25 / 119
2日目
悪童
しおりを挟む
――家の扉を開ける。規則正しく並べられた靴の横に乱雑に脱ぎ捨て、居間へと向かった。
「……美結?」
美結はラップに包まれた朝食をボーッと眺めている。
「おい美結?」
「……桃也?」
やつれている顔を桃也に向ける。
「今まで……なにしてたの?」
「山に連れられてたんだ。悪かった」
「……ばか」
桃也の胸に顔を埋めた。なにも分からないが、とりあえず桃也は抱きしめる。胸のあたりが冷たくなった。泣いているのだろう。
「何があった」
「……頭がおかしいよ……あの人」
「時斜さんのことか?」
「あの人、凛の花瓶を壊した。証拠とかは無いけど……絶対に壊した」
横目で凛の花瓶を見る。確かに壊れていた。ヒビ割れた花瓶に柄のあるテープが貼ってある。
普段なら「証拠もないのにそんなことをいうな」と言っている場面だ。だがさっきのこともある。――美結の言うことは信じるに値する。
「そのこと言ったら……髪掴まれて……」
「大丈夫だよ。信じる。俺もおかしいと思ったんだ」
「……え?」
美結に今まで起きた出来事を話す。信じられない、と言った表情を美結はしていた。
「そんな……ことが?」
「辛い思いをさせたな」
「私は大丈夫だよ。桃也は大丈夫なの?」
「俺は大丈夫だ。……そういえば凛はどうした?」
美結に気を取られて気づかなかったが、凛が見当たらない。襖を開けた先の寝室にも見当たらない。
「昨日に来た巽って子と遊びに行った。朝が早いから止めようとしたけど……」
「時斜が怖かったんだな」
「……ごめん」
「お前は悪くない」
思い返してみれば凛の靴がなかった。背筋が凍りつく感覚がする。なぜ凛のことに気がつけなかった、と自分を戒めるように唇を噛んだ。
「探してくる」
「私も――」
「お前はここにいろ。いざって時のためにこれを持っておけ」
桃也は美結にライフルを渡した。困惑する美結をよそに、桃也は玄関へと走っていった。
その頃。凛は村の近くにある学校まで来ていた。
「……ここは?」
「学校だよ。今日は休みだけど」
木目の荒い看板。そしてボロボロの木造校舎。田舎の古い学校と表現するにふさわしい様相をしている。
グラウンドは小中学生なら十分に遊べそうなくらいには大きい。だが子供が遊べそうな遊具は見当たらなかった。
「ちっちゃいね」
「そう?普通くらいじゃないの?」
「私が行ってた幼稚園の方が大きかったよ」
「都会の幼稚園って凄いね……」
学校に隣接するように設置されてある花壇の前へと向かう。タンポポか。それともひまわりだろうか。芽が出ているだけなので2人には分からない。
「花が……9つあるね」
「この学校に入ったらくれるらしいんだ」
「へぇー」
全校生徒は9人。もう信じられないほど少ない人数だ。だけど凛はそこに触れない。
それよりも気になる物を発見した。白い粒だ。ちょっと大きくて、細長い形状をしている。
肥料にしては空洞がない。そもそも細長い肥料とか聞いたことがない。凛はそもそも肥料というものを知らないが。
気になったものは触ってみるのが子供。人の花壇だが、凛は白い粒に手を伸ばした――。
「――こら!」
後ろから女性の声がした。2人ともビックリして同時に振り向く。
「勝手に入ってきちゃダメでしょ!」
「あや姉おはよー」
「おはよー……じゃなくて!」
あや姉と呼ばれる女性が巽のおでこをチョップする。
「もう……あ、君が昨日引っ越してきた子?」
「はい。羽衣凛って言います」
ペコりとお辞儀。
「歳はおいくつ?」
「5歳です」
「5歳かぁ。小さいのに礼儀正しいね。私はここで先生をしてる笹木静香っていうの。よろしく」
お返しにと静香もお辞儀。茶髪の前髪がフワッと舞った。綺麗な額――だが、穴のようなポツポツの傷跡が見えた。
「来年からここの学校に来るのね。学校楽しみ?」
「はい!」
元気よく挨拶する凛。巽は凛の横顔に見とれていた。
「……美結?」
美結はラップに包まれた朝食をボーッと眺めている。
「おい美結?」
「……桃也?」
やつれている顔を桃也に向ける。
「今まで……なにしてたの?」
「山に連れられてたんだ。悪かった」
「……ばか」
桃也の胸に顔を埋めた。なにも分からないが、とりあえず桃也は抱きしめる。胸のあたりが冷たくなった。泣いているのだろう。
「何があった」
「……頭がおかしいよ……あの人」
「時斜さんのことか?」
「あの人、凛の花瓶を壊した。証拠とかは無いけど……絶対に壊した」
横目で凛の花瓶を見る。確かに壊れていた。ヒビ割れた花瓶に柄のあるテープが貼ってある。
普段なら「証拠もないのにそんなことをいうな」と言っている場面だ。だがさっきのこともある。――美結の言うことは信じるに値する。
「そのこと言ったら……髪掴まれて……」
「大丈夫だよ。信じる。俺もおかしいと思ったんだ」
「……え?」
美結に今まで起きた出来事を話す。信じられない、と言った表情を美結はしていた。
「そんな……ことが?」
「辛い思いをさせたな」
「私は大丈夫だよ。桃也は大丈夫なの?」
「俺は大丈夫だ。……そういえば凛はどうした?」
美結に気を取られて気づかなかったが、凛が見当たらない。襖を開けた先の寝室にも見当たらない。
「昨日に来た巽って子と遊びに行った。朝が早いから止めようとしたけど……」
「時斜が怖かったんだな」
「……ごめん」
「お前は悪くない」
思い返してみれば凛の靴がなかった。背筋が凍りつく感覚がする。なぜ凛のことに気がつけなかった、と自分を戒めるように唇を噛んだ。
「探してくる」
「私も――」
「お前はここにいろ。いざって時のためにこれを持っておけ」
桃也は美結にライフルを渡した。困惑する美結をよそに、桃也は玄関へと走っていった。
その頃。凛は村の近くにある学校まで来ていた。
「……ここは?」
「学校だよ。今日は休みだけど」
木目の荒い看板。そしてボロボロの木造校舎。田舎の古い学校と表現するにふさわしい様相をしている。
グラウンドは小中学生なら十分に遊べそうなくらいには大きい。だが子供が遊べそうな遊具は見当たらなかった。
「ちっちゃいね」
「そう?普通くらいじゃないの?」
「私が行ってた幼稚園の方が大きかったよ」
「都会の幼稚園って凄いね……」
学校に隣接するように設置されてある花壇の前へと向かう。タンポポか。それともひまわりだろうか。芽が出ているだけなので2人には分からない。
「花が……9つあるね」
「この学校に入ったらくれるらしいんだ」
「へぇー」
全校生徒は9人。もう信じられないほど少ない人数だ。だけど凛はそこに触れない。
それよりも気になる物を発見した。白い粒だ。ちょっと大きくて、細長い形状をしている。
肥料にしては空洞がない。そもそも細長い肥料とか聞いたことがない。凛はそもそも肥料というものを知らないが。
気になったものは触ってみるのが子供。人の花壇だが、凛は白い粒に手を伸ばした――。
「――こら!」
後ろから女性の声がした。2人ともビックリして同時に振り向く。
「勝手に入ってきちゃダメでしょ!」
「あや姉おはよー」
「おはよー……じゃなくて!」
あや姉と呼ばれる女性が巽のおでこをチョップする。
「もう……あ、君が昨日引っ越してきた子?」
「はい。羽衣凛って言います」
ペコりとお辞儀。
「歳はおいくつ?」
「5歳です」
「5歳かぁ。小さいのに礼儀正しいね。私はここで先生をしてる笹木静香っていうの。よろしく」
お返しにと静香もお辞儀。茶髪の前髪がフワッと舞った。綺麗な額――だが、穴のようなポツポツの傷跡が見えた。
「来年からここの学校に来るのね。学校楽しみ?」
「はい!」
元気よく挨拶する凛。巽は凛の横顔に見とれていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
M性に目覚めた若かりしころの思い出 その2
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、終活的に少しづつ綴らせていただいてます。
荒れていた地域での、高校時代の体験になります。このような、古き良き(?)時代があったことを、理解いただけましたらうれしいです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
M性に目覚めた若かりしころの思い出
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、それをはじめて自覚した中学時代の体験になります。歳を重ねた者の、人生の回顧録のひとつとして、読んでいただけましたら幸いです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる