うちのメイドは、只者ではありません。

文字の大きさ
9 / 19
第一章

頭の中を整理しましょう

しおりを挟む

  陛下や殿下に対しての不敬にもなる不躾は、国の為だったととくに御咎めはないと、あの後陛下より言われました。
  少しだけ息をし易く感じるのは、気のせいではないでしょう。

「お嬢様、如何でしたか?」

  お父様からのお叱りを受ける前に、 「少し考える時間を下さい」と部屋に逃げたけれど、リーナへの報告は避けられません。

「リーナ、ごめんなさい」

  私の言葉を聞いた瞬間に、何かを察したようにリーナが固まりました。それだけで尚更、申し訳なさが襲ってきます。

「陛下には御理解頂けそうだったのだけど、殿下に御理解頂けなくて…」

  事の経緯を全て話ながら、リーナの顔が見れなくなってしまう。
  あんなに気合を入れて準備をしてくれて、私の為にと教えてくれたのに、そんなリーナに出来ませんでしたなんて。自分が情けなくて、涙が出てきそうです。

「お嬢様、もう一度全てを整理致しましょう」
「全て?」
「はい。私の知っている小説と、今の状況を照らし合わせてみましょう」

  リーナは思ったよりも落ち込んでもなく、むしろ打開策があるはずと言わんばかりに、目を輝かせている。出来すぎたメイドのリーナには、頭が上がりません。

  「まず小説では、陛下と顔を合わせる機会が多いのはお嬢様でしたが、実際にはサーシャ様が多く、お嬢様は幼少の頃に会ったきり」
「そうね。サーシャは社交界デビューしてから今日まで、ハウス家の娘としてしっかりと役目を果たしてるもの」

「そして作物を育てる事に夢中になっていたのはサーシャ様で、お嬢様は見向きもしませんでした」
「だけど実際の私たちは真逆と言うか、サーシャも作物については学んでいるけれど、育てる事はないものね」

  たったこれだけでも、リーナの知る状況とは似ても似つかぬ現実です。

「サーシャの見た目はそのままと言ったけど、私は瞳が漆黒で他はハウス家の容姿だったのよね?」
「左様にございます」

  実際の私の髪は漆黒で、瞳は薄いグレー。何かこの容姿で、世界が変わってしまったのでしょうか。
  漆黒の髪は魔女の髪だと、そんな噂など信じなければ良いのだけど、そんな力が働いたのではないかと思ってしまいます。

「容姿が変わっているのは私だけ?」
「不思議なことにお嬢様の容姿だけ、小説と異なります」
「何か意味があるのかしら?」
「意味があるのだとしたら、小説とは異なる未来があると信じています」

  リーナの真剣な顔に、彼女の優しさを感じます。、彼女は変わると信じてくれているのだから。

「リーナ、殿下は何故婚約破棄を嫌がるのかしら?」
「私の予想としては、二通りございます」
「二通り?」

  私には一つとして浮かばない理由が、彼女には二つも浮かんでいるらしい。
  リーナは小説を直接読んでいるのだから、この後の展開にも何か思い当たることがあるのでしょうか。

「まず一つ目は、既に殿下とサーシャ様が心を通わせている可能性です」
「素敵!でも、サーシャは本当に喜んでくれているみたいだったのよ?」
「ですので、二つ目が濃厚かと存じます」
「ぜひ聞かせて」

  もしも既に心を通わせているのなら、殿下が破棄をしない理由と、サーシャが喜んでくれる理由が必要になってしまいます。
  つまり、その可能性は低い気がするのです。それはリーナも感じている様で、二つ目の可能性が高いと思っているみたいです。

「殿下が一目見て気に入ったのが、現実ではお嬢様という可能性です」

  リーナは何を思ったのか、一番ありえない言葉を言った気がします。

「それこそ可能性を感じられないと思うのだけど」
「何故ですか?」
「だって殿下は、一目でサーシャに心を寄せたのでしょう?その理由は、サーシャの容姿も含めてだと思うの。そしたら私は、逆立ちをしたって見向きもされないでしょう」

  そう、サーシャの容姿とは似ても似つかぬ私なのですから。
  もしも私がサーシャの様に人目を惹く容姿をしていたのなら、あるいは自分の容姿に自信があったのならそれも考えたでしょう。
  けれどどちらでもない私は、それだけはありえないと分かります。

「お嬢様は髪の色と瞳の色が他の方と違うだけで、とても美しいことを理解してくださいませ」
「ありがとう。そんな事を言ってくれるのは、リーナだけね」
「お嬢様が社交界に顔を出せば、皆から言われますよ」

  まったく心外だと言わんばかりに、顔を膨らませて怒るリーナは、本音でそう言ってくれているのだろうと思う。
  嬉しいけれど、を知らないほど、もう幼くない。

「リーナ、話を戻しましょう」

  まだ何か言いた気なリーナですが、まずは殿下との婚約破棄をする為に整理です。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

処理中です...