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2日目
躊躇
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村の田んぼ道。ノロノロと走る軽トラックを超えるスピードで桃也は走っていた。今朝から動きっぱなし。腹はなりっぱなしだ。
それでも止まることはできない。娘が心配なのは本心だ。この村はおかしいとわかった以上、凛に単独行動はさせられない。
家族以外の人物と2人っきりなどさらにダメだ。何をされるかも分からない。そもそも5歳の子が1人で出歩くことなどダメに決まってる。
「す、すいません。凛……これくらいの小さい子を見ませんでしたか?」
「――あー。それくらいの子なら巽君と学校の方に行ってたよ」
「ありがとうございます!」
畑を耕していたお婆さんから話を聞く。いい情報を聞けた。学校の場所は分かっている。ならあとは走るだけだ。
息を切らしながら到着。――しかし学校に凛はいなかった。肩で息をしながら、グラウンドを見回す。
人がいないわけではなかった。花壇の花に水をあげている人物が1人。静香である。
「――」
昨日から様々なことがあった。ストレスが溜まっていた。凛の心配もあった。疑問への答えもまだついていない。
桃也の苛つき度合いは最大値にまで達していた。
「……?どなたでしょうか――」
――静香の首を掴む。花壇へ押し倒した。
「かはっ――!?」
「質問に答えろ。凛をどこへやった?」
右手で首を締め付け、上から左肘を押し付ける。首を絞められてては答えられない。そんなことすら考えられないほど激怒している。
もがくように足を動かす。動いている足を踏みつけて固定した。
「答えろ。本気で殺すぞ……!!」
力をどんどん入れていく。自分の骨に肘がめり込んでいく。痛いが気にしない。
静香は桃也の肋骨をバンバンとぶん殴った。女性の力といえど、ダメージくらいは入る。しかし力を弱めることはない。
喉にめり込んでいく指。通っている血管や神経、頚椎を手のひらに感じる。
「か……は……」
――動きが止まった。唾液を頬から流している。失禁もしているようだ。服が濡れている。不快な匂いが鼻に突き刺さった。
「――クソっ」
頭を掴んで花壇に叩きつける。キレて物に当たる人のようだ。倒れている静香の死体を蹴り飛ばした。
人を殺したが、桃也は特に気にしていない。近くには山がある。死体処理の方法はいくらでもあった。処理なら手馴れている。
問題は凛の居場所だ。まったく検討がつかない。もし村人に捕まってたら。もし殺されてでもしたら……。
考えれば考えるほどムカついてくる。イラついてくる。桃也は死体をもう一度蹴り飛ばした。
「あぁクソッタレめ――!!」
――その時。チラリと鎖骨の部分が見えた。
「――あれ?」
気になった。そういえばこの女性は肌を隠すような服をしている。まぁオシャレといえばオシャレだ。
しかし、チラッと見えた鎖骨の部分。なんだか汚れていた気がした。悪い予感がする。慣れた手つきで服を脱がしていく。
「どういうことだ……!?」
唖然としていた。静香の体には大量の傷がついていたのだ。切り傷、刺し傷、青アザ。体は戦争帰りの軍人のようになっている。
一部分とかじゃない。全身だ。全身に余すことなく痛々しい傷が付いている。こんな怪我など普通はするはずがない。
自分でつけたとは考えにくい。ならば誰かにやられたというのが自然な考えだ。恨まれていたのだろうか。
にしては恨みがこもりすぎている。どれほどのことをやらかせばこんな傷をつけられるのか。桃也くらいのことをしなければこんなことされないだろう。
「この傷……塞がってないってことは、やられてからそんなに時間は経ってないようだな」
――ふと思い出した。昨日の猿のことだ。意図的に痛めつけていた。もしかしたら……。
なおさら凛のことが心配になってきた。今すぐにでも探しに行きたいが、この死体を放っておくのもまずい。
「面倒しかかけねぇなクソアマが……」
自分の爪を噛む。落ち着くわけではないが、これが癖なのだ。無意識のうちにやってしまう。
幸いにも近くにスコップがあった。花壇を作る時とかに使ったのだろう。死体を隠せる山はもっと近くにある。
だが一時しのぎにすぎない。村の情報網は凄まじいことを桃也は知っている。すぐに異変に気がつくはずだ。
制限時間は短い。こうなったからには後には引けない。やることをやって、さっさと村からとんずらしなくては。
それでも止まることはできない。娘が心配なのは本心だ。この村はおかしいとわかった以上、凛に単独行動はさせられない。
家族以外の人物と2人っきりなどさらにダメだ。何をされるかも分からない。そもそも5歳の子が1人で出歩くことなどダメに決まってる。
「す、すいません。凛……これくらいの小さい子を見ませんでしたか?」
「――あー。それくらいの子なら巽君と学校の方に行ってたよ」
「ありがとうございます!」
畑を耕していたお婆さんから話を聞く。いい情報を聞けた。学校の場所は分かっている。ならあとは走るだけだ。
息を切らしながら到着。――しかし学校に凛はいなかった。肩で息をしながら、グラウンドを見回す。
人がいないわけではなかった。花壇の花に水をあげている人物が1人。静香である。
「――」
昨日から様々なことがあった。ストレスが溜まっていた。凛の心配もあった。疑問への答えもまだついていない。
桃也の苛つき度合いは最大値にまで達していた。
「……?どなたでしょうか――」
――静香の首を掴む。花壇へ押し倒した。
「かはっ――!?」
「質問に答えろ。凛をどこへやった?」
右手で首を締め付け、上から左肘を押し付ける。首を絞められてては答えられない。そんなことすら考えられないほど激怒している。
もがくように足を動かす。動いている足を踏みつけて固定した。
「答えろ。本気で殺すぞ……!!」
力をどんどん入れていく。自分の骨に肘がめり込んでいく。痛いが気にしない。
静香は桃也の肋骨をバンバンとぶん殴った。女性の力といえど、ダメージくらいは入る。しかし力を弱めることはない。
喉にめり込んでいく指。通っている血管や神経、頚椎を手のひらに感じる。
「か……は……」
――動きが止まった。唾液を頬から流している。失禁もしているようだ。服が濡れている。不快な匂いが鼻に突き刺さった。
「――クソっ」
頭を掴んで花壇に叩きつける。キレて物に当たる人のようだ。倒れている静香の死体を蹴り飛ばした。
人を殺したが、桃也は特に気にしていない。近くには山がある。死体処理の方法はいくらでもあった。処理なら手馴れている。
問題は凛の居場所だ。まったく検討がつかない。もし村人に捕まってたら。もし殺されてでもしたら……。
考えれば考えるほどムカついてくる。イラついてくる。桃也は死体をもう一度蹴り飛ばした。
「あぁクソッタレめ――!!」
――その時。チラリと鎖骨の部分が見えた。
「――あれ?」
気になった。そういえばこの女性は肌を隠すような服をしている。まぁオシャレといえばオシャレだ。
しかし、チラッと見えた鎖骨の部分。なんだか汚れていた気がした。悪い予感がする。慣れた手つきで服を脱がしていく。
「どういうことだ……!?」
唖然としていた。静香の体には大量の傷がついていたのだ。切り傷、刺し傷、青アザ。体は戦争帰りの軍人のようになっている。
一部分とかじゃない。全身だ。全身に余すことなく痛々しい傷が付いている。こんな怪我など普通はするはずがない。
自分でつけたとは考えにくい。ならば誰かにやられたというのが自然な考えだ。恨まれていたのだろうか。
にしては恨みがこもりすぎている。どれほどのことをやらかせばこんな傷をつけられるのか。桃也くらいのことをしなければこんなことされないだろう。
「この傷……塞がってないってことは、やられてからそんなに時間は経ってないようだな」
――ふと思い出した。昨日の猿のことだ。意図的に痛めつけていた。もしかしたら……。
なおさら凛のことが心配になってきた。今すぐにでも探しに行きたいが、この死体を放っておくのもまずい。
「面倒しかかけねぇなクソアマが……」
自分の爪を噛む。落ち着くわけではないが、これが癖なのだ。無意識のうちにやってしまう。
幸いにも近くにスコップがあった。花壇を作る時とかに使ったのだろう。死体を隠せる山はもっと近くにある。
だが一時しのぎにすぎない。村の情報網は凄まじいことを桃也は知っている。すぐに異変に気がつくはずだ。
制限時間は短い。こうなったからには後には引けない。やることをやって、さっさと村からとんずらしなくては。
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