レッドリアリティ

アタラクシア

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2日目

激怒

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閉めようとした引き戸をこじ開ける。驚く巽を押しのけて男の腕を掴んだ。

「なんだ――」
「このクソ野郎が――!!」

首を掴んで壁に叩きつける。男の薬指を掴み、反対側に折り曲げた。

「が――いっっ――!?」
「人の娘に何をしようとしていた!!??」

握る指に力を込める。男の薬指は90度以上に曲がっていた。首を掴む力も強めていく。段々と男の息が掠れてきた。

器官を塞がれて呼吸ができていない。片手は掴まれ、もう片方は首を掴んでいる手から離れようとしていた。


ぞろぞろと廊下の奥から男の家族が出てきた。桃也は舌打ちをして男を放す。

「こふっ――な、なんだアンタ」
「こっちのセリフだ!娘に何をしようとしたんだ!?」
「私はただ巽が家に招き入れたから遊んであげようと――」
「凛ちゃんは僕のお嫁さんになるんだよ」

平然と言い放つ巽に桃也は冷たい眼差しを向けた。

「黙ってろ巽――」
「凛。コイツになんか言われたか?」
「……男の子の家に女の子が入ったら……結婚するって」
「そうかそうか」

眼差しは再び男の方へと向けられた。今度は殺意も混じっている。

「……忘れたか害人。ここは『みんなでひとつ』だ。分け合いの精神をもって――」
「人の娘をモノ扱いか。もういい」

凛を抱っこして玄関から出ていく。後ろから「タダで済むと思うなよ」という言葉が聞こえてきた。――桃也は振り向くことなく歩き続けた。

しかし凛は見ていた。忘れている自分の靴をニヤニヤとしながら持ち上げている巽を――。





家の扉を開ける。瞬間、居間の方から美結が走ってきた。

「凛――!!」

抱きついていた凛を美結に渡す。優しい暖かさ。美結は泣きながら凛を抱きしめていた。

「何もなかったか?」
「うん……」
「よかった……とは言えない状況だな」


靴を脱いで居間まで。家族3人だけになるのはたかが数時間ぶり程度だ。しかし久しぶりのような、懐かしさすら感じた。

安心する。あのマンションが恋しくなってきた。今ならまだ戻れるのだろうか。――考えていてもしょうがない。目の前のことに集中するべきだ。

「これからどうするの?」
「どうする……か」

考えてもいなかった。頭を回そうとする……が、腹が空きすぎて何も考えられない。朝から何も食べてなかったのだ。

「……住み続けるのはまずいな。凛と遊んでいたガキの親に目をつけられた」
「目をつけられた?」
「ちょっと揉めた。今回は怪我しなかったけど凛が危なかったから」
「……凛」

凛は一言も喋っていない。さっきのことがトラウマになったのかも。静かに美結に抱きついている。

「――撃たれたんでしょ。警察に言った方がいいんじゃない。小次郎さんなら取り合ってくれるでしょ?」
「……微妙だな。証拠が無さすぎる。極論言えば、俺らは全て推測で話しているようなものだからな」
「そんな……」
「だけど危ないのは確かだ。お前らだけでも村から連れ出す」
「何を言って――」



――扉が叩かれた。2人の心臓が同時に縮む。

「……」
「……」

美結に「俺が行く」と手でサイン。受け取った美結は凛を強く抱き締め直した。

不自然にしていてはダメだ。平然としておかないといけない。服の襟を軽く整え、桃也は扉を開けた。


「――氷華」
「今朝ぶりだね」

居たのは氷華だった。今朝と違って狩り用の服装になっている。昨日に見た姿と一緒だ。

「何の用だ」
「ちょっとアドバイス」

扉を閉める。玄関には2人。証明するかのように辺りに静けさが漂っている。

アドバイスとは。次に出てくる言葉が予想つかない。そもそも何をしに来た。約束していた狩りの時間もまだ先だ。

警戒している桃也を見ても、氷華の表情は変わらなかった。変わらない顔で口を開く。

「家族の人を連れ出すのはいい判断。だけど今日のうちは辞めた方がいい」
「……なぜだ」
「言えない。けど辞めた方がいいのは事実。嘘だと思うなら連れ出してもいいけど」

理由は教えてくれない。まぁなんとなく想像はしていた。それよりも連れ出そうとしていることがバレてる方が問題だ。

「なんで連れ出そうとしているのを知ってる……」
「他の人がそうだった。今まで八月村にやってきた人全員がね」


扉を開ける。熱い日差し。小さい風の音が扉から流れ込んできた。

「言えるのはここまで。今日の狩りは来なくてもいいよ。行ける状態でもないでしょ」
「待て」

さっさと去ろうとする氷華を呼び止める。

「――何が目的だ」
「目的……ね」
「助けているのか?だとしたら、その目的が知りたい」
「……私だって見たくないもん。あんなは」

氷華はそう言って桃也の家を後にした。
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