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番外編ー清劉戦ー
戦の前の憂い 2
「問題は持久力だけですね。あとはさすがと言うべきか、もともとお持ちの技術や瞬発力は衰えていません」
「そうか、、、」
華南の報告を受けて、冬隼は大きく息を吐いて、上掛けを羽織ると衝立から姿を現す。
「間に合いそうか?」
そう目の前に立つ華南に問えば彼女は力強く頷く。
「大丈夫でしょう!突然無理に動かしてもいけないことはご本人が理解されていますから」
その言葉にもう一度大きく息を吐く。
やはり昨日の自分の物言いは、翠玉に対し失礼なものであったのだと自己嫌悪に陥る。
「分かった。引き続き頼む」
それだけ伝えれば、華南は「はい」と返事をして、戸口に控えていた隆蒼と退室していった。
+++
「もぅ本当に殿下ってば過保護なんだからぁ」
部屋を出て廊下を歩きながら、華南は隣を歩く夫にごちる。
そんな妻の様子をちらりと横目で見て、隆蒼は小さく息を吐いた。
「俺は、殿下の気持ち少し気持ちわかるがなぁ?」
「ん?私なのに?」
立ち止まった華南が理解できないという風に、見上げてくるので、隆蒼は眉を上げて肩を竦める。
「お前だからだ。同じような破天荒な妻を持つ夫の礒だな」
そう言って、「行くぞ」と顎で先を指せば、華南は釣られたように歩き出した。
「ねぇ、それは愛されていると思っていいのかしら?」
しばらく無言で歩き、夫の裾をつかむと、隆蒼は一度ちらりと華南に視線を向けて、すぐにふいっと視線を逸らせた。
逸らせた横顔と、、、耳がほのかに赤いのを見とめて、華南は口元が自然と上がるのを感じた。
夫婦になって、もうすぐ1年が経とうとしている。付き合いで言えばもう10年以上。それなのに時々みせる彼のこういう仕草は、なんだかかわいい。
「ふふふっ」
ぎゅうっと夫の腕に抱きつくと、バツの悪そうな、それでいて少し照れた相貌と目が合った。
++++
冬隼が、部屋に入れば、翠玉は春李の籠に手を差し入れてくすくすと笑っていた。
冬隼が入室してきた気配に気づいているはずなのに、彼女はこちらに視線を向けない。
まだ怒っているのだろうか。
少し重たい気分になりながらもゆっくりと近づいて、細く小さな背中を後ろから抱きしめる。
ビクリと驚いたように肩を震わせたものの、翠玉は振り払う事はなかった。
よかった。昨日ほどの拒否はされないらしい。
「すまなかった」
翠玉の耳元に唇を寄せて囁く。ぎゅうっと、籠に添えていた彼女の手に力が入ったのが分かった。
籠の中を覗き見れば、春李は気持ちよさそうにすやすやと眠っている。
「っ、私こそごめん。余裕がなくて」
息をつめた囁くような声で翠玉が詫びる。その首筋に顔を寄せて、さらに力を込めて彼女を抱きしめた。
「いや、そこを補うのが俺の役割なのに、俺が不安になってしまったのが悪い。華南から聞いた、焦らずやっていこう、俺も付き合うから」
翠玉が驚いたようにこちらを振り返るので、紅を塗っていない柔らかそうな唇に口付ける。
しばらく互いに軽い口づけを交わし合って、身体を向かい合わせると、じっくりと視線を合わせる。
「ありがとう。実をいうとね。今日、華南と打ち合ってみてあまり心配はないなってわかっちゃったの」
少し申し訳なさそうに肩を竦めて言った翠玉の言葉に、冬隼も苦笑する。
どうやら華南の報告通りらしい。しかし、どこか浮かない顔の翠玉の様子に、首を傾けると、彼女は視線を籠の中で眠る春李に移す。
「それよりも、この子を置いていくことが気になっちゃって」
母の視線の先で、春李は握った手をもぞもぞと動かしている。
「たしかに、、、そうだな」
乳母が付くようになったとはいえ、やはり目の届かない場所に行くのは不安である。まだ首も座らぬ赤子を置いていく事は父親である冬隼ですら心配で仕方ないのだ。母親の彼女の気持ちはいかばかりだろうか。
翠玉の肩を包む手に力を籠める。
「とっとと終わらせて、さっさと帰ってくるぞ。わが子の成長を片時も見逃したくはないからな」
最短で行けば2週間ほどで片付く。そこまで翠玉を無理させるわけにはいかないが、なるべく早く戻れるよう最大の働きをしようと冬隼は誓うのだった。
「そうか、、、」
華南の報告を受けて、冬隼は大きく息を吐いて、上掛けを羽織ると衝立から姿を現す。
「間に合いそうか?」
そう目の前に立つ華南に問えば彼女は力強く頷く。
「大丈夫でしょう!突然無理に動かしてもいけないことはご本人が理解されていますから」
その言葉にもう一度大きく息を吐く。
やはり昨日の自分の物言いは、翠玉に対し失礼なものであったのだと自己嫌悪に陥る。
「分かった。引き続き頼む」
それだけ伝えれば、華南は「はい」と返事をして、戸口に控えていた隆蒼と退室していった。
+++
「もぅ本当に殿下ってば過保護なんだからぁ」
部屋を出て廊下を歩きながら、華南は隣を歩く夫にごちる。
そんな妻の様子をちらりと横目で見て、隆蒼は小さく息を吐いた。
「俺は、殿下の気持ち少し気持ちわかるがなぁ?」
「ん?私なのに?」
立ち止まった華南が理解できないという風に、見上げてくるので、隆蒼は眉を上げて肩を竦める。
「お前だからだ。同じような破天荒な妻を持つ夫の礒だな」
そう言って、「行くぞ」と顎で先を指せば、華南は釣られたように歩き出した。
「ねぇ、それは愛されていると思っていいのかしら?」
しばらく無言で歩き、夫の裾をつかむと、隆蒼は一度ちらりと華南に視線を向けて、すぐにふいっと視線を逸らせた。
逸らせた横顔と、、、耳がほのかに赤いのを見とめて、華南は口元が自然と上がるのを感じた。
夫婦になって、もうすぐ1年が経とうとしている。付き合いで言えばもう10年以上。それなのに時々みせる彼のこういう仕草は、なんだかかわいい。
「ふふふっ」
ぎゅうっと夫の腕に抱きつくと、バツの悪そうな、それでいて少し照れた相貌と目が合った。
++++
冬隼が、部屋に入れば、翠玉は春李の籠に手を差し入れてくすくすと笑っていた。
冬隼が入室してきた気配に気づいているはずなのに、彼女はこちらに視線を向けない。
まだ怒っているのだろうか。
少し重たい気分になりながらもゆっくりと近づいて、細く小さな背中を後ろから抱きしめる。
ビクリと驚いたように肩を震わせたものの、翠玉は振り払う事はなかった。
よかった。昨日ほどの拒否はされないらしい。
「すまなかった」
翠玉の耳元に唇を寄せて囁く。ぎゅうっと、籠に添えていた彼女の手に力が入ったのが分かった。
籠の中を覗き見れば、春李は気持ちよさそうにすやすやと眠っている。
「っ、私こそごめん。余裕がなくて」
息をつめた囁くような声で翠玉が詫びる。その首筋に顔を寄せて、さらに力を込めて彼女を抱きしめた。
「いや、そこを補うのが俺の役割なのに、俺が不安になってしまったのが悪い。華南から聞いた、焦らずやっていこう、俺も付き合うから」
翠玉が驚いたようにこちらを振り返るので、紅を塗っていない柔らかそうな唇に口付ける。
しばらく互いに軽い口づけを交わし合って、身体を向かい合わせると、じっくりと視線を合わせる。
「ありがとう。実をいうとね。今日、華南と打ち合ってみてあまり心配はないなってわかっちゃったの」
少し申し訳なさそうに肩を竦めて言った翠玉の言葉に、冬隼も苦笑する。
どうやら華南の報告通りらしい。しかし、どこか浮かない顔の翠玉の様子に、首を傾けると、彼女は視線を籠の中で眠る春李に移す。
「それよりも、この子を置いていくことが気になっちゃって」
母の視線の先で、春李は握った手をもぞもぞと動かしている。
「たしかに、、、そうだな」
乳母が付くようになったとはいえ、やはり目の届かない場所に行くのは不安である。まだ首も座らぬ赤子を置いていく事は父親である冬隼ですら心配で仕方ないのだ。母親の彼女の気持ちはいかばかりだろうか。
翠玉の肩を包む手に力を籠める。
「とっとと終わらせて、さっさと帰ってくるぞ。わが子の成長を片時も見逃したくはないからな」
最短で行けば2週間ほどで片付く。そこまで翠玉を無理させるわけにはいかないが、なるべく早く戻れるよう最大の働きをしようと冬隼は誓うのだった。
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