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3日目
徹頭
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――る直前。桃也の突進が胸に直撃した。叩きつけられるはずだった拳が空を切る。
「チッッ――!!」
腰から落ちた義明。反撃とばかりに、義明の顔面にストレートを叩き込んだ。
「――フッ」
効いていない。折れるどころか、血すら出ていない。怯んでもいない。笑う余裕すらあるようだ。
殴った前腕を掴む。万力のような握力で桃也の前腕を握り潰そうとしてきた。
「が……ぁぁ……!?」
圧迫。締め付けられる筋肉。神経。骨。血管。指の握力が無くなっていき、握っていた拳が開かれていく。
立ち上がる小次郎。気がついた義明。脚の射程距離内にいる。――やることは1つ。
小次郎の顔面に蹴りを放った。咄嗟の判断で回避。耳を掠っただけで弾き飛ばされたと錯覚するほどの痛みが出てきた。
さらにもう1発。顔面に放った。――これも回避。研ぎ澄まされた神経が体を動かした。
限界はそこまで。これ以上の回避は不可能だ。起き上がってすぐの回避。反応速度はこれ以上動かない。
――踏み付けるようにではなく、薙ぎ払うように蹴りを放った。範囲攻撃。避けられるはずがない。
「ぶぎ――!!」
ガードもできない。衝撃で首が取れそうだ。視界が全て線になる。脳が上下反転したかのようになった。
そのままの反動で桃也にも蹴りを叩き込む。小次郎よりも威力は半減。しかし大ダメージ。壁近くにまで桃也は蹴り飛ばされた。
「いった――クソっ!!」
近くには包丁。手を伸ばして掴む。素手じゃ勝てない。自分よりも強い小次郎ですら完全敗北しているのだ。武器なしでは勝てない。
でかい図体。それなのに速い。桃也が義明の方に向いた時には既に接近していた。
サッカーボールを蹴るかのように脚を叩きつける。なんとか回避。背中からジャンプするように跳躍した。
――蹴った壁に隕石が落ちてきたかのようなクレーターが現れる。蜘蛛の巣のような跡が数瞬の内に出てきた。
「嘘だろ……!?」
当たったら……。もう考えなくてもいい。脳のキャパが破裂する。
上から下へと。圧縮機のように。桃也の脳天に目がけて拳を振り下ろした。――もう一度バックステップ。
かろうじて回避。少し前に桃也が居た地面が砕けた。拳の形に地面がえぐれる。欠片が振りかかってきた。
――脚を動かし、体を回転。捻りを加えて威力を底上げ。ただでさえ威力の高い拳。アッパーが桃也を襲った。
これは――避けられない。反応はできた。腕をクロスに構えて防御。内蔵の入っている場所だけは防がなくてはならない。
当たれば即死。内蔵を殴られたら流石に死ぬ。それも岩石を軽く壊すほどのパワー。潰れるのは絶対だ。
ダメージを最小限に抑えられたらそれでいい。反撃できなくても動ければ逃げられるチャンスだってある。
――その考えが命取り。その考えが甘かった。
拳の衝撃は全てを貫通。防御した腕ごと振り抜いた。
「ぇ――」
急に背中に衝撃が来る。床じゃない。――天井だった。アッパーの威力で天井まで殴り飛ばされたのだ。
痛みなど感じない。それよりも疑問符の方が多かった。落ちていく景色が遅く見える。重力が弱まったかのように見える。
「――ぇぐ!?」
膝から地面に落とされる。ここで痛みが戻ってきた。
「いっ……がっ――なぁ!?」
痺れる。包丁から指が離れない。腕が麻痺している。骨が折れては……いない。なんとか折れてはいないようだ。
スマホの振動のように震える腕。壊れそうな思考。頭がまとまらない。目の前に義明がいることを数瞬、忘れてしまうほどだ。
――そう。忘れてしまった。
拳を振り下ろそうとする。動けない。避けられない。そもそも拳に気が付かない――。
「――ッア!!」
義明の脇腹に右フック。コンクリートのような筋肉に小次郎の拳が沈みこんだ。
「っ――」
少しだけ顔が歪む。効いてはいるようだ。それでも怯まない。ちょっと停止した拳を振り抜く。
動けない桃也を蹴り飛ばした。そして脚を引く。瞬間――地面に拳が沈んだ。
そのまま地面を削りながら拳を振り上げる。アッパー。単調な攻撃。だけど当たれば死ぬ。防御した桃也があんなことになっているのだ。
ただ当たれば死ぬ。言い換えれば『当たらなければ死なない』である。
義明はすぐに足を組み換え、腰を捻る。チャージされた力は解放。亜音速に到達するであろう速度のストレートを放った。
(来た――)
攻撃は単純。変な軌道でもない。曲がりはしない。真っ直ぐ顔面へと向かってくる。結局はテレフォンパンチ。
初見はビビっていたが、慣れれば対処は簡単だ。相手は熊じゃない。自分と同じ人間である。
冷静に。放った拳を回避する。腕を掴む。肩を掴む。力の向きを変えるように。直線にちょびっと力を加えて。
100キロは超えるであろう義明の体を足腰で支える。アキレス腱、ふくらはぎ、膝。桁違いの体重を押し上げる。
――自分の体重プラス義明の体重。重力も足された衝撃。地震のような振動を鳴らしながら、義明は地面に叩きつけられた。
『一本背負い』
柔道の代表技。お手本のようなカウンター。完璧に決まった技。小次郎はニヤリと微笑んだ。
「チッッ――!!」
腰から落ちた義明。反撃とばかりに、義明の顔面にストレートを叩き込んだ。
「――フッ」
効いていない。折れるどころか、血すら出ていない。怯んでもいない。笑う余裕すらあるようだ。
殴った前腕を掴む。万力のような握力で桃也の前腕を握り潰そうとしてきた。
「が……ぁぁ……!?」
圧迫。締め付けられる筋肉。神経。骨。血管。指の握力が無くなっていき、握っていた拳が開かれていく。
立ち上がる小次郎。気がついた義明。脚の射程距離内にいる。――やることは1つ。
小次郎の顔面に蹴りを放った。咄嗟の判断で回避。耳を掠っただけで弾き飛ばされたと錯覚するほどの痛みが出てきた。
さらにもう1発。顔面に放った。――これも回避。研ぎ澄まされた神経が体を動かした。
限界はそこまで。これ以上の回避は不可能だ。起き上がってすぐの回避。反応速度はこれ以上動かない。
――踏み付けるようにではなく、薙ぎ払うように蹴りを放った。範囲攻撃。避けられるはずがない。
「ぶぎ――!!」
ガードもできない。衝撃で首が取れそうだ。視界が全て線になる。脳が上下反転したかのようになった。
そのままの反動で桃也にも蹴りを叩き込む。小次郎よりも威力は半減。しかし大ダメージ。壁近くにまで桃也は蹴り飛ばされた。
「いった――クソっ!!」
近くには包丁。手を伸ばして掴む。素手じゃ勝てない。自分よりも強い小次郎ですら完全敗北しているのだ。武器なしでは勝てない。
でかい図体。それなのに速い。桃也が義明の方に向いた時には既に接近していた。
サッカーボールを蹴るかのように脚を叩きつける。なんとか回避。背中からジャンプするように跳躍した。
――蹴った壁に隕石が落ちてきたかのようなクレーターが現れる。蜘蛛の巣のような跡が数瞬の内に出てきた。
「嘘だろ……!?」
当たったら……。もう考えなくてもいい。脳のキャパが破裂する。
上から下へと。圧縮機のように。桃也の脳天に目がけて拳を振り下ろした。――もう一度バックステップ。
かろうじて回避。少し前に桃也が居た地面が砕けた。拳の形に地面がえぐれる。欠片が振りかかってきた。
――脚を動かし、体を回転。捻りを加えて威力を底上げ。ただでさえ威力の高い拳。アッパーが桃也を襲った。
これは――避けられない。反応はできた。腕をクロスに構えて防御。内蔵の入っている場所だけは防がなくてはならない。
当たれば即死。内蔵を殴られたら流石に死ぬ。それも岩石を軽く壊すほどのパワー。潰れるのは絶対だ。
ダメージを最小限に抑えられたらそれでいい。反撃できなくても動ければ逃げられるチャンスだってある。
――その考えが命取り。その考えが甘かった。
拳の衝撃は全てを貫通。防御した腕ごと振り抜いた。
「ぇ――」
急に背中に衝撃が来る。床じゃない。――天井だった。アッパーの威力で天井まで殴り飛ばされたのだ。
痛みなど感じない。それよりも疑問符の方が多かった。落ちていく景色が遅く見える。重力が弱まったかのように見える。
「――ぇぐ!?」
膝から地面に落とされる。ここで痛みが戻ってきた。
「いっ……がっ――なぁ!?」
痺れる。包丁から指が離れない。腕が麻痺している。骨が折れては……いない。なんとか折れてはいないようだ。
スマホの振動のように震える腕。壊れそうな思考。頭がまとまらない。目の前に義明がいることを数瞬、忘れてしまうほどだ。
――そう。忘れてしまった。
拳を振り下ろそうとする。動けない。避けられない。そもそも拳に気が付かない――。
「――ッア!!」
義明の脇腹に右フック。コンクリートのような筋肉に小次郎の拳が沈みこんだ。
「っ――」
少しだけ顔が歪む。効いてはいるようだ。それでも怯まない。ちょっと停止した拳を振り抜く。
動けない桃也を蹴り飛ばした。そして脚を引く。瞬間――地面に拳が沈んだ。
そのまま地面を削りながら拳を振り上げる。アッパー。単調な攻撃。だけど当たれば死ぬ。防御した桃也があんなことになっているのだ。
ただ当たれば死ぬ。言い換えれば『当たらなければ死なない』である。
義明はすぐに足を組み換え、腰を捻る。チャージされた力は解放。亜音速に到達するであろう速度のストレートを放った。
(来た――)
攻撃は単純。変な軌道でもない。曲がりはしない。真っ直ぐ顔面へと向かってくる。結局はテレフォンパンチ。
初見はビビっていたが、慣れれば対処は簡単だ。相手は熊じゃない。自分と同じ人間である。
冷静に。放った拳を回避する。腕を掴む。肩を掴む。力の向きを変えるように。直線にちょびっと力を加えて。
100キロは超えるであろう義明の体を足腰で支える。アキレス腱、ふくらはぎ、膝。桁違いの体重を押し上げる。
――自分の体重プラス義明の体重。重力も足された衝撃。地震のような振動を鳴らしながら、義明は地面に叩きつけられた。
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