レッドリアリティ

アタラクシア

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2日目

謁見

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「――準備はできた?」
「え?準備?」

銃弾を受け取った桃也に話す。

「なんかするの?」
「なんかって……今から狩りに行く」
「……狩り!?」


現在は早朝。しかも寝起きだ。歩いてきたので頭は冴えているが、山に登る準備などしていない。朝ごはんも食べていないのだ。エネルギーも不足している。

そんな状態で突然狩りなどには行けるわけがない。銃をもらっておいてなんだが、やはりここは断るしかないだろう。

「急に狩りなんて言われても……」
「朝だから動物も動きが遅い。鹿くらいならすぐに捕れる」
「そういう訳じゃなく……」
「昼だと他の猟師に盗られるよ?」
「それは困るけど……でも朝だし……」
「ふーーん……」

氷華が扉の方まで歩いていく。木製のドアをゆっくりと開けた。

「じゃあ私ひとりで行く。こんな1行く。山には危険な動物もいるけど行く。か弱い女の子1人で行くから」
「俺よりもスタミナあるのにか弱いの?」
「……」

人の良心に漬け込む戦術であったが、残念ながら桃也には効かなかったようだ。

「……とにかく来て」
「えー。せめて朝ご飯食べてからじゃダメか?」
「ちょっとだから。すぐ終わるよ」
「朝食はちゃんと食べないとダメだよ?頭が回らなくなるからな」
「ほんの少し。ほんの少しだけだから」
「朝飯を食べないとむしろ体重増えちゃうからな。ダイエットする前に身長を上げる努力をしないと――」
「――ちょっとだけだからぁ……」



うるうるとした目つき。涙が今にも溢れそうな瞳で桃也を見つめてくる。

「いや……泣くほどでも……」
「ちょっとなのにぃ……ちょっとだけなのにぃ……」
「な、泣くなよぉ。……一応大人だろ?」
「うぅ……少しなのに……すぐ終わるのに……」

両目を覆って俯く。目の前で泣かれては放っておくわけにはいかない。見た目が小さい女の子なら、なおさらた。

頬をポリポリとかきながら氷華の肩を叩く。さすがに桃也の良心が刺激されたのだろうか。

「わ、わかったよ。行くから泣きやめよ……少しだけだからな」
「――じゃあ早く行こう」


スンッと無表情になった氷華。いつも通りの顔で外へと歩いていく。

「……おい?」
「早く来て。早朝は短いよ」
「……おまっ……えぇ……!!」

完全に舐められている。チュッパチャプスくらい舐められている。少女じゃなかったらぶん殴っていた。

でも言ってしまったからにはしょうがない。外で泣かれても困る。諦めたように桃也は氷華の後ろをついて行くのだった。





――目が覚める。美結はゆっくりと体を起こした。

「……あれ?」

そしてすぐに気づく。隣に桃也がいないことに。

「……トイレかな?」

近くの時計を見ながら、まだ眠っている凛を起こさないように立ち上がる。時計の針は6時を指していた。

外は明るい。気持ちのいい日光が上がっていた。田舎の早朝はこれまた違う空気が広がっている。

「朝ご飯作ろ」

昨日のうちに朝食の具材は買ってきてある。引越し一日目の朝食。手によりをかけて作ろうとしていた。



「――あ、おはようね」
「……え?」

キッチンに立っていたのは――時斜であった。普通に。当たり前に。いつもそこにいたかのように振舞っている。

雰囲気で言えば違和感はない。だが当たり前に居ていいはずがない。ここは自分の家だ。普通に不法侵入である。

「なんで……」
「もう6時だよ?ちゃんと朝に食べないと体に悪いからね」
「でもここ私の家……」
「……『みんなで1つ』よ。誰かが困ってたら皆で助け合うの」
「助け合うって私は……」


目線を横に。――ふと気がついた。凛の花瓶にテープが貼ってある。絆創膏みたいなテープだ。近づいて花瓶に触れてみる。

「……割れてる」

感触で分かる。完全に割れていた。よく見てみると花の入れ方も雑だ。

「あぁ割れてたから応急処置してたのよ。雑でごめんねぇ、夫が生きてたらちゃんと直してくれるんだけどね」
「割れてた……本当ですか?」
「本当よ?ここに来た時に割れてて――」
「嘘ですよね」


ピタッと時斜の動きが止まる。蛇口から水の出てくる音が部屋に響いていた。

「凛の花瓶はプラスチック製です。借りに落ちたとしても割れることはありません。誰かが故意に割ったとしか――」
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