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2日目
悪童
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――家の扉を開ける。規則正しく並べられた靴の横に乱雑に脱ぎ捨て、居間へと向かった。
「……美結?」
美結はラップに包まれた朝食をボーッと眺めている。
「おい美結?」
「……桃也?」
やつれている顔を桃也に向ける。
「今まで……なにしてたの?」
「山に連れられてたんだ。悪かった」
「……ばか」
桃也の胸に顔を埋めた。なにも分からないが、とりあえず桃也は抱きしめる。胸のあたりが冷たくなった。泣いているのだろう。
「何があった」
「……頭がおかしいよ……あの人」
「時斜さんのことか?」
「あの人、凛の花瓶を壊した。証拠とかは無いけど……絶対に壊した」
横目で凛の花瓶を見る。確かに壊れていた。ヒビ割れた花瓶に柄のあるテープが貼ってある。
普段なら「証拠もないのにそんなことをいうな」と言っている場面だ。だがさっきのこともある。――美結の言うことは信じるに値する。
「そのこと言ったら……髪掴まれて……」
「大丈夫だよ。信じる。俺もおかしいと思ったんだ」
「……え?」
美結に今まで起きた出来事を話す。信じられない、と言った表情を美結はしていた。
「そんな……ことが?」
「辛い思いをさせたな」
「私は大丈夫だよ。桃也は大丈夫なの?」
「俺は大丈夫だ。……そういえば凛はどうした?」
美結に気を取られて気づかなかったが、凛が見当たらない。襖を開けた先の寝室にも見当たらない。
「昨日に来た巽って子と遊びに行った。朝が早いから止めようとしたけど……」
「時斜が怖かったんだな」
「……ごめん」
「お前は悪くない」
思い返してみれば凛の靴がなかった。背筋が凍りつく感覚がする。なぜ凛のことに気がつけなかった、と自分を戒めるように唇を噛んだ。
「探してくる」
「私も――」
「お前はここにいろ。いざって時のためにこれを持っておけ」
桃也は美結にライフルを渡した。困惑する美結をよそに、桃也は玄関へと走っていった。
その頃。凛は村の近くにある学校まで来ていた。
「……ここは?」
「学校だよ。今日は休みだけど」
木目の荒い看板。そしてボロボロの木造校舎。田舎の古い学校と表現するにふさわしい様相をしている。
グラウンドは小中学生なら十分に遊べそうなくらいには大きい。だが子供が遊べそうな遊具は見当たらなかった。
「ちっちゃいね」
「そう?普通くらいじゃないの?」
「私が行ってた幼稚園の方が大きかったよ」
「都会の幼稚園って凄いね……」
学校に隣接するように設置されてある花壇の前へと向かう。タンポポか。それともひまわりだろうか。芽が出ているだけなので2人には分からない。
「花が……9つあるね」
「この学校に入ったらくれるらしいんだ」
「へぇー」
全校生徒は9人。もう信じられないほど少ない人数だ。だけど凛はそこに触れない。
それよりも気になる物を発見した。白い粒だ。ちょっと大きくて、細長い形状をしている。
肥料にしては空洞がない。そもそも細長い肥料とか聞いたことがない。凛はそもそも肥料というものを知らないが。
気になったものは触ってみるのが子供。人の花壇だが、凛は白い粒に手を伸ばした――。
「――こら!」
後ろから女性の声がした。2人ともビックリして同時に振り向く。
「勝手に入ってきちゃダメでしょ!」
「あや姉おはよー」
「おはよー……じゃなくて!」
あや姉と呼ばれる女性が巽のおでこをチョップする。
「もう……あ、君が昨日引っ越してきた子?」
「はい。羽衣凛って言います」
ペコりとお辞儀。
「歳はおいくつ?」
「5歳です」
「5歳かぁ。小さいのに礼儀正しいね。私はここで先生をしてる笹木静香っていうの。よろしく」
お返しにと静香もお辞儀。茶髪の前髪がフワッと舞った。綺麗な額――だが、穴のようなポツポツの傷跡が見えた。
「来年からここの学校に来るのね。学校楽しみ?」
「はい!」
元気よく挨拶する凛。巽は凛の横顔に見とれていた。
「……美結?」
美結はラップに包まれた朝食をボーッと眺めている。
「おい美結?」
「……桃也?」
やつれている顔を桃也に向ける。
「今まで……なにしてたの?」
「山に連れられてたんだ。悪かった」
「……ばか」
桃也の胸に顔を埋めた。なにも分からないが、とりあえず桃也は抱きしめる。胸のあたりが冷たくなった。泣いているのだろう。
「何があった」
「……頭がおかしいよ……あの人」
「時斜さんのことか?」
「あの人、凛の花瓶を壊した。証拠とかは無いけど……絶対に壊した」
横目で凛の花瓶を見る。確かに壊れていた。ヒビ割れた花瓶に柄のあるテープが貼ってある。
普段なら「証拠もないのにそんなことをいうな」と言っている場面だ。だがさっきのこともある。――美結の言うことは信じるに値する。
「そのこと言ったら……髪掴まれて……」
「大丈夫だよ。信じる。俺もおかしいと思ったんだ」
「……え?」
美結に今まで起きた出来事を話す。信じられない、と言った表情を美結はしていた。
「そんな……ことが?」
「辛い思いをさせたな」
「私は大丈夫だよ。桃也は大丈夫なの?」
「俺は大丈夫だ。……そういえば凛はどうした?」
美結に気を取られて気づかなかったが、凛が見当たらない。襖を開けた先の寝室にも見当たらない。
「昨日に来た巽って子と遊びに行った。朝が早いから止めようとしたけど……」
「時斜が怖かったんだな」
「……ごめん」
「お前は悪くない」
思い返してみれば凛の靴がなかった。背筋が凍りつく感覚がする。なぜ凛のことに気がつけなかった、と自分を戒めるように唇を噛んだ。
「探してくる」
「私も――」
「お前はここにいろ。いざって時のためにこれを持っておけ」
桃也は美結にライフルを渡した。困惑する美結をよそに、桃也は玄関へと走っていった。
その頃。凛は村の近くにある学校まで来ていた。
「……ここは?」
「学校だよ。今日は休みだけど」
木目の荒い看板。そしてボロボロの木造校舎。田舎の古い学校と表現するにふさわしい様相をしている。
グラウンドは小中学生なら十分に遊べそうなくらいには大きい。だが子供が遊べそうな遊具は見当たらなかった。
「ちっちゃいね」
「そう?普通くらいじゃないの?」
「私が行ってた幼稚園の方が大きかったよ」
「都会の幼稚園って凄いね……」
学校に隣接するように設置されてある花壇の前へと向かう。タンポポか。それともひまわりだろうか。芽が出ているだけなので2人には分からない。
「花が……9つあるね」
「この学校に入ったらくれるらしいんだ」
「へぇー」
全校生徒は9人。もう信じられないほど少ない人数だ。だけど凛はそこに触れない。
それよりも気になる物を発見した。白い粒だ。ちょっと大きくて、細長い形状をしている。
肥料にしては空洞がない。そもそも細長い肥料とか聞いたことがない。凛はそもそも肥料というものを知らないが。
気になったものは触ってみるのが子供。人の花壇だが、凛は白い粒に手を伸ばした――。
「――こら!」
後ろから女性の声がした。2人ともビックリして同時に振り向く。
「勝手に入ってきちゃダメでしょ!」
「あや姉おはよー」
「おはよー……じゃなくて!」
あや姉と呼ばれる女性が巽のおでこをチョップする。
「もう……あ、君が昨日引っ越してきた子?」
「はい。羽衣凛って言います」
ペコりとお辞儀。
「歳はおいくつ?」
「5歳です」
「5歳かぁ。小さいのに礼儀正しいね。私はここで先生をしてる笹木静香っていうの。よろしく」
お返しにと静香もお辞儀。茶髪の前髪がフワッと舞った。綺麗な額――だが、穴のようなポツポツの傷跡が見えた。
「来年からここの学校に来るのね。学校楽しみ?」
「はい!」
元気よく挨拶する凛。巽は凛の横顔に見とれていた。
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