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016 今後の目標

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 洞窟に戻ったら謎の集落から回収した戦利品を眺めるわけだが――。
 問題が発生した。

「「「Fooooooooooo!」」」

「あ、おい、待て! ステイ! カムバック! 戻れ!」

「「「Wow! Wow! Fooooooooo!」」」

 ダチョウどもがヒップでホップな音頭をとりながら逃げていったのだ。

「あーあ、せっかく名前まで考えたのに……」

 サナエが悲しそうな顔で「ジョセリーヌ」と呟いた。
 もしかしてダチョウの名前だろうか。
 だとするととんでもないネーミングセンスである。
 気になるところが、訊くと長引きそうなので無視しておいた。

「どっか行っちまったものは仕方ない。戦利品を確認しよう」

 持ち帰ったものを洞窟に並べる。

「こうして見てもフライパンと鍋が目立つな」

「数だけなら水泳ゴーグルも多いけど小さいからねー」とミズキ。

「なんかどれも私たちにとってありがたい物ばかりじゃない?」

 アキノが言った。

「それは俺も思った」

「どういこと? こんな環境じゃなんだってありがたいでしょ?」

 サナエは分かっていないようだ。

「そうなんだけど、アキノが言っているのは“自分たちじゃ調達しづらい物”ってことだ。例えばフライパン。必要だからといって簡単には作れないだろ?」

「あーたしかに!」

「鍋もそうだ。見たところただの鉄鍋だが、自分たちで作ろうと思ったらかなりの時間を費やすことになるだろう」

「鉄製品がありがたいってことだ!」

「まぁそんな感じだ」

 鉄とは無縁だがゴーグルもありがたい。

「とりあえず戦利品に不要な物は何もない。風に飛ばされないよう洞窟の奥に保管して大事に使わせてもらおう」

「「「了解!」」」

 懐からスマホを取り出す。
 相変わらず圏外だが時刻の確認は可能だ。

「今は13時だ。1時間ほど休憩しよう」

 朝から動きっぱなしで疲れた。
 無理は禁物だ。

 ◇

「よーし、午後の作業内容を決めるとしよう」

 昼食後、俺たちは洞窟の外に集まった。

「とりあえず今後の目標を再確認しない?」

 アキノが提案した。

「目標は一つ! レベル999!」

 ミズキが馬鹿なことを言う。
 それに対してお馬鹿なサナエが「オウイエ!」と拳を突き上げる。
 アキノは真顔で「違う」と否定し、二人を黙らせた。

「真面目な話、ちょっと余裕ができてきたし、そろそろ先のことを考えて動いてもいい頃じゃないかなって私は思う」

「それには俺も同感だ。謎の集落に行ったことで少し逸れちまったが、もともとの予定は丘の頂上から周囲を見て予定を考えることだった」

「だよね。で、リーダーのユウマとしてはどうするのがいいと思う?」

 皆の視線が集まる。

「うーん……」

 俺は少し考え込んだ。

「個人的な意見としてはもっと北側を探険したいかな。丘から見た限りだと、北は見渡し尽くせないほど広がっていた。遠いけど何カ所か丘があるし、そこらを目指していいんじゃないかと思う」

「北東のほうに大きな山があるよね」とサナエ。

「そうだな。ここからだと見えないが大きな山がある」

「あそこを次の目的地にする?」

「いや、それはやめよう」

「なんでさー!」

「この装備で高い山を登るのは無謀だ」

 俺たちの服装は制服で、靴は学校指定のローファーだ。
 転移前に履いていたスニーカーはどこかへ消えてしまった。
 山に登るならそれなりの装備が欲しい。
 もしくは先ほどまで使っていたダチョウのような乗り物が必要だ。

「登るのは大して高くない丘でいいと思う。で、そのために今後は移動用の準備を整えよう。日帰りで済めばそれにこしたことはないが、場所によっちゃ野宿を余儀なくされるだろうからな」

「保存食とか作るわけか!」

「そうだ」

「つまり今まで変わらないじゃん!」

「まぁそうだな」と笑う。

 こういう環境だと昨日の今日で大きく変わることはない。
 日進月歩、万里の道も一歩からだ。

「ということで、保存食の備蓄を増やしたり、行軍に使えそうな物を作ったり、色々としていこうか」

「はい! 先生!」

 手を挙げたのはミズキだ。

「先生ではないが……どうした?」

「私、布作り担当でオナシャス!」

「布作り?」

「植物から取った繊維で糸を作って、その糸で布を作ります!」

「作り方は分かるのか?」

「分かるよー! 編むか織るかすりゃいいんでしょ?」

「そうだな」

「なら任せて! これでもかつて手芸部で機織りをした経験がありましてね」

「よっ! 部活に入ってはすぐに極めて辞める女!」

 褒めているのか分からぬサナエの声が飛ぶ。
 ミズキは謎にグラマラスなポーズを決めながら「ふふん」とドヤ顔。

「布はたくさん欲しいから作ってくれるなら助かるよ」

「ほいさ! じゃあ私は植物の採取に行ってきます!」

 ミズキは敬礼すると、石斧と弓を持って森に消えていった。

「私はドライフルーツを作るよ。サナエやコトハは新しいことしたいだろうし」

「さっすがアキノ、私とコトハのことを分かってるぅ!」

「まぁね」と笑ってアキノも作業開始。

 俺が指示するまでもなく分担が決まっていく。

「これで残すはサナエとコトハだな」

「私はユウマに特技を証明しようと思う!」

「特技?」

 サナエは自信に満ちた顔で頷いた。

「毒かどうか判別できる特技!」

「ああ、そんなこと言っていたな」

「この島には色々なキノコがあるでしょ? その中から食用のキノコだけ持って帰ってくるよ!」

「食用かどうか誰が判定するの?」とコトハ。

「そりゃユウマでしょ!」

「キノコの種類ってめっちゃ多いよ。さすがにユウマ君でも……」

「できるよ」

「えっ」

「未踏の地を生きる上でキノコ食は欠かせないからな。キノコの情報なら頭に叩き込んである。キノコ鑑定士の資格もあるよ」

「そんな資格が存在するの!?」

 驚くコトハ。
 サナエも「なんか分からないけどスゲー!」と吠えている。

「日本には存在しないガーナ共和国の資格だ。余談だが、日本にも『菌類インストラクター』やら『きのこアドバイザー』というキノコ関連の資格がある」

「つまりユウマなら毒キノコかどうか分かるってことよ!」

 サナエのセリフに「そういうこった」と頷いた。

「すごいなぁユウマ君」

「いや、もしもしコトハさん? 私だって毒キノコかどうか判定できるんだけど?」

「でもサナエはうっかり食中毒になりかけたことあるしなぁ。鉄の胃袋なのもかえって信ぴょう性を落としているっていうか」

「くぅー! 全ての菌をぶち殺す自分の胃が憎い!」

「あはは」

「ま、やる気があるのはいいことだ。じゃあサナエには食材の調達をお願いしよう。キノコ以外の食材でも美味そうなのがあったら持って帰ってきてくれ。戻ったら大丈夫かどうかチェックする」

「りょー!」

 サナエは「うおおおおおお!」と吠えながら走り去った。

「二人きりだね! ユウマ君!」

 コトハがニコッと微笑む。
 天使のような笑みに加えて大きなおっぱいが揺れている。

「おほほ、お、おおう……!」

 俺はニタァと笑ってしまった。
 心なしか勃起しているような気がする。

「私はよかったらユウマ君と一緒に作業したいなー」

「え! 俺と!?」

 自分で思った以上に大袈裟なリアクションになってしまった。
 不意打ちに驚いたのと、可愛い女子に一緒がいいと言われて嬉しかったのだ。

「だってユウマ君の傍にいたら新鮮な経験ばっかりで楽しいんだもん!」

「なるほど……!」

 これはチャンスかもしれない。
 俺は童貞で恋愛経験もないので分からないがそんな気がする。
 ここでいい感じのところをアピールできれば距離が縮まりそうだ。
 そうなれば夢の童貞卒業も……!

「どうしたの? ユウマ君」

「え、いや、なんでも!」

「そう……」

 コトハが悲しそうな声で言う。
 彼女の視線は俺の顔――よりも下を見ていた。

「ん? ……って、これはぁ!」

 驚くほど勃起していた。
 ズボンがパンパンに膨らんでいる。

「ユウマ君……」

「いや、これは生理現象ってやつで! 気にしないで!」

 コトハは口に手を当て「あはは」とお淑やかに笑った。

「大丈夫だよ。男の子って勝手に大きくなっちゃうことがあるんでしょ? 恥ずかしいよね」

「ま、全くだよ! ごめんな、なんか、ヘンになっちゃって!」

「いいよー! それで、私たちは何をする?」

 俺は「そうだなぁ」と考えようとする。
 だが、すぐに閃いた。

「今までに見たことのないであろう狩りをしよう!」

「狩り!?」

「今回の敵はイノシシやヘビと違って怖くない」

「そうなんだ! 何を狩るの?」

「それは着いてからのお楽しみさ!」

 コトハに石斧と石包丁を持たせ、俺自身は弓矢を装備。

「行こう!」

「うん!」

 コトハとともに出発する。
 至高のジビエ肉とも言われる極上の獲物を狩るための冒険に――。
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