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3日目
専売
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朝日が顔を出してきた頃。氷華の隠れ家に到着した。
「……これ?隠れ家って」
「うん」
「助けてもらっておいてなんだが……目立つくない?」
「確かにね。でも安心して」
氷華は小屋の扉まで移動する。扉の横には『坂野家所持』という名札が吊るされてあった。かなりの達筆で。
「少なくとも私とお兄ちゃん以外は入れない」
「みんなでひとつ、とかいう話は?」
「……とにかく入ってこないの」
中はホコリっぽい。長く使われてなかったのだろう。朝になったのに小屋の中は暗かった。
マッチで器用に火をつけ、机の上にあったランタンに火をつける。小屋の中は優しい光に包まれた。
「お前が作ったのか?」
「うん。時間かかった」
小屋内にあった毛布を桃也と美結に投げ渡す。2人は真っ先に眠っている凛を毛布で包んだ。
「とりあえずは休んで。疲れたでしょ。私が来るまでは扉を開けちゃダメだからね」
「ま、待て――」
桃也が話す前に扉を閉められる。中には窓もないので光は刺してこない。あるのはランタンの明かりだけ。
かなり気味が悪い。部屋の角には蜘蛛の巣が貼っている。変な虫が出てもおかしくは無い。
とりあえず凛を地面に寝かせた。貰っていたもう1つの毛布を枕にして頭の下に敷く。どうやら2人は毛布を使う気はないようだ。
「――美結。何があった」
今朝ぶりの会話。美結と氷華は初対面のはず。桃也はそう思っていた。
「その……襲われかけてた」
「誰に?」
「……巽って子のお父さん……だと思う」
「――クソ!!」
拳を握りしめる。
「でもさっきのあの子が助けてくれたんだよ?」
「……氷華がか?」
「うん」
「なるほどね……」
――何もかもが分からない。疑問しかない。首を突っ込んだのは自分だ。こんな状況も自業自得といえば反論できない。
それでもストレスが溜まる。隠されている謎が多すぎるのは嫌だ。
「――ちょっと待ってろ」
美結の声を無視し、桃也は扉を開けた。
村へと歩いていく氷華の肩を力ずつで引っ張る。
「なっ――小屋に居てって言ったじゃん!」
「もううんざりだ。隠していることがあるんだろ。全部教えろ」
「それは……」
狼狽えている氷華を木に押し付け、壁ドンする。恋愛的なロマンチックなものじゃない。ヤクザのような威圧的なものだ。
「……確かに儀式は見た。追いかけられる理由があるのも分かる。だがお前が助けてくれる理由がないんだ。こっちだって信用できねぇよ」
「それ……は……」
「知ってるだろ。俺は執行教徒ってヤツらを三人殺してる。お前の言う通り、村人たちは血眼になって俺を探しに来るはずだ。美結を次の儀式に使おうとしているのも知ってるぞ」
「え……な……!?」
「美結をあんな目には合わせられない。教えてくれたっていいだろ?」
……氷華は口を開かない。目線を桃也に合わせることもない。
「あーくそ……!!」
「ごめん……」
木に拳を叩きつける。
「……本当に教える気はないんだな」
口をモゴモゴとさせていた。目線はずっと合わせてくれない。――桃也はそれを肯定と取った。
強いため息を吐いて、地面に落ちてあった木の棒を持ち上げる。先は鋭く尖っていた。氷華の顔が青ざめていく。
「な、なにを――」
全てを言い切る前に氷華を地面に押し倒した。土のベッドに体を預ける。そして――氷華の右手に木の枝を突き刺した。
「――!?」
痛みよりも困惑が勝っていた。覆い被さる桃也を押しのけようとした時、自分の手が動かないことに気がつく。
その隙に桃也はもう1つ落ちていた木の棒を手に取り、躊躇なく氷華の左手に突き刺した。
「いっっ――!?」
動けない。完全に刺しているので血はそこまで出なかった。手は神経が詰まっている場所。痛みは尋常ではない。
痛みに体を捻じる。しかし捻じれば捻じるほど痛みは強くなる。焼けた鉄を押し付けられているのかと思うほどの苦痛が頭を支配する。
氷華は銃とナイフを携帯している。とりあえずライフルを遠くへ投げ捨て、ナイフを氷華の腰から取り出した。
「拷問はお前らの専売特許じゃねぇぞ」
「……これ?隠れ家って」
「うん」
「助けてもらっておいてなんだが……目立つくない?」
「確かにね。でも安心して」
氷華は小屋の扉まで移動する。扉の横には『坂野家所持』という名札が吊るされてあった。かなりの達筆で。
「少なくとも私とお兄ちゃん以外は入れない」
「みんなでひとつ、とかいう話は?」
「……とにかく入ってこないの」
中はホコリっぽい。長く使われてなかったのだろう。朝になったのに小屋の中は暗かった。
マッチで器用に火をつけ、机の上にあったランタンに火をつける。小屋の中は優しい光に包まれた。
「お前が作ったのか?」
「うん。時間かかった」
小屋内にあった毛布を桃也と美結に投げ渡す。2人は真っ先に眠っている凛を毛布で包んだ。
「とりあえずは休んで。疲れたでしょ。私が来るまでは扉を開けちゃダメだからね」
「ま、待て――」
桃也が話す前に扉を閉められる。中には窓もないので光は刺してこない。あるのはランタンの明かりだけ。
かなり気味が悪い。部屋の角には蜘蛛の巣が貼っている。変な虫が出てもおかしくは無い。
とりあえず凛を地面に寝かせた。貰っていたもう1つの毛布を枕にして頭の下に敷く。どうやら2人は毛布を使う気はないようだ。
「――美結。何があった」
今朝ぶりの会話。美結と氷華は初対面のはず。桃也はそう思っていた。
「その……襲われかけてた」
「誰に?」
「……巽って子のお父さん……だと思う」
「――クソ!!」
拳を握りしめる。
「でもさっきのあの子が助けてくれたんだよ?」
「……氷華がか?」
「うん」
「なるほどね……」
――何もかもが分からない。疑問しかない。首を突っ込んだのは自分だ。こんな状況も自業自得といえば反論できない。
それでもストレスが溜まる。隠されている謎が多すぎるのは嫌だ。
「――ちょっと待ってろ」
美結の声を無視し、桃也は扉を開けた。
村へと歩いていく氷華の肩を力ずつで引っ張る。
「なっ――小屋に居てって言ったじゃん!」
「もううんざりだ。隠していることがあるんだろ。全部教えろ」
「それは……」
狼狽えている氷華を木に押し付け、壁ドンする。恋愛的なロマンチックなものじゃない。ヤクザのような威圧的なものだ。
「……確かに儀式は見た。追いかけられる理由があるのも分かる。だがお前が助けてくれる理由がないんだ。こっちだって信用できねぇよ」
「それ……は……」
「知ってるだろ。俺は執行教徒ってヤツらを三人殺してる。お前の言う通り、村人たちは血眼になって俺を探しに来るはずだ。美結を次の儀式に使おうとしているのも知ってるぞ」
「え……な……!?」
「美結をあんな目には合わせられない。教えてくれたっていいだろ?」
……氷華は口を開かない。目線を桃也に合わせることもない。
「あーくそ……!!」
「ごめん……」
木に拳を叩きつける。
「……本当に教える気はないんだな」
口をモゴモゴとさせていた。目線はずっと合わせてくれない。――桃也はそれを肯定と取った。
強いため息を吐いて、地面に落ちてあった木の棒を持ち上げる。先は鋭く尖っていた。氷華の顔が青ざめていく。
「な、なにを――」
全てを言い切る前に氷華を地面に押し倒した。土のベッドに体を預ける。そして――氷華の右手に木の枝を突き刺した。
「――!?」
痛みよりも困惑が勝っていた。覆い被さる桃也を押しのけようとした時、自分の手が動かないことに気がつく。
その隙に桃也はもう1つ落ちていた木の棒を手に取り、躊躇なく氷華の左手に突き刺した。
「いっっ――!?」
動けない。完全に刺しているので血はそこまで出なかった。手は神経が詰まっている場所。痛みは尋常ではない。
痛みに体を捻じる。しかし捻じれば捻じるほど痛みは強くなる。焼けた鉄を押し付けられているのかと思うほどの苦痛が頭を支配する。
氷華は銃とナイフを携帯している。とりあえずライフルを遠くへ投げ捨て、ナイフを氷華の腰から取り出した。
「拷問はお前らの専売特許じゃねぇぞ」
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