レッドリアリティ

アタラクシア

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3日目

突入

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墨汁のような暗闇の中。黒布をまとった5人の男女は暗闇を歩いている。しばらくの間は外にいたので夜目は効いていた。

誰がどこにいても分かる。この者たちは訓練で暗闇の目を強くしていた。自信。それと確かな力がある。

先日の事件で同じ仲間を失った。大切な仲間。全員が強い復讐心を持っている。目の前に桃也が出れば確実に殺すだろう。

ピリつく空気が辺りに漂っている。重い空気が周りにのしかかる。それでも体は機敏に動かせる。武器を振るうことができる――。


コンコンと塀を叩く音。その場にいた執行教徒全員が音の方へ顔を向けた。

「……こんばんは」

聞き慣れた声に緊張感がほぐれた。声の主は氷華。片手に笹の葉を持っている。

「氷華?どうした?」
「みんな警備疲れたでしょ。だからおにぎり作ってきた」
「わぁ――食べていいの?」

『もちろん』と答えた。顔はよく見えない。だけどおにぎりを掴む全員が笑顔になっているように見えた。――5人全員が。



「――行くぞ」

狙い通り。すぐさま小次郎が桃也の肩に足をかける。素早く、それでいて確実に。ふくらはぎの力を解放して立ち上がった。

ギリギリ小次郎の手が届く。桃也の肩を踏み台にして小ジャンプ。あまり音を出さないように。あまり激しく動かないように。

塀を乗り越えた瞬間に持たされていた縄を桃也に投げた。縄を掴んだのを確認。小次郎は高さのある塀から飛び降りる。


シーソーのように桃也の体は引っ張り上げられた。縄が擦れる音がしたが、誰も気が付かない。ちょうど氷華と話をしている時だったのが幸いした。

すぐに塀を乗り越えて地面へ降りる。時間にして10秒以下。2人はスパイにでもなった気分になっていた。

昨日と配置は変わっていない。地面に付いた木製の扉がある。重い扉を慎重に開け、2人はそそくさと中へ入った。


内装も変わっていない。ホコリっぽい匂いは健在だ。口呼吸をするのが嫌になる。でも緊張から解放されて呼吸が乱れてしまっていた。

「お前重いわ」
「警察なのにデリカシーって言葉を知らないのか?」
「そんな言葉、俺の辞書から捨ててる」

地下の方にはカゲロウのような松明の炎が揺らいでいる。影は見えない。まだ人は近くにいないようだ。

呼吸を整える。まだ第一関門を突破しただけ。安心するのは早い。2人は武器を取り出した。

ここから先は氷華の手助けを得られない。戦闘になる可能性がある。事前に『殺しはなし』と小次郎と約束していた。

あくまで脅しの手段。手錠は一応あるので拘束だけならできる。こちらは刑事が1人。二人程度なら無力化できる。


階段を降りて扉の方を覗き込む。――誰もいない。儀式の時には門番のようなヤツがいた。

「誰もいない……?」
「じゃあ奥にいるんだろ」

拳銃に異常が無いかを確認。弾は五発。さっきも述べたとおり、あくまでも脅し用だ。使う気はない。

木の扉に耳を当てる。奥からは――音がしている。それも二つ。

「警備は2人だったよな?」
「あぁ」
「じゃあこの部屋のヤツらを無力化すればいいか」

ドアノブに手をかける。拳銃は構えたまま。

「お前は手を出すなよ」
「分かった。あっちから手を出されない限りだけど」



――扉を思い切り開いた。音と同じく数は2人。銃口をその場にいた2人に交互に向ける。

「動くな」

声は静か。そして冷酷。2人の男はいきなりの出来事でビックリしている。どちらとも小次郎との面識はない。

静止した空気と体。無音の空間。その隙に小次郎は部屋の把握をする。

奥には銅像。小次郎から見て、部屋の左端に扉がある。おそらく監禁部屋だ。目的地が目の前まで来ている。


男たちはどうしたらいいのか頭を巡らせていた。しかし――桃也が目に映った瞬間。頭の中が怒りに包まれる。

壁にもたれかかり、腕を組んでいた。自分たちの仲間を殺した男。せりあがってくる赤い感情が止められない。

「――」

2人の男が桃也に向かって走り出した。鞘から抜かれた刀を構えながら――。
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