彼の人間ならざる力の気配が伝わって、場の空気を更に圧迫する。
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「……は。ほんとつまんないよ、君」
「つまんないのはお前の方だろ。こんな雑魚ばっかり押しつけて。俺が殺せるとでも?」
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「そうか。それじゃあ、そのちっぽけな知識と己の無力さを土産に、お兄ちゃんのとこに行きな。さよなら、崇哉くん」
どっ。
辺りに煙が立ち込める。俺にとってたった一人の友人が、容赦なく向けたその力。それは、確かにすさまじい威力を誇っていた。でも。
「な……」
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愕然と佇む彼に、にやりと笑ってみせる。彼が驚くのも無理はない。なんせ、俺は彼の攻撃を丸々防いでみせたのだから。
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「うん。さすが妖王。人間を殺すにも全力だ。いくら俺でも瞬時には対応できなかったかも。でもさ、俺なりに手は打ってあるわけ」
「……これか」
「ご名答」
彼が少し考えて指し示した地面には、お守りが落ちていた。そう。本来なら詠唱しなければ張れない結界。それを瞬時に張れたのは、前もって彼に渡したお守りに言葉を込めておいたからだ。
「くそ。だから受け取りたくなかったんだよ。それなのに、無理やり押し付けやがって……。もっと早く捨てておけば……」
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「悪魔のような真似を……」
「鬼のくせに泣きごと言うなよ」
「はは。鬼を怒らせたこと、後悔するなよ!」
どっ。
彼の放った焔が、お守りを焼き尽くし、俺に向かって真っすぐ伸びる。
「やったか……?」
「ふ~。危ないなあ」
「嘘、だろ……?」
すんでのところで、焔に向かって札を投げる。これは、ウチの寺に伝わる由緒正しきお札だ。もちろん、何枚も用意してきたそれは、前もって全てに俺の力を込めてあるから、お守りよりも効力を発揮する。
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「っ……!」
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「はは。胸貸してあげようか?」
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ついに膝を折った彼を見て、焔を消し、その頬を優しく撫でる。
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「……はは。君はつくづく馬鹿だ。君は正義にも悪にもなれない。まるで……、僕と一緒じゃないか」
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「好きだなんて、易々と言える人間が羨ましいよ」
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「……僕だって、君と過ごした疑似的な日常は、気に入っていたよ。でも、所詮僕は妖だ。君と過ごした時間なんて、僕にとってはほんの一瞬だ。年月を積み重ねるうちに、きっと忘れてしまう」
「それじゃあ、これで少しは忘れるのが遅くなるか?」
「んっ!? な、なにをするんだ!」
軽く触れただけのキスで、彼の頬は真っ赤に染まる。ああ、駄目だ。もう少しだけ、長く覚えておいてほしいな。
「八鹿……」
「んんっ……、っ、は……! や、めろ……! 妖怪相手に、こんなことして、楽しいかよ!」
更に深く口づけると、彼はさっき以上に目を潤ませる。赤い瞳がゆらゆらと宝石のように煌いて、俺はそれから目が離せなくなってしまう。
「うん。思った以上に楽しい……っていうか。は~、どうやら俺は、お前に欲情しているらしい」
「正気か?」
「さあ。俺は普通じゃないからな。お前が欲しくてたまらないよ」
「馬鹿が……。妖と体を重ねる気か? 後悔するぞ?」
「ああ、魂が穢れるとかいうやつ? いいよ、最初っから綺麗じゃないさ」
「駄目だ。穢れきった魂は、輪廻の輪に乗れず、地獄へと誘われてしまう。そうすれば君は、人間として生まれ変わることすらできなくなってしまう」
「いいよ。別に。どうせ生まれ変わったって、お前と一緒になれないんだろ? だったら、今ここで……」
目を細めながら、彼の腕を取る。そのまま三度目の口づけを果たそうとしたところで、彼が力強く腕を振り払う。
「やめろ。僕が良くないって言ってるんだ! ……君には次の人生こそ僕たちに関わらない普通の生活を送ってほしい。それが、人間にとっての幸せで……」
「じゃあ、殺せよ」
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「やる気になった?」
「ああ。そうだな。君がそこまで死にたいものとは思わなかった。だったら、僕は……」
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「!」
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彼は、焔に囚われたままの俺に口づけを落とした。それは、この世の薬を全て詰め込んだみたいに苦くて、この世の香辛料を全て詰め込んだみたいに辛くって、それでいてほんのりと甘かった。
「そのまま飲み込め」
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「生かした……?」
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「な……」
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