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王宮で開かれた舞踏会。
その会場で、王子であり私の婚約者であるシリル様に突然、婚約破棄を言い渡されました。
「アメリア!貴様との婚約は解消し、ここにいるミア嬢との婚約を宣言する!」
「ごめんなさぁいアメリア様、シリル様はミアの方が可愛いらしいの」
仲睦まじく手を取り合う2人とは対照的に、1人肩を震わせる私。
そんな私を見て、勝ち誇ったように笑う見覚えのない令嬢。
婚約破棄され、動揺していると思っているのでしょう。実際、ショックではあります。
だって、私、こんなに美しいのに!?
真っ直ぐに腰まで伸びた黒髪、目鼻立ちのきりっとした顔、スタイルの良さを引き立てるマーメイドドレス。どれ一つとってみても、美しいと褒められてきました。なのに、婚約破棄!?
いいえ、落ち着きなさいアメリア、人が皆美しい者に心奪われるわけではありませんわ。
「シリル様は美人より可愛らしい人の方が好みということ…?」
そういえば、小さい頃から彼は私に可愛らしくあることを求めてきた気がします。
ドレスを選ぶ時は、裾が美しく広がる煌びやかなマーメイドラインよりも、フリルやリボンがいくつもあしらわれたプリンセスラインを勧めてきました。
剣術を学んでいる時は、学ばずとも俺の後ろにいれば良い、などとよく言っていましたね。練習試合では、いつも私に負けていたのに。
私の背が伸びることも力が強くなることも、勉強に励むことさえ良い顔をしませんでした。
私には私の憧れがあるため、彼の意見は無視してきましたが。
「そ、そうよ!アンタみたいな悪役顔より私の方が好きなの!ね、シリル様!」
「あぁ、その通りだ。貴様と違い、ミアは本当に可愛らしい!」
改めて見ると、確かに、彼の好みに当てはまる女性なのでしょう。
縋るように王子の腕を抱く、剣を握ったこともないであろう細腕、緩く巻かれたブロンドヘア、ウエストからふわりと広がるドレス。
「…好みは変えようがありませんものね」
引き際をわきまえる私も美しい。
ですが、婚約を破棄される、しかもこんなに大勢の前でというのは、令嬢にとっては恥でしょう。
「私はこの場に相応しくない様子。ここで失礼させていただきます。」
「さっさと出て行け!」
一礼し、騒つく会場を後にして、待機させていた馬車へ。
走ることはせず、ゆっくり、堂々とした足取りで。
ですがそれができたのは、馬車が視界に入るまででした。
「イヴァン!」
馬車の近くで私の帰りを待ってくれていた執事に駆け寄り、概要を話しました。
彼は、舞踏会に着いてすぐ引き返してきた私を見て驚いていました。
「私、見限られてしまったの。こんなに美しく育ったというのに。」
「お嬢様、見た目だけでは上手くいかないのですよ」
馬車の中で一通り話し終えてからのイヴァンの返事は冷たいもの。
小さい頃から傍にいてくれているのに、いつも私に厳しいのよね。
「でも勉強も剣技も、性格だって美しくあろうと努力してきたのよ」
私は物語の中の女性騎士に憧れていました。彼女は誰にも頼らず、ただ1人で国を危機から救った。
彼女のように賢く強くあろうと努力を重ねてきたのです。
私の努力を知っているからか、普段は厳しい彼も、眉間に皺を寄せて悔しそうに目を伏せた。
「少し悲しいけど、もういいの。私は今の私のことが好きだもの、誰かに好かれるために変えるなんてしないわ」
それに、王子が私のことを好きではなかったように、私も王子のことを特別好きな訳ではありませんでした。
このまま結婚していたとしても、すぐに破綻していたでしょう。
「自由になったことだし、旅でもしてみようかしら!色んな経験をして、私の魅力も今以上になるはずよ」
沈んだ空気をかき消すように、明るい声でそう言うと、イヴァンも笑顔で頷きました。
「お供させていただきます。お転婆お嬢様だけでは、旦那様も胃を痛めてしまうでしょうから」
「何よその言い方は!素直に一緒に居たいですって言ったらどう?」
「一緒に居たいですよ。面白い光景もたくさん見られそうなので」
クスクス笑う彼を見て、フンッと拗ねたように窓に顔を向けました。
イヴァンの前では、子どものような言動をしてしまいます。それもまた、面白がられているのでしょうか。
「まずは旦那様にご報告しなくてはいけませんね」
そうだった。お父様に、婚約破棄のことも旅に行きたいことも伝えなくては。
「貴方にお願いできる?私、もう疲れてしまったわ」
「かしこまりました」
窓の外を眺めながら馬車に揺られ、気づいたら眠ってしまったようでした。
目が覚めた時には、ベッドに横たえられていました。
その会場で、王子であり私の婚約者であるシリル様に突然、婚約破棄を言い渡されました。
「アメリア!貴様との婚約は解消し、ここにいるミア嬢との婚約を宣言する!」
「ごめんなさぁいアメリア様、シリル様はミアの方が可愛いらしいの」
仲睦まじく手を取り合う2人とは対照的に、1人肩を震わせる私。
そんな私を見て、勝ち誇ったように笑う見覚えのない令嬢。
婚約破棄され、動揺していると思っているのでしょう。実際、ショックではあります。
だって、私、こんなに美しいのに!?
真っ直ぐに腰まで伸びた黒髪、目鼻立ちのきりっとした顔、スタイルの良さを引き立てるマーメイドドレス。どれ一つとってみても、美しいと褒められてきました。なのに、婚約破棄!?
いいえ、落ち着きなさいアメリア、人が皆美しい者に心奪われるわけではありませんわ。
「シリル様は美人より可愛らしい人の方が好みということ…?」
そういえば、小さい頃から彼は私に可愛らしくあることを求めてきた気がします。
ドレスを選ぶ時は、裾が美しく広がる煌びやかなマーメイドラインよりも、フリルやリボンがいくつもあしらわれたプリンセスラインを勧めてきました。
剣術を学んでいる時は、学ばずとも俺の後ろにいれば良い、などとよく言っていましたね。練習試合では、いつも私に負けていたのに。
私の背が伸びることも力が強くなることも、勉強に励むことさえ良い顔をしませんでした。
私には私の憧れがあるため、彼の意見は無視してきましたが。
「そ、そうよ!アンタみたいな悪役顔より私の方が好きなの!ね、シリル様!」
「あぁ、その通りだ。貴様と違い、ミアは本当に可愛らしい!」
改めて見ると、確かに、彼の好みに当てはまる女性なのでしょう。
縋るように王子の腕を抱く、剣を握ったこともないであろう細腕、緩く巻かれたブロンドヘア、ウエストからふわりと広がるドレス。
「…好みは変えようがありませんものね」
引き際をわきまえる私も美しい。
ですが、婚約を破棄される、しかもこんなに大勢の前でというのは、令嬢にとっては恥でしょう。
「私はこの場に相応しくない様子。ここで失礼させていただきます。」
「さっさと出て行け!」
一礼し、騒つく会場を後にして、待機させていた馬車へ。
走ることはせず、ゆっくり、堂々とした足取りで。
ですがそれができたのは、馬車が視界に入るまででした。
「イヴァン!」
馬車の近くで私の帰りを待ってくれていた執事に駆け寄り、概要を話しました。
彼は、舞踏会に着いてすぐ引き返してきた私を見て驚いていました。
「私、見限られてしまったの。こんなに美しく育ったというのに。」
「お嬢様、見た目だけでは上手くいかないのですよ」
馬車の中で一通り話し終えてからのイヴァンの返事は冷たいもの。
小さい頃から傍にいてくれているのに、いつも私に厳しいのよね。
「でも勉強も剣技も、性格だって美しくあろうと努力してきたのよ」
私は物語の中の女性騎士に憧れていました。彼女は誰にも頼らず、ただ1人で国を危機から救った。
彼女のように賢く強くあろうと努力を重ねてきたのです。
私の努力を知っているからか、普段は厳しい彼も、眉間に皺を寄せて悔しそうに目を伏せた。
「少し悲しいけど、もういいの。私は今の私のことが好きだもの、誰かに好かれるために変えるなんてしないわ」
それに、王子が私のことを好きではなかったように、私も王子のことを特別好きな訳ではありませんでした。
このまま結婚していたとしても、すぐに破綻していたでしょう。
「自由になったことだし、旅でもしてみようかしら!色んな経験をして、私の魅力も今以上になるはずよ」
沈んだ空気をかき消すように、明るい声でそう言うと、イヴァンも笑顔で頷きました。
「お供させていただきます。お転婆お嬢様だけでは、旦那様も胃を痛めてしまうでしょうから」
「何よその言い方は!素直に一緒に居たいですって言ったらどう?」
「一緒に居たいですよ。面白い光景もたくさん見られそうなので」
クスクス笑う彼を見て、フンッと拗ねたように窓に顔を向けました。
イヴァンの前では、子どものような言動をしてしまいます。それもまた、面白がられているのでしょうか。
「まずは旦那様にご報告しなくてはいけませんね」
そうだった。お父様に、婚約破棄のことも旅に行きたいことも伝えなくては。
「貴方にお願いできる?私、もう疲れてしまったわ」
「かしこまりました」
窓の外を眺めながら馬車に揺られ、気づいたら眠ってしまったようでした。
目が覚めた時には、ベッドに横たえられていました。
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