レッドリアリティ

アタラクシア

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1日目

流々

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――同時期。


ガンガンと扉を規則的に叩く音がする。

「こんにちはー!」

子供の声だ。まだ声が高いが、男の子。喜怒哀楽が簡単に見える。戸の奥から美結の耳へと入ってきた。


外にいたのは思った通りの少女。タンクトップに膝が見えるくらいの短パン。髪は最近切っていないのだろう。乱雑に生えていた。

「こんにちは!」
「え……こんにちは」

美結は笑顔で対応する。身長は凛よりも大きい。だけど小さいので、美結を見上げるようになっている。

「お母さんがこれをもってけ、って」

子供がビニール袋いっぱいに詰まっているトマトを渡してきた。お店の詰め放題でよくこんな光景が見れる。トマトの新鮮な赤色が透明のビニール袋に透けている。

美味しそうだ。そのままかぶりつきたい。見てるだけで涎が出てきそう。トマトが嫌いな桃也にとっては嫌な景色だ。

「わぁ……嬉しい!ありがとう!」
「……えへへ」
「またお礼の物を持ってくね」
「やった!」

ピョンピョンと跳ねて喜んでいる。子供は感情がすぐに分かる。この子は分かりやすい子だ。


「誰ー?」

男児の声に反応した凛が居間から出てくる。

「えっと……僕はたつみ。よろしく……」
「私は凛。よろしくー」
「うん……」

ドギマギしている。関節が人形のようにガクガクしていた。これはわかりやすい。巽は凛に――恋をしてしまったようだ。

「よ、よかったら……遊びに行かない?」
「いいよー!」

凛はそそくさと靴を履いて巽の手を取る。この子は将来、男をダメにしそうだ。


「もう仲良くなっちゃったな……でも2人で大丈夫かな?私も一緒に――」

同行しようとした美結の肩を掴んだ。力が強かったのか、「痛っ」と声を漏らしてしまう。

「どうかした――」


――時斜は無言で首を振っていた。

親が子供の恋を邪魔するのは無粋。そう言いたげだ。なんとなく感じ取った美結は、凛に「気おつけてね」と言って見送った。


しかし心配だ。ここは初めての土地。住んでいる子が一緒にいるとはいえ、子供だけで行かしてもいいものか。

「大丈夫ですかね……」
「大丈夫よ。この村の子供たちには山に入らないように教育してるから。危ない場所には行かないわよ」
「ならいいんですが……」





村の道を無邪気に走る2人。巽は流動体のように動く髪の毛を見て、小さな心臓を大きく揺らしていた。

「ね、ねぇ凛ちゃん!どこから来たの?」
藍住町あいずみちょう!あそこも楽しかったけど、ここも楽しいよ!」
「そうなんだ……今な、何歳?」
「5歳だよ」
「へぇ……同い年だね!」

下手なナンパみたいだ。凛も巽より周りの景色の方が興味ありげ。空を羽ばたく鳥を興味津々の眼差しで眺めている。


しばらく2人で進んでいると、とある箱が目に入った。百葉箱のような形。箱の扉は閉まっており、中身を見ることはできない。

自分よりも2倍くらい大きい箱に凛は興味を持ったようだ。なんとか箱を開けようと手を伸ばしている。

「うーん……?」

自力では開けられない。近くにあった木の棒を手に取る。長さは十分だった。穴に引っ掛け、扉を開ける――。


「それは――開けちゃダメ」

巽は凛の手を抑えた。

「なんで?」
「それにはね。『きょくやさま』が封印されてる」
「きょくやさま?」

きょくやさま。凛は聞いたことがない。桃也や美結に聞いても同じ反応をするだろう。

「きょくやさまってなに?」
「妖怪だよ。この村に古くから伝わる伝承でね。悪いことをしたらきょくやさまが首を切っちゃうんだって」
「悪いことって?」
「え……そりゃ、夜更かしとかつまみ食いとか……」
「他には?」
「盗みとか……人を叩いたりとか……」
「他は?」
「他……とにかく大人がダメって言うこと!」

あんまり凛は納得していないようだ。迷信とか信じないたちなのだ。まだ5歳なのにそういうとこは成熟している。


「……まぁいいや。他のところ教えてよ」
「うん」

気になりはする。中にどんなものが入っているのか。凛の興味はちゃんとあった。だが巽と2人では開けさせてくれない。

次に来る時は父親パパ母親ママを連れてこよう。凛はそんなことを考えていた。
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